2-9 指導者は、二度盗まれる

博士 もっと怖ろしいこととは、なんでしょう。

チェ 学会の・・・・・・というよりも、広宣流布の〈指導者の座〉が盗まれることです。かつて実際に宗門で起こったことで、今の学会は似た状況にあります。じゅうぶんにあり得る話です。

博士 1979年、大石寺66世・日達猊下(げいか)が後継者を指名しないまま亡くなり、阿部日顕が自己申告で後継者を詐称(さしょう)し、法主の座を盗んだことで、日蓮正宗内外から弾劾され、最高裁でも三度敗訴しました。

チェ あのときは池田先生が最前線で指揮をとっておられたので、大部分の学会員は「むしろ新しい時代の幕開けだ」と、さらに真剣に活動に励み、学会は飛躍的発展を遂げました。
 しかし今、先生がこのまま明確に(、、、)後継者を指名せずに亡くなられたとすれば、どうなるでしょう。執行部の誰かが次のリーダーになると考えられますが、その人がどういった経緯で後継者になったのか、学会員は知ることができません。密室化した本部内でのパワーゲームに勝った人が、それらしき経緯を詐称してトップに座ってしまう可能性が無いとは言えないのです。
 現状を鑑(かんが)みるに大半の学会員の精神性(メンタリティ)では、それを疑うことには強いメンタルブロックがかかりますし、正常性バイアス(都合の悪いことを無視して処理する心理的作用)が働いて「そんなことあるはずない」と思い込もうとしたり、陰謀論として片付けてしまうでしょう。もしも今、すでに盗まれていたとしても、それに気付くことはできません。考えたり、想像することすら拒絶する人がほとんどです。
 池田先生の構想は〈十万の池田大作〉です。あえて明確なリーダーを指名せずに、みんなで民主的に決めることを望まれているかもしれません。誰かがその十万のリーダーになるとしても、それはあいまいな自己申告や一方的な上意下達によるものではなく、会員に選ばれ、担がれて就任するのが妥当でしょう。

博士 しかし学会員に、選んだり担いだりする判断ができるのでしょうか。

チェ 難しいと思います。だから最初は〈明確なビジョン〉を語れる候補数人から選ぶのが望ましいですし、各候補は推薦者に内外両方から信用ある人を立てるべきでしょう。
 そのためにも学会はガラス張りの運営をし、執行部の誰が何を決めて実行しているのかを明確にし、会員も「我こそは〈十万の池田大作〉の一人」との思いで、自立した広宣流布のスタイルを磨くべきなんです。
 91年、聖教新聞に掲載された〈「魂の炎のバトン」を君たちに 広布史 永遠の3・16を記念――愛する青年部諸君に贈るメッセージ〉を紹介します。
 冒頭、池田先生は「恩師はつぶやいた。『もう何もいらない。ただ、人材が欲しい』。今、私もまったく同じ気持ちである」と戸田先生の言葉を述懐(じゅっかい)。つづいて「王地に生れたれば身をば随えられたてまつるやうなりとも心をば随えられたてまつるべからず」(287頁)と選時抄を引かれ、「どんな絶大な権力も精神までは縛れない。自由の叫びを抑えられない。正義そのものを殺すことはできない。何よりも真実を隠し通すことは不可能である」と青年に訴えられます。

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