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難関校受験至高の教材『中学への算数』

中学受験は高校受験や大学受験と比べて圧倒的に市販教材が少ない。ほぼ全員が受験する高校入試と一部の児童対象の中学入試とマーケットの大きさが全く違うので致し方ないのだけれど。

また、塾用教材は塾での授業が前提となっており添付される解答解説が実にあっさり。紙面の都合上、図なども多用できない制約があり、自習教材としては使いにくかったりする。基礎レベルの問題集ならば答えのみでも問題はないけれど、応用レベルで難度の高いものは自習が困難になっていく。塾が近隣に無く、独学前提の児童がどのような教材を使用するか、というのは難しい問題。

大手塾への通塾無しにラ・サール中対策を考えたときに。最終的には過去問で良いのだけれど、そのレベルに到達するための教材というのがなかなか難しい。併願校の過去問を用意し、偏差値順にこなしていくというのは徐々にレベルアップしていくので確かに現実的。けれども、これだと同レベルの学校の入試問題の対応(カバー)が心もとなく、ラ・サールよりレベルの高い学校を志願していない限り難問にふれる機会が減る。

入試問題というのは生き物で毎年進化する。入試問題を作成する各学校の先生も他校の入試問題を見て、インスピレーションを得て自校の入試問題に活かす。そう考えると、最新の入試問題に触れ新傾向を把握するというのは、志望校の過去問対策だけではできないことの一つ。

『中学入学試験問題集』(通称銀本)を買って全部解いて生徒に解かせたい良問をチェックするということも一度考えたことがある。解答はあるけれど解説が無いというのは講師側でもかなりきつい。その上、掲載が主要校+関東の学校という具合で九州の学校は全く網羅できない(できなくても算数の教材という意味では網羅しそうだけど)。直近の中学入試の良問を集めた問題集(要は数年で改訂を繰り返すような)はないのだろうかと考えていたら思い至ったのが『中学への算数』であった。

その年の問題「だけ」で構成されているのがスゴい

今年の『中学への算数』ならば2020年(1月〜2月)に実施された入試問題だけで構成されている。来年は2021年の入試問題でということ。ゆえに毎年教材が更新、進化していっているということ。月刊誌というスタイルだからこそ。スゴい。(4月号だけ例外で過去良問で「必須手法」を伝える内容。編集時期にちょうど入試が行われて大変なんだと思う)

単元のバランスも考慮されていて絶妙

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東京出版ホームページより画像拝借。特集記事の単元とは被らないように、また中学受験算数の「数」「図形」「文章題」という大きな分野をレベルアップ演習という具合で配置。当然、これらで掲載されている入試問題も当年のものだけ。ちなみに4月号には、飯塚日新館上智福岡鹿児島修学館照曜館弘学館といった九州の学校の問題も掲載されている。編集部は本当に全国の入試問題を解き、良問を抽出しているのだと思う。素晴らしい仕事。

四谷偏差値60以上の学校対策にちょうど良いレベル

レベルアップ演習
計算問題、一行問題、定番問題のラインナップ。ラ・サール中入試を見ても最初の計算問題からただ計算すれば良いという問題ではない。いかに工夫をして短時間で的確に答えを導き出すかという問題。こうしたひとひねりしている計算問題の練習ができるテキストというのは見かけない。『中学への算数』ではこうした計算の良難問をたっぷり練習できるのが魅力と感じる。

日々の演習
ここが『中学への算数』のウリなのかなと思う。レベルアップ演習とは問題文の長さも異なる、中学入試のいわゆる大問が掲載されている。月の特集に則り同じ単元の問題がほぼ難易度順に計算されているので学習もしやすい。「日々」ということで日付が打たれているけれど、土日分は無いので約20問が掲載されている。市販の過去問がだいたい10年分掲載。それと同じような良質な難問に取り組めるのが魅力。6月号から始まる「発展演習」に関しては四谷大塚偏差値65を超える学校を受験する生徒対象かな、とも。もちろん算数が得意という生徒も取り組むべき。

後世に繋ぐべき良教材

改めてじっくりと教材を手にとったことでいかに優れた教材かということがよく分かった。大手塾無し受験の場合、中学受験新演習の小6上までを小5の2月までに終わらせて、小5・3月から『中学への算数』を毎月1冊取り組んでいくというのが理想的な流れと思う。大手塾の生徒は塾の課題で『中学への算数』まで手が回らないとのこと。この良い教材でじっくりと算数の問題に取り組むことは、数学の学習にも繋がる骨太の思考力が培われるはず。本当に簡単な問題が掲載されていないので、エデュケーショナルネットワークの『コンプリーション』を併用しながらならば、難問ばかり取り組んで基礎が崩れるみたいなこともなくなるかな。

全国の入試問題を収集し、解き、編纂している東京出版編集部のスゴさ。存在のありがたさ。地元の過去問も大事だけど、こうした教材を通じて、首都圏や関西圏の動向を把握しておくというのは地方の講師にとっては重要なんだろうなと思う。

余談。『中学への算数』の編集長はラ・サール中1年のときの寮の同部屋。