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手あぶり火鉢に炭を入れて

最近、人と会うと最初の話題は、光熱費のこと。
今までも節約してきたのに、これ以上どうすればいいの?と言う人が多い。
年寄りには寒いことが体に良くないから、暖房を使うしかないという人もいる。
寒いのを我慢してお金を残しても、持って死ねないんだから、とも言う。
お金が残るか残らないかは、別問題として、この歳で寒いのを我慢して暮らすのは嫌というその気持ち、分からない訳ではない。

少し若い(?)人達は、できることは重ね着、重ね履き、運動だという。

私も節約!と、ある程度温まった部屋のファンヒーターを消して、こたつに入った。
でも、だんだん部屋の空気が冷たくなってきた。体は重ね着で温かいけど、手が冷たくなってきた。
そうだ!手焙り火鉢を出してみようか!と本当に突然!思いついた。

手あぶり火鉢。
おじいさんが残していったものか、長野からからもらってきたものか分からないけど、縁側の天袋に2個しまってある。
私がいつか使ってみたいと思って灰を入れた覚えはある。
何十年も前の、随分昔のこと。
炭は、子供たちが来たときにバーベキューをしたり、主人がうなぎの白焼きが好きで、炭で焼いていたので確か残っているはず。
いそいそ、わくわくと用意してみた。

炭を火起こしに入れて、ガス台にかける。
最近のガスコンロは平らなものを置かないと直ぐに火が消えるようになっている。
私は夏、焼き茄子を焼くときはコンロ周辺は汚れるが、直火で焼きたいので、丸い小さな石を置いてその上に網を置いて茄子を焼いている。
今回もその方法で、火起こしを乗せて炭を熾した。

炭を扱うなんて久しぶりで、どう入れたら良いのか迷う。
最初は良いけど、だんだん消えてしまう。

柔らかい炭はすぐ火が点くけどすぐ燃え尽きてしまう。
備長炭は、一旦火が点いたように見えるけど火鉢に入れると消えてしまう。
どうしたらいいのかなぁ?
多分、炭の量が少ないからだと思うけど、手焙りは小さいのでそんなに炭を入れられない。
少い炭をおこすのは結構難しい。
それでも、少しずつできるようになってきた。

直径30センチにも届かない小さな火鉢でも、炭が元気で熾っているときは、熱いくらいで、手をかざすととても気持ちが良い。
炭の間の赤い色がきれい。見ていて飽きない。
そして、色々なことを思い出す。
 
小さな頃、家にはこの手焙りよりもっと大きい火鉢があった。
火鉢でお餅を焼いたり、干しいもをあぶったりした覚えがある。
でも、多分その後すぐに石油ストーブの時代になったのじゃないかな。
石油ストーブの時代になっても、炬燵は炭の時代がもうちょっと続いた。
家には炭斗という木で作られた四角な箱があって、そこに炭と火箸が入れてあって、炬燵の炭が少なくなって、炬燵が暖かくなる前に、母が炭次をしてくれた。
母は、炬燵がぬるくなると灰を避けて炭の温もりが強くなるようにし、熱くなると灰をかけて熱さを弱くしたり、いつもみんなが気持ちよく過ごせるようにしてくれていた。愛情がないとできないことを、なんにも言わずにやってくれていたことを今更ながらに思う。
炬燵といえば、母は、夕方父が帰ってきてから着替える丹前を、いつも炬燵の中で暖めていた。
小さい頃からそれを見て育ったので、私はちょっと大きくなってからは、母に言われなくてもそれをやるようになった。
寒い中を帰ってきた父を玄関に迎えに出て、父が幸せそうに暖かい丹前に着替えるのを見ると私も嬉しくなった。

母は、兄と私のために、炬燵の隅の灰に牛乳瓶を入れて温めてくれていた。
学校から帰って、こたつに入り、暖かい牛乳瓶を両手で持つと、ホッとした。

炭を見ながら、そんな昔のことを懐かしく思い出したりしていた。

何回か炭を熾してだんだん慣れてきているけど、気温が10度を越えると、空気が緩んで、手も冷えなくなった。
手あぶり火鉢を楽しむのは、空気が冷たい本当に寒い時がいいなと思った。

この冬の大寒波のときに、思いついてやってみた、ちょっと楽しい火遊び?でした。

読んで頂いてありがとうございました。



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