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「travel intermediate」lyrics,credit, and self liner notes

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〈guests〉


岸田佳也 drs.on 3/5/8
金川卓矢 drs.on 2/4/6/10/11
熊谷東吾 ba.on 2/5/8
ふくいかな子 pf.on 4
カメダタク org.on 10
SHIKATA vo.on 11
畠山健嗣 gt.on 3/6
西田修大 gt.on 11

井戸健人 mastering

喜多村みか photography


1.kacha

Your farm of life
in your life, cherished so much
I've never seen

you said a little thing
I don't know the real meaning
of a small discomfort

the long life belongs to you
the life loved by you
the life just of your own...

I affirm that only by my subjectivity
and hope to hear an objection
We all don't know outside of own imagination

That'll be true thing
That'll be also
and the other one will be may...

君の牧場
君の人生において強く祝福された
僕は見たことがないけれど

君のふと言った言葉
小さな違和感の
本当の正体はわからない

君の長い人生
楽しそうだね
君の人生は君だけのものだから

僕は僕の主観にのみ立って断言するから
反論が聞きたい
誰もが想像力の外側のことを知らずにいる

それはきっと本当のことだろう
あれもそうだろう
ほかにもまだあるかもしれないかもしれない


─前作「CELEBRATION」を出した2017年のうちに作っていたデモをほぼそのまま採用した曲。活動休止を決めつつ、次作の方向性を探る意図で作った曲がそのまま一曲目になったのだから、考えてみればわかりやすく成果があったということ。よかった。近い時期に同じコンセプトで作った"hiji"や"Summer affair"は「Archives 4」に収録した。

どんくさい表拍のクラップは手を地面と水平にして録った。全て打ち込みのピアノとストリングスの絡みから拍がずれる後半のアレンジが気に入ってる。訳詞は昔の洋楽の対訳風。



2.その声の中を

今になってみれば 愛しい思いだ
君からしてみれば まともじゃなかった

歌にならないから はじめからもう
約束はできないと 眩しい思いは

それからのことを
知らないまま誰かの歌を聞けば
心躍ったろう
終わりでもよかった

今になってみれば よくある話で
ふざけ倒したまま 帰り道のコーダ

昼に起きて散歩へ 夜中にまた外へ
日記を書いては消し 小銭を煙に変える

今になってみれば 愛しい思いだ
そのどれかひとつでも 歌になってゆくの
歌になってゆくの
歌になってゆくの
歌になってゆくの

その声の中を
転がっていくよな君をみれば
たまらなくもなる
愛しい思いだ


drs.金川卓矢
ba.熊谷東吾

─レコーディングしながらもこのアルバムに入れるか少し迷った曲。活動休止をすると言った前後のライブで不機嫌そうにしていた何人かのお客さんの顔を思い浮かべながら作った。



3.健忘

言った端から忘れるし
あいも変わらず死んだやつの話
希望の声

「優しいね」君の
怒りを孕んだ笑顔も
明日にはもう 覚えてないな

あの2人が消えるの
愛の深みが消えるの

また夢の中へ紛れて
祈り捧げ 喜んでいるのは誰だ

悲しいね 君はどう
もうどこへいっても気分は最高
戻れない光り方して

あの2人が消えるの
愛の深みが消えるの


drs.岸田佳也
gt.畠山健嗣

─これも原型を2017年に作って、デモを短期間だけ公開していた。そこからストリングスのMIDIデータだけ残して全部録り直し、歌詞も書き直した。アレンジをしながらミックスを3ヶ月間日課のようにやった。インタビューでも話しているけれど、ミックスを3ヶ月間やったというよりこの曲を題材に自分のミックスの手法をいちから見直し、練習したという感じ。人に訊けば1時間で済むところを1人で考え続ける、というのは自分の悪い癖だと認識しつつ、好きな作業。



4.夜中の春 (intermediate mix)

あどけない両義が騒ぎ出すと火花が走る
遠くで誰かが答えを言う

開いたドアから流れ込んだ夜気の
真ん中を通り抜けたら

足りないところは生まれた時のままで
花びら舞う夜を
吸って吐いて覚えて

流れた光の方向へ
なあ 行こうぜ
結び目を後へ

誰かの声が聞こえれば振り返る
夜空はすぐそこで
変わり目を待ってた


drs.金川卓矢
pf.ふくいかな子

─2019年の5月にシングルとして出したものを少しエディットしてミックスを直したバージョン。第一音がシェイカーよりスネアのゴーストの方がいい、というのは井戸くんの意見だった。"健忘"のミックスを経てドラムとベースの処理の仕方が大きく変わり、バランスを取り直すのは結局大手術だった。アルバムの作業の中で既発曲はどうしても存在感が薄くなりがちだけれど、いま通して聴くとやっぱりこの曲があって本当に良かったと感じる。



