lead the self

私たちは、深く暗い森の中にある村の住民だ。村のはずれには不気味な沼地がどこまでも広がっていて、周囲を暗い森が囲んでいる。

村には昔から言い伝えがあって、私たちは「この沼を渡るな、この沼を渡って戻ってきた者はいない」と聞かされて育ってきた。たまに、好奇心あふれる青年が沼地に足を気まぐれに入れてみるが、気持ち悪さからすぐに引っ込めてしまう。  

しかし、村で暮らすあなたには、何か抑えきれない気持ちがある。遠く目を凝らすと、沼と森の果てに、ほのかな光が見えるような気がするのだ。森の向こう側には、豊かな草原と青い空が広がっているのではないか。

もし、そこに住むことができれば、どんなにすばらしいだろう。青い空の下に広がる草原で寝っ転がる自分を想像しただけで心が弾む。青い空を自分の目で見たい。年老いた両親にもぜひ見せてやりたい。

そう思って、あなたは沼に一歩を踏み入れる。水は冷たく、よどむ泥がその深さを隠し、周囲の闇が身体を包む。不安や恐怖が頭をかすめ、思わず身がすくむが、それでも、沼を渡り森を抜けたい、青い空を見たい見せてやりたい、と思う気持ちがあなたに歩みを続けさせる。

これが自分をリードするというリード・ザ・セルフだ。

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