本と日記(4/16-4/30)

読んだ本

『そこから青い闇がささやき』山崎 佳代子

読んだ理由

短めの本がいいな、文庫の。と思って文庫コーナーをグルグルと巡ってる中で見つけた本。何より、裏表紙の「最初は、死者が名前で知らされる。それから数になる。最後には数もわからなくなる……」という文に強く惹かれた。

感想と日記

奥付をみると2022年の初版、けれど底本自体は2003年に出ている。著者の山崎佳代子は詩人、東欧文学の翻訳家として知られていて、この本はユーゴスラビア紛争当時のベオグラードの様子を書き記したエッセイ集。2022年といえば、4月末に緊張状態だったロシアがウクライナへ軍事侵攻を開始した年であり、この本の文庫化はその背景を大きく受けたものなのであろう。

2年前はどこで誰と話してもこの両国の緊張状態は必ず話題に上がり、「いくらなんでも現代の国際社会において軍事侵攻なんてありえないだろう」というのが、大方の見解であったように記憶している。けれど、軍事侵攻は起きてしまった。
いくらなんでもNATOが空爆なんて手を使うわけがない、と話していた数日後に空爆が始まるという凄く似たようなシーンがあった。日常が戦争によって圧し潰されて、戦争が新しい日常となる静かな恐ろしさがずっとあった。店先に吊るされた子どもサイズの軍服に「でも、これが支えになる子もいるのかも知れない」「お父さんもこれを着て戦場にいるんだよ、おそろいだね。早く帰ってきてくれるといいねって」と友人が話していた、なんてシーンもあった。

この週にちょうどアークナイツのメインストーリー13章が更新された。9章から続くサルカズと呼ばれる被差別民族による大国ヴィクトリアへの侵攻を描いていて、各ストーリーは様々な立場の人物の視点を入れ替えながら進んでいく。その13章で印象的だったのが戦場となったヴィクトリアの首都ロンディニウムを逃れ難民となった人たちのエピソードだった。なんとなく、今読んでる本に重なるな……って。

アークナイツの世界の住民はいわゆるケモミミやツノ、尻尾なんかの外見的な特徴によって人種が分かれていて、それ故か民族主義的な思想が強く根差す国家や組織が多い印象がある。民族の名前をそのまま冠するウルサス帝国とか、選民意識が強いサンクタの作った国ラテラーノとか。
あと、これは中国産ゲームだからだろうか、基本的に資本家や貴族に良いヤツがあんまりいない。巨大な資本を持つヴィクトリアでは、より権力を欲する貴族同士での睨み合いが続いていたり。
もう一つの世界を丁寧に造形し、その中での多種多様な民族・人種や、資本の勾配、災害や不治の病(全然話に出てこなかったけどアークナイツはこの病に立ち向かう製薬会社の話です)によって生まれる軋轢や差別なんかを正面から描くシナリオは結構社会的で面白いので、いろんな人に読んでもらいたいなと思いつつ、タワーディフェンスというゲームシステムははっきりと好みが分かれやすいジャンルなので、シナリオ集とかでないかな…と思っている。

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