小説 これで働かなくてすむ サン・ハウスの「説教ブルース」⑧
オレは浮かれていた。ウィルソンさんは、何をしでかすかわからない危なっかしい元説教師を、息子のようにかわいがってくれた。オレのほうも、放蕩ものの親父の代わりにウィルソンさんを父と慕った。演奏の仕事がない日には、昼すぎにウィルソンさんの家で練習が始まる。教えてもらうことは、もうほとんどなかったから、それは練習というよりも宴に近かった。日が暮れてくると、ウィルソン夫人が夕飯をつくってくれた。あたりを照らすものと言っては、頼りなげな月のほかには焚火があるばかりで、ウィルソンさんはそこ