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【エィミー・ツジモトが読むアメリカ③】 ナンシー・ペロシ発言の背景


ーー7月14日、演説中にトランプ大統領が狙撃されて負傷した。その考察をする前に7月11日に取材したエィミー・ツジモトさんの分析を紹介したい。



◇次の民主党候補者は・・・・

平井 ドナルド・トランプは日に日に求心力を高め、ジョー・バイデンの遠心力は日に日に高まっています。このままいけば、トランプが再び大統領になるのではないでしょうか。

エィミー 民主党の大統領選候補者は二転三転、四転しています。ジョー・バイデンが病んでいることは、民主党だけでなくアメリカ人はわかっています。ただ、それが単なる認知症なのか、アルツハイマーなのかは定かではありません。老化してきて極端に頑固になっているというのは日本人でもよくある話でしょう。年齢を経て人の言うことを聞かず自分勝手になって、何かと言うと怒りだす傾向がバイデンにも見られます。
 1994年にレーガン元大統領は自身がアルツハイマーだと公表しました。世間の人はアルツハイマーには多少の理解がありますし。認知症と言うよりはです。だからレーガンは自分がアルツハイマーに冒されたと正直に言えました。しかしバイデンはアルツハイマーとも決めつけられない状況です。数日前のホワイトハウスの報道によれば、最近、8回にわたってバイデンを診察医が診たそうです。その結果は明らかにされていません。
 いぜれにせよ民主党は次の候補を考えなければならない事態になりました。では、次の候補者をと考えると、アメリカも日本と同じように政党は縦割りなので、本来なら副大統領であるカマラ・ハリス(59)にならざるを得ません。しかし彼女はなんの実績もなくインパクトもない。支持者はかろうじて黒人層たちだけで、ハリスは白人からはほとんど関心を持たれていないという状況。ハリスを大統領選候補者に選べばトランプ陣営に勝てないのは必然なのです。とはいえ、ハリスをあっさり外すと黒人の支援が得られなくなる。黒人の支援がなければ、民主党は大統領選に勝てない、そのようなジレンマを抱えています。

平井 そのため候補者選びが難航しているわけですね。

◇ペロシ発言の真意

エィミー それではほかに民主党の候補者がいるか。カリフォルニア州知事であるギャビン・ニューサムというなかなかの人物がいます。彼は非常に有能ですが、残念ながらカリフォルニア州自体が抱える問題が大き過ぎます。ホームレスで溢れています。彼らは病院代も払えない。物価高騰によりかつてのミドルクラスまでがホームレスに陥っているのです。このようなホームレスはひどいよれよれの格好をしているわけではなく、住宅ローンが払えなくて家を取り上げられたり、仕事も失ったりしているというホームレスです。
 サンフランシスコではカフェの外に、まともな格好をした男性がタバコ一本欲しいと中にいる客にねだったりしています。それがカリフォルニアの現状なんですね。その対応をしてないのに、お前は国政にばっかり目をむけてとニューサムは批判されてしまってるわけ。だからを彼を次の候補者にノミネートしたいのだけれど、し難くもあるというわけです。
 ともかく一刻も早く手を打たないと民主党候補はトランプに勝ち目が全くなくなります。

平井 現状を見る限り、「もしトラ」ではなく「ほぼトラ」という印象ですね。

エィミー だけれどもバイデンがあまりに頑ななので、民主党内では彼を止めることはもう諦めたという状態です。そのような中で、ナンシー・ペロシ(84)という、バイデンより年長で、はっきり物事を発言する民主党の重鎮が7月10日に注目すべき発言をしました。
「バイデン、あなたは決定しなさい」と。
「辞めろ」とは言わずに、それだけを言ったんですね。

平井 日本でたとえるならば総理に物言う長老政治家という存在でしょうかね。どういう意図だったのでしょうか。


ナンシー・ペロシ下院議員の発言を報じたニュース番組(2024年7月10日のMCNBCより)

エィミー ペロシはこれまでも色々とうるさいこというおばちゃんです。親しみもこめて「おばちゃん」と私は表現するのですが。
 そのペロシの発言は米国では大きくニュースになりました。「民主党員にそれぞれの地域の事情がある。民主党は民主党という政党です」「バイデン、あなたは決定しなさい。私はあなたの決定を支持します」とは何を意味するかというと、<バイデン、あなたがは選挙をやり続けるというはやめなさい」という意味です。私はこういう物言いが好きです。男性の物言いとは違うと思いません? 今(7月11日時点)、ただちにバイデンが降りなければ、状況は一気に傾いてきているのだからトランプが勝つと民主党議員たちはわかっているわけです。
 さらに言えば、候補者の背後で動いている大企業も勝ち目のないバイデンの大統領選にはもう寄付はしませんよということです。
 ただ、大企業が民主党議員に献金をしなくなるということではありません。大統領選にはもうこれ以上資金提供はしない代わりに民主党の下院議員や上院議員に資金をつぎ込むという判断になりつつあるということです。

平井 ペロシはバイデンが敗北することを踏まえて発言していると考えられるわけですね。

エイミー トランプになろうが、バイデンになろうが、政策や政令の成立など大事な決定には上下議会の両党の議員の力が必要になります。大統領がトランプになっても、民主党議員たちはその政策に対してイエス・ノーは言えるからです。二大政党制のアメリカでは日本みたいに圧倒的に自民党が強いわけではなく、両党はほぼ拮抗していますし、国会議員はそれぞれ各州から選ばれています。だから州民の意思に沿った判断をしたという理由で国会議員は比較的に自由に政策にノーやイエスが言えるのが実情です。ですので企業側としてはトランプの大統領選挙に資金提供をしたとしても、民主党の上下院議員には相変わらず大金は流れ込んできました。
 しかし、コロラド州の上院議員のマイケル・ベネットなども、このままバイデンが暴走をすれば、民主党は失墜どころではなくすべてを失ってしまうと危機感を抱いているのです。有能な議員たちの想いは同じです。それらの思いを受けてナンシー・ペロシは、もう先がないから早く決定しろと発言したわけです。

平井 バイデンが突っ走ると民主党所属議員も今後選挙で勝てなくなるかもしれないという事態にまでなっているということだ。                                
                           (次回に続く)
       

ナンシー・ペロシの発言の出典
<Nancy Pelosi: It's up to Biden to decide if he's going to run. Whatever he decides, we go with.>

バイデン氏の大口献金者について




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