観てきたんですよ、音楽を

BLUEGIANT、観てきたんですよ。就活で結論ファーストって習ったので、まず結論なんですが、最高でした。今すぐ観に行こう!近くの映画館で一番スクリーンがデカいところがいいと思います。

だいたい映画の感想は観てすぐに書いてるんですが、この記事は実はちょっと感想を寝かせて書いています。なぜなら原作未読ゆえ一旦原作も読みたかったから。とりあえず、原作4巻(仙台編)まで読みました。なるほどね~うんうんうん…………おもれえ。
一旦原作の感想なんですが、巷で「音が聴こえる漫画」と言われているその一端に触れました。すごく簡潔に言うと絵がうまいんですけど、特にうまいのが楽器とそれを演奏する人。
見開きページ1枚とかで演奏のシーンが終わっちゃうみたいなことがまずなくて、指、口、楽器を持つ全身……身体の動きでこの人は「楽器を持つ人」ではなくて「楽器を演奏する人」なんだと分かるような丁寧な描写が繰り返されるんですよ。見開きページって衝撃的な一瞬を切り取るには本当に有用だと思うんですけど、時間を描きたいと思うときにはあまり受け手としては効果が薄く感じるので、1シーンの中に細かく描写を重ねることで《そこに音楽がある時間》を演出するのが本当に上手。
あと、音の表現として勿論書き文字の擬音語も使うんですけど、特徴的だなと思ったのが余白で、音が向かっている方向に余白があり、ああここは音があるべき場所だ……ってなるんですよ。それから集中線も、音の流れを生み出していた。音が出る場所から拡散されるように線が伸びていく。
それから最後に、聴衆の存在。音を聴く人を、音から受ける衝撃を本当に豊かに描くんですよ。これは絵としてもだし、物語としても。というか、なんなら『BLUEGIANT』がテナーサックス奏者・宮本大と彼と出逢った聴衆とを描く物語なんだろうな。好きなのが、毎回巻末にインタビューが挟まるんですよ。宮本大が有名なプレーヤーになった後の世界で、彼の同級生、音楽の先生、一緒に演奏したピアニストetc.そういった人からの宮本大の印象や、彼と彼の音楽との思い出を語るインタビューが。
演奏する人がいて、そして聴く人がいることでその間にある音が浮かび上がってくるような仕掛け、絵がうまいとか漫画がうまいとかの次元じゃなく、表現がすごく上手い……ほんとうに。パントマイムで見えない壁があるのを私たちが認知できるように、そこにたしかに音楽があるんだと感じてしまう。そういう漫画でした。

さて、それを踏まえての映画の感想です。凄かった~~~!
一曲一曲の使い方が丁寧かつ贅沢〜。まじで演奏シーンでまるっと一曲分の尺を使うの。それがね、とっても嬉しかった。たとえば、ミュージカルのようにその音楽の中で物語が進むでもなく、ただほんとに、私たちも演奏を聴きに来た一人の聴衆という錯覚に陥るような、ライヴシーンとして音楽があるんですよ。映画館で体験したのはちゃんと《音楽のある時間》だった。ほんとに……
音楽をちゃんと《音》として表現できるっていう映画の強みを存分に活かしていたっていうのはもちろんなんですが、映像も本当にこだわっていた。
映画で宮本大が誰かに向けてはじめて演奏するのは、のちにバンドを組む同年代の天才ピアニスト沢辺雪祈の前でなんですけど、その演奏シーン、金色のテナーサックスの反射光が沢辺雪祈に届く。宮本大が体を揺らし演奏すれば、光もそれに応じて沢辺雪祈の上を動く。音に呼応するような光を見て、「ああ、この音はこの男に届いたんだな」って思った。我々観客の心を動かすには音楽で十分だけれど、我々観客へ「今、こいつはこの音に心を動かされているんだ」を伝えるためには映像の力がやっぱり必要なんだ。
もう、本当に映像の力を信じ切ってるっていうのを感じた。「音楽って熱くて最高じゃん?でも、映像の力がこいつをもっと最高にできるぜ?」みたいな。
音楽って聴くだけのものじゃないんだ……視覚でも演出できるんだ……ってなりましたね。てか、音楽って基本映画の中だと物語の演出としての使い方が多いじゃないですか?でもこの映画、音楽を題材にしてるから、その主従がライヴシーンになると完全に逆転するんですよ。最高〜〜〜。最高ですよ。
まじで、観たほうがいい。後悔する前に。公開してるうちに。

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