春を食べる愉しみ、野草、山菜
蕗のとう
春一番の愉しみ!
雪解けの田んぼの斜面に ぷくっと緑の頭を覗かせる。
初々しい緑の色がきれい。
刻んで、油で炒めて砂糖と味噌をを入れて練る。母の作り方を見て覚えた。
母は、昔、火鉢があった頃、もう一つの作り方もしていた。
刻んだフキと味噌を混ぜて、お皿に平らに伸ばして貼り付ける。
それを火鉢の五徳の上に逆さにして置いて焼き、焦げ目を付ける。
子どもの私には、そう美味しいとも思われなかったが、今、思うと 父の酒のつまみには最高だったのではないかと。
味噌汁に刻んで入れるのも香りが立って美味しい。
ふきのとうが伸びて花を咲かせ、葉っぱが大きく茎がだんだん伸びてくると、今度はその茎を食べる。
これも、シャキシャキした歯ざわりと、香り、美味しいものだ。
野蒜(ノビル)
直径1センチ位の 白い真ん丸な球根を持つ野草。
生で味噌を付けて食べても良いのだけれど、ちょっとピリッと辛いので、軽く茹でて味噌和えにする。
これも子どもの頃は父が食べるのを見ていただけ。
酒飲みを受け継いだ身としては
大人になってこの時季には 一度は食べたいと思うものの1つ。
土筆(ツクシ)
長野にいた頃は食べたことがなかったけど、名古屋に来てから、卵とじで食べることを知った。美味しいと思った。
やっぱり、春には食べたい味。
蕨(ワラビ)
春の散歩は、ワラビ取りも兼ねてと言うくらいちょっと山の道を歩くと取れる。
もう少し山の近くに住む 友人の所で取れるワラビは、とても太くて柔らかい。
熱湯に少し重曹を入れたのを、生のワラビので上からかけ、一晩置く。
お浸し、三杯酢、煮物などで楽しむ。
コシアブラと、刀の木
どちらも木の芽で、コシアブラは天ぷらが一番好き。茹でてご飯に混ぜても独特の香りが楽しめる。
刀の木は、コシアブラほど香りはないが、こちらを好む人も多い。これは、天ぷらには合わないような気がする。
アケビのツルの新芽
新潟に、春の時期に旅した時、蕎麦屋さんで食べたのが、初めてだったと思う。
茹でたアケビのツルの上に、卵の黄身を載せて、蕎麦つゆがかけてあった。
それからは、私もこの食べ方で、アケビのツルの新芽を食べるようになった。
ヨモギ
香りが高く、緑がきれいで、家族がいる頃は、天ぷらはもちろん、茹でてすり潰したヨモギを入れて、お団子や、餅にして楽しんだ。
もう、何年も前、沖縄に行ったときに、ヨモギを入れた雑炊のような料理を食べた。
香りが高くて、とても美味しかった。
名前もハッキリ覚えている。
フーチーバジューシー!
沖縄では、ヨモギを栽培していると聞いて、へぇと思ったことを覚えている。
クレソン
私が小さかった頃の長野では、クレソンの事を、台湾せりと言っていた。沢山あったけど、食べたことはなかった。
結婚してから、肉料理の付け合せについていたのが、台湾セリと呼んでいた物だと知って、食べてみたらおいしかった。
それから、クレソンが、たくさん手に入ると、炒めて醤油を絡めた牛肉とクレソンのサラダが食卓にのる。
筍、根曲がり竹、嫁菜、山うど、コゴミ、セリ、タラの芽どれもそれぞれ、思い出があり、毎年一度は食べたいと思って食べてきたもの。
そして、毎年どの野草、山菜もそれぞれ独特の香り、味がして、それぞれにおいしい。
天ぷらにしたり、煮たり、和え物にしたり、ご飯に入れたり、いろいろな食べ方ができる。
山菜の苦味は 冬の間、身体に溜まった老廃物を流してくれる働きがあるそうだ。それでかな、春は気持ちも身体も、元気に伸びやかになっていくように思う。
そして、最後は
一度だけ食べたカタクリ!
友人が、秋田に住むご主人の親さんが、送ってきてくれたから、あ
お裾分けと言って、
花、蕾がついたカタクリを葉っぱごと一緒に抜き取ったのを、片手にいっぱい頂いたことがある。
ビックリするやら、こんな貴重な物を頂いて、食べてしまって良いものか、一瞬 ひるんだけれど、
このまま水につけて鑑賞しても枯れるだけと思い、茹でた。
甘くて、ちょっとヌルっとして、でも、シャキシャキした歯ごたえで、美味しかった。
秋田では、こんなにたくさんのカタクリが咲いていて、積んで食べるのだと 何とも不思議な想いだった。
もう15年以上も前の、春の忘れられない思い出。
今年は毎年嫁菜を摘む場所が、工事で通れなくなっていた。
セリを摘んだ場所も、コンクリートの用水路になって、もう生えてこない。
そして、自分も年々 年を取って出かけるのが億劫になっていき、こうして今まで楽しんできたものが、だんだん思い出の味になっていくのだろうか。
来年も、春の味が楽しめますように!と 元気で頑張って暮らしたい。