年末に際し

実はこのnoteは、書いているときのフォントが大きめで、そのことが詳説する感情を抑えます。どことなくメッセやTweetに似たコンパクトさで書くべきというバイアスを生むのです。ただ今回は、人類があまりに強く記憶付けする1年(ただの西暦ですが)の大晦日ですので、備忘録として少しだけ執拗に記録を残そうと思います。中身はいつものノンプロ調で、当たり前だよね、の域は越さないように致します。

長文の前に筆者の心中を端的に表現し、次段落で論点を整理します。                               (A)資産運用に関しては、過去とは異なる構造が現れたのだから将来予測も異なること。マネーの希少性が薄れるのだから色々な資産(財ではないです)の見掛け上の価格はこれからも上がる。つまり冷静に利殖を続けるべきだと考えています。この点は今回はあまり書かないようにします。    (B)世の中の情勢に関しては、米国大統領チームが替わることで人々の価値観の変化幅が大きくなる。--経済的格差はより広がるでしょう。ただ政府が財政で弱者を守らないと弱者に転覆させられるから分配するのと似て、経済的成功者は得られた富を「より自主的に」得ない人々に分配するようになる。成功者の誉れは成功するだけでは不足になると感じています。

①けいざいとは給料である                      いのちと経済の両立、経済の立て直し、など政治家先生から「けいざい」が乱発された1年でした。しかし、Go To騒ぎから分かる通り、言う側も聞く側も「けいざい」とは何かを曖昧にしました。来年も続く話ですし、皆様ひとりひとりは行政の長(総理大臣)と立法(政治家先生)を選ぶお立場ですから、彼らがちゃんとやってくれているかを監視する意味でも、「けいざい」とは本当は何だ?ということをはっきりと理解しておくべきです。

経済とは、大枠では国内総生産額、つまりGDPです(経済は豊かさ指数ではないことにご注意を)。国内総生産とは、およそ70%が個々人の消費、つまり個々人がどれだけの消費出費をしているか、です。          ⇒「けいざい」対策とは、つまり「個々人にもっと買い物をしてもらうこと」。                               ⇒個々人が出費するには出費するおかねを持っていなければ出来ない。  ですので直結するのは「所得」です。所得が増えれば出費も増やす、という構図です。では所得を得るには何が必要か?所得を得るには、労働の場合は「働く機会」が必要です。                      ここまでを図式にすると、けいざいとは働く機会(高い就業率)である、と言えます。だから、GDPを増やすには、より多くの労働の場所、そして願わくば給料が上がり続ける場を増やすこと、です。            コロナ対策で、日本政府は各国民に10万円配布しました。かなり多くの国で同様な配布がありました。なぜ10万円配ったのか?それは10万円も所得になるからで、それを出費してくれれば上記の「所得が増えれば出費も増やす=けいざいの役に立つ」図式に当てはまるからです。持続化給付金とは何のためだった?雇用調整助成金とは何のためだった? これらは職場=従業員が給料を取れる場が消失することを防ぐことが目的で、10万円と同じ種類でした。理解しておくべきことは、先進国のほとんどが同じ財政サポートを同じタイミングで行ったことでパンデミックという平時とは異なる状況への初期対処は失格点ではなかったということです。「良く出来ました!」で良いと思います。しかし。。。

②持続出来なければ息切れる  従業員を持つ経営者であれば、今回の最重要課題は給料を払い続けるためにキャッシュを確保し続けることです。特に道徳的な経営者は従業員には家族が居て、彼らの生活は自分に掛かっていると強く認識しているからです。一方で、キャッシュはどこから来るのか?それは売上と借金です。売上は、買う側が買いたいモノやサービスを提供し続けられるかに掛かっていますから、飲食や旅行業がキツイのは仕方ありません。ここは世相が変化しないとやはり売上になりません。だからその間を繋ぐために各国政府が銀行を通じて無利子のローンというキャッシュを融通したわけです。確かにこれで給料を払えるわけですが、パンデミックという非常事態が「いつまでなのか?」という想定はどなたにも大変難解な設定でしたし、今でも難しい。そうなると、「あとどのくらいなの?」という前提条件無しに借金を積み重ねなければなりません。利子がゼロでも元本はいつか返済しなければならないのに、元本は給料や家賃の支払いで減っていき、減った分を売上で取り戻せる目途がないのですから、現在国が出している救済措置では間に合わないことになります。「けいざい」が大事なのであれば、パンデミックで買い手がいないモノやサービスを提供する側にサポートし「続ける」合理性は薄まる一方になります。2021年はこの点が最重要ポイントのひとつです。そして、

