高校生活の記憶の3分の1程度は弓が占めている。
弓道部に入り、毎日のように弓を引き続けていた。
弓というのは面白いものでハマる人はとことんハマるが、ハマらない人は全くハマらない。
私は前者であった。今では後者だが…。
弓への興味などとっくの昔に捨てたはずだが、ゲームで弓を見かけると惹かれるのは弓への心残りがあるからなのだろうか。


弓への熱は宗教的なモノがあった。あの頃は弓を中心に生活していた。
30分自由な時間があれば道場へ足を運んだ。
弓を引いている間は周りを完全に排除して一人になることができる。
友人と呼ばれる存在が全くいなかった自分にとっては心地よかった。


しかし、そんな弓道熱もある時期を境に急激に冷めていった。
2年の秋、3年間の中で特に大事な大会。
部員50人のうち、出場できるのは6名。
幸運にも私は出場の切符を掴んだ。
練習はとても楽しかった。今までの自分の努力が全て肯定されていたような気がしていた。
迎えた大会当日。全ての物事が上手くいく訳が無い。
私は緊張していた。足が震え、視界は真っ白だった。
他のメンバーは結果を残す中、私は初戦敗退。

しかしこれは仕方の無いことだったと思う。
大会直前、私は謙虚ではなかった。
メンバーに選ばれたことで周囲を見下し、自分が一番上手だと思い込んでいた。
自分を唯一表現できる方法であった弓を、自分の劣等感を隠し、人を見下す道具にしてしまった…

もう一度弓を…とはならないあたり、私は弓が好きでは無いのかも知れない……

だが、高校三年間、弓を引き続けたことは私にとって貴重な財産であると確信している。