5.ホタル

日が暮れても 明るい道を
大きな笑い声あげながら
答えのない道はもうここで途切れた
好きなようにどこへでも

あの部屋で飛び交うより
空が広くなった丘から
見渡しているのは

去ってゆくの
楽しかったよな
友達はここからいなくなる

覚えている花に帰れそうだ
いっときの秘密をこしらえているのは

かなしきかな やま のぞまざりし
辿る声ひとり 奮い立たせ

雨粒 大きく川に流れ
隠れる葉の裏に寄り添えば

あの部屋で飛び交うより空が
広くなったり友達の声がするのは


drs.岸田佳也
ba.熊谷東吾

─ギターとピアノのループのフレーズがメインになるアレンジはくるりを聴いて育った世代としてはもはや禁じ手で、我慢を経ての採用。最近公開されていたエンジニア高山徹さんのインタビューを読んで、"ばらの花"のグルーヴを作るのにどれだけの苦労と工夫があったのかを推し量りつつ、軽量化されるテクノロジーの恩恵を受けてまだまだ勉強しなきゃいけないことがたくさんある、と考え込んでしまった。

歌はこの曲がいちばん難しかったかもしれない。リズム隊の2人に助けられた。



6. 火車

情緒と道徳のことだけ考えてきたら
なぜかそのためにクズい感じになった

はじめからほら
いったりきたり
さっきまで見た
夢から覚めろ
いっときのこと

火車がやってくる ヤバい顔なのに無音で
聞いて欲しいことを誰も彼もが大声で話すばかりで

はじめ立ったのは/良くはなかった
意地を張っただけ/ひどくもなかった
やめなかったのは/たまによかった
言えなかったから/地獄のようだった
優しかったから/汗をかいていた

秘密の声なら/東の方から
渡した後に/ワニもやってくる
迷い込んでいた/魔法のような
コツは知っていた/コツは知っていた
並んで待ってたら/謎は解けたら
走り去っていた/灰になっていた

嘘はなかった


drs.金川卓矢
ba.熊谷東吾
gt.畠山健嗣

─"君が踊り続けられるように"か、"夜中の春"の制作ときにドラムは録ってあった。スネアのボトムにマイクを立てていなかったのをちょっとだけ後悔しつつ、楽しく潰しまくった。畠山健嗣のブロークンなギターが入る前と後では別の曲だった。

怖い火車がやってくるイメージは、旅行で行った伊豆の、ほとんど無人の別荘地を夜中に1人で歩いたときの恐怖と結び付いている。怖い話のまとめサイトにハマっていた時期でもあったので、あれは本当に怖かった。



8. travel

誰かの色に描かれた
ギリギリの
お飾りの悲しみよさらば
千々に乱れて
ほとんど恋だな
今の君が

時間がない 匂いもない
と嘘を聞かされて
溢れ出す
怒りと悲しみよさらば
走り出したら
歌うことがないと気付くだろう


drs.岸田佳也
ba.熊谷東吾

─これも"健忘"と同じく一度デモを公開していた曲。今回のアレンジでは期せずしてエレキギターのトラック数が多くなった。主役が細かく入れ替わりつつ進んでいくアレンジが気に入っている。

言葉に直接の結びつきは少ないけれど、2017年の活動休止を決心した頃に歌詞を書いたので、夏の北陸旅行を思い出す。今まで自分にとっていちばん大事だと思ってきたものに向かって、憎まれ口を叩きながら突き放すような気分。今さら今回のアルバムの自分にとってのテーマがそこにあったんじゃないかと思えてきた。次はどこに旅行に行こうかと考えるような。あくまでも、家に帰ってくる旅行。



9. 13才

うたうかな 正す夜道を
かなしくて うざったい 雷
行き止まる畦道

ふざけあいながら遠く消えてく間に
ふたつのかげのぼうし

わかるようなわからないよな
いとおしい
帰り道の恥ずかしい思いも
報われる前に全部忘れたよな
息を吐いて直して

明るい花が盛り出す 横目に
まだ他人事だと

さあ 目が覚めたら
青い部屋でひとり
休みの夕方まで


─これもデモの日付を見返すと2017年の8月で、歌詞を後から書いたボーカル以外はほぼ元のデモのテイクをそのまま使った。ほとんどピッキングをしていない入力レベル極大のエレキギターのメインのフレーズが特に、録り直しても再現できないと思った。