③支払われた給料はどこにある?  日米欧で給付金の分が貯蓄になっているというデータを始めて入手したのは早くも7月でした。それ以降この事実は広く知られることになります。そもそも「消費して欲しいからおかねを差し上げ」たはずが、旅行にも行ける衛生環境でないから「貯めとくよ」になりました。もちろん「給料が滞り、衣食住に困り命を絶つ」のはまずいから10万円差し上げる、という基本的な意味がありましたが、各国ともスピード重視だったし、日本などでは国民それぞれの状況を把握するデータシステムも未整備だから全員に一律に差し上げたことで、「給料が滞り、衣食住に困り命を絶つ」人々には到底足りないし(だから当然自殺者は激増しフードバンクなどはパンクしている)、そもそも10万円頂かなくてもしのげる人々は「けいざいで返す」ことなく貯蓄や投資に回してしまったのです。人道的なことには筆者も既に微力を投じ始めました(なぜなら特に子供達に罪はないから)。このことは改めて書いて大いに議論したいと思いますが、資産運用や景気の先行きという観点では、貯蓄になった可処分所得、キャンセルされたレジャー等の金額がパンデミック終息とともに倍返しでは帰ってこないことを気にしていてください。今年不安で買い控えしたモノを終息した折に買う、ということはあっても、毎年旅行する家族が今年は行かないかわりにコロちゃんが終息した年は2回行く、ということは無いでしょう。だからサービス消費は倍返しにはなりにくいのです。つまりそこの消費=けいざいは取り戻しにくいということを汲んでおくべきかと思います。

④デジタル化がなぜ必須で環境対策がなぜ重要か? コロナ禍でネット通販を経験すると、確かにショッピングに出掛けること自体の楽しさはないけれどこの上ない便利さと身の安全を実感する方は多いと思います。ショッピングに行くのが億劫な高齢者層にはより便利な仕組みだし、(恐らくここの読者としては少数派の)Z世代はショッピングに行くこと自体にそもそも楽しさを感じない割合が高い、それに仕方なく出前館やUber Eatsでデリバリーを始めた「質の高い内食」など、ここのデジタル化加速はポストコロナでは常態となるでしょう。筆者は以前から区役所での書面取得や法務局での登記、銀行窓口での納税などをなるべく自分でやっていますが、デジタル先進国居住時代とは別の惑星にいるかのような忸怩たる面倒くささに毎回呆れています。ユーザー側のかような応援動機とは別に、供給側、つまり企業側や行政側にはデジタル化のさらなるモチベーションがあります。それは、アナログのままでは経費が減らな(人件費や事務所代、通勤コストなど)かったのに、デジタル化したらそれが減り利益率が上がるからです。利益率が上がれば利益が増えますから、自然に従業員に分配する賃金も増え、従業員数はきっと減りますから一人当たりの賃金は更に上がることになります。言い換えれば、国と社会全体でデジタル化を強く早く推進しないと労働者が豊かになれないし消費支出が増えないのです。こんな図式は昔から知られていましたが例えば日本は何となく平和で穏やかな社会だからそれを怠けていた、そしてコロナ禍でアナログプラットフォームでは食いつないで行けなくなって、それで加速する、という形かと思います。平和で穏やか、という点に触れると、多くが「通勤」を居住地決定のど真ん中においていて満員電車や手狭で高価な住居に「どこかおかしくない?」と思っていたから、テレワークやより遠方で自然や広さで優っている場所への移住というコロナ禍の産物を遂に肯定的に活用したのでしょう。                    環境対策ブームも最近加速していますが、これを筆者は「ヒトの良心を使った国家運営戦略」と捉えてみます(温暖化阻止には賛成派ですが)。   2050年までに温室ガスゼロ、2040年までに炭素排出量ゼロ、2030年/35年までに電気自動車を35%だ40%などの政策目標に唐突感や違和感を覚える方も多いのではないでしょうか。企業レベルでもESGの掛け声とともに製品の部材をこれまでの品質・耐久性重視からリサイクル素材や天然素材など「ウチはイイ子でしょう?」的なアピールを続出させています。これは、無論、地球と社会の持続化を目指すものではありますが、同時に新しい産業や職場を産み出すための大掛かりな仕掛けでもあるのです。新しい「仕事」や職種が生まれにくい成熟社会において、「環境」は希少なプラスαマーケットなのです。                               上記のデジタル化を進化させれば労働集約的な職場の数は激変します。なんでもお知りにTechと付けて(アグリテックもEduテックもMediテックも何でも)イノベーティヴな人間や企業がデジタル化を進めます。このままのトレンドを継続させるとアナログの世界にいる働き手が余ることは論を待ちません。そういう方々が溢れているようでは治安やモラルを含め大変なコストを要する社会になってしまします。その方々の職業を換えてあげなければならないのです。                            実際米国は戦争を控えるようになり軍人が余ればハイテク分野で労働できるようになど、無償の職業訓練で労働者を「再配置(reallocation)」することを得手としていて、それが世界一のイノベーション大国であり続けた遠因とも論じられています。加えて言えばその進展によって長期的には失業率もゼロ(完全雇用。失業率自体は4%程度だが職探しをしている方が些少になる状態)にしてきました。日本でも目に見える形としては12月末になって感染の影響で失業する方々を職種転換、スキル転換に誘導すべく2.25億円の補助金拠出を決めたようです(教育の具体案が未定なのがいつもながらですが)。

⑤高くついた総中流への拘り                     2021年は貧困層の方々を本当にどう扱うかが日本の大きな論点になるでしょう。扱う、とは非礼な表現ですが、「救える」かどうか筆者には不安です。ここについては書き出すと年を越えてしまいそうです。冒頭に記した通り、日本と日本人の岐路の一端でもあります。新年に書かせてください。   実り多き2021年をお迎えくださることをお祈りいたします。 (了)

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