自分の人生に大きな分岐点があったとしたら、それは意外と音楽を始めたとかいうことよりも、東京に引っ越してきたことなのじゃないかと思う。石川県に住んでいた小学校時代の通学路は田んぼの間を通る道で、どの季節の畦道もはっきり思い出せる。東京にやってきて13歳の1年間は部活にも入らず、部屋に1人でいる時間が長かった。



10. a day in the

諦めそうな夜のはざまに
収まらないでは
ひび割れそうな愛のこだまを

手に触れる距離 ただの日
なぜか悲しいこともあった
歌が流れる

君にさよなら
わからなかった
この先もずっといけそうだろう
窓は水色

火を灯す
夜の奥まで
会えば変わるように

手に触れる距離 ただの日
なぜか悲しいこともあった
歌が流れる
走る景色
戻らないで
歌が流れる


drs.金川卓矢
key.カメダタク

─今回の収録曲のなかでは"その声の中を"とこの曲だけが、アコースティックギターだけを持って原型を作った曲。この曲は紆余曲折あってそこからかなり離れたところに着地した。ドラムのノリを決めるのに金川と2人で苦労した。間奏終わりで登場するAh〜コーラスは実はよしむらひらくにとってはかなりレアで、「Archives」シリーズでたまに出てくるものの、公式音源ではほぼやってこなかった。



11. 君が踊り続けられるように (intermediate ver.)

歩き続けよう あん時みたいに
なにもかも全部変わっちまったから
君が踊り続けられるように

眺めのいい道じゃなかったね
でもだからこそおれら
仲良くなれたんじゃない
それから
君が歌を忘れていくように
踏切り台を蹴っていく 砂浜を渡っていく
その残り香が この季節にはもうない

いい感じの橋の上から 空いた時間に川を見下ろして
残り時間は減っていく
これから死ぬまで

ブツブツ言いながら歩くおっさんに
君はいつかなれるだろう
おれはそこまで届かない

街を歩いていく ロマンチックな街
鼻歌を通り越えてゆけ
勢い良く歩き出せばそのまま

夏がまたやってくる 花なんてもうない
笑い声の残りカスと 思い出に鼻を擦り付ける

線路沿いの道を 消え入りそうなちっぽけさで
誰にも見つからず
強い風の中を
すごい風の後を
熱い雨の後を
笑い声を

最後だ
これが最後だ

祈り続けよう
これからあることは 何もかも全部本当だけど
君が踊り続けられるように

あとからあとから 湧いてくるものはそっと避けて
全部たまたまだったね
おれだけ
祈るだけ
鷲のように硬くて遠い
君が踊り続けられるように


drs.金川卓矢
gt.西田修大
vo.SHIKATA

─シングル版から一部MIDIデータだけ残して他は全て録り直した。ゲスト3人の要素が炸裂していて本当に気に入ってる。

"travel forbidden"を除けば今回唯一の詞先作。それもこの曲はアルバムの制作を一切意識せず作ったものなので、今回のアルバムはとにかく音から作ったという意識が強い。この曲の歌詞はこれまで書いた中でも最高級に好き。



12.travel forbidden

旅行には行けなくなった
雨が降って出かけられなかった
二度と行けない場所と
そのうちまた行く場所と

ひっこもったまま春が
カラカラ回る

君が最後に見たものは
どんなだったんだろう
誰が悪いんとかそんなのも
死んだらどうにもならない

どこへいくの
すれ違う人に
秘密を打ち明ける
そっと
君が一番
よくわかってる

緩い坂を下っていく
歌になることはきっとある
その声の中を


─アルバム全体のミックスが終わり、井戸くんとマスタリングについてのやりとりをしている最中に作ったもの。歌詞とコードだけ決めてメロディーはほとんどアドリブ。2020年の4月、非常事態宣言の出ているなかで旅行をテーマにしたアルバムを作ったという可笑しみを少しはっきりさせよう、と思い歌詞を書いた。アルバム全体の説明ということにもなっていると思う。蛇足と感じる人もいるかもしれない。

ライブどころかレコーディングもまともにできない状況にあるミュージシャンも多かったので、録音はスマートフォンのボイスメモでやった。井戸くんがサイドに広げて声が聞きやすいバージョンを作ってくれて、明らかにそちらの方が良かったけれど元の状態に近い方を採用させてもらった。



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mikikiインタビュー
https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/25261

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