中学入試における「計算力」とは?

塾用教材にある「計算テキスト」の1日1ページの効用について極めて懐疑的である。仮に1ページ10分だったとしても負荷として大きい。小学校の計算ドリルにモチベーションが上がらないのと同様で、勉強のやる気を削ぐ原因にもなるかも知れない。

なぜ課題を出す塾側も家庭もこの「計算」の課題にこだわるかと言えば、「計算力」が算数力の礎となるから。この点に関し異論はない。しかし、この教材の与え方が望む計算力の醸成に有効かあやしい。さらに前提として必要な「計算力」の定義もあやしいと考えている。

「計算力」とは?

シンプルに考えれば計算を素早く正確に解くこと。これは間違いがない。ならば日頃の鍛錬で培われる計算力がどこで試されるのか。と言われて入試問題を見ると、ほぼもれなく算数の試験問題の冒頭に計算問題がある。この計算問題でしっかりと得点できることこそが計算力だ、と考えてしまいがち。

中学入試の冒頭に出てくる計算問題たち、これはひと癖ある。計算の工夫をせずに前から解こうとすると泥沼にハマる、そんなイメージ。これは独特な鍛錬を積まねば想定時間で解くことは困難ということで練習に明け暮れることとなる。果たして。

結論めいたことから言うと、これらの計算問題というのはもはや一つの単元と言って良い。ゆえに、これらの類似問題を毎日ダラダラ練習するのは適切ではない。角度の問題が出るからと言って毎日角度の問題を練習しないのと同様だ。

そして、本当に必要な「計算力」というのは計算問題を解く力ではなく、その他の算数の問題を解く上で出てくる過程としての計算をいかに早くするか、なのだ。入試に出てくる計算問題を早く解く力、ではない。ここが曖昧だと対策もブレてくる。

本当に必要な「計算力」を培うために

上記を踏まえると、本当に必要な「計算力」を培うには、入試に出てくる計算問題の類似問題を解くのではなく、別の方法が必要ということになる。入試の計算問題をきっちり解く練習(これはこれで必要で後述)では身につかない。塾用計算テキストはこちらの対策に寄り過ぎていると思う。そして解説(途中式)がないことにより、非効率な計算練習を延々とさせられている生徒も多いのではないかと思う。

その点で、「百マス計算」「公文」「山本塾の計算ドリル」が正解と言える。練習しながら九九を使いこなせるまで暗記に落とし込むようなレベルで、約数の意識を研ぎ澄ませていく練習こそが必要。

百マス計算も制限時間・目標時間がある。公文については指導者の力量に依るところも大きいが、目標時間などが定められて実力よりも少し簡単な問題を大量にこなさせるみたいな運用をしてくれるところは大いに力を伸ばしてくれるはず。山本塾の計算ドリルは「小5までに」とうたっているが、まさにという感じ。目標時間であの計算ができると、算数の問題を解く上で計算がネックにならないので継続的な思考を途中の計算が妨げることがなくなってきて良いはず。いずれもただやれば良いということではなく、時間を意識して正確に運用できることが重要。

そして「山本ドリル」も時間内で完璧です、となった後に何をするか。それは入試の計算問題による練習ではなく、ごくごく簡単な一行問題を秒速で解く練習が良い。速さの旅人算を比を用いて暗算で解く、平面図形の面積を比を使って暗算で解く、などの練習である。計算問題ではなく、算数の問題を使って「計算」の練習・鍛錬をするということ。

中学受験新演習の『計算日記』というサブ教材。冒頭で否定した教材の一つながら、1ページに計算半分、一行題半分という構成であり、上記主旨に適うテキストだと思う。新演習も1週間に1回進む進度で、計算日記も1週(1回)に6ページある。並走する形で使うと難度もやや高く感じるはずで早解きには向かないが、それこそ小6になったタイミングで計算練習用に小5の一行題を用いる方が効果的と考えている。

入試に出る計算問題の練習法

これはこれで、計算問題にも傾向が出るので志望校の過去問をよくよく分析して練習する必要性がある。ただ、これは先述の通り単元学習に近い。オーソドックスな計算の工夫の方法を予め学んでおかないときつい。それらを知らずして解いてもただただ数字が汚く煩雑な計算問題を解くことになってしまうので。講師に習うか、こっちの「計算力」を培うための参考書・問題集の通読が必要。

当noteでは『中学への算数』の手書き解説をアップロード中。上記リンクはそのサンプル。計算問題の解説も掲載。計算の解法といっても手法は多く、Twitterのフォロワー様から提供いただいた情報も掲載。「計算問題」だけでも色々と切り口がある。これは結果的に早く解くことを目標にはしているが、どちらかというと正しい筋を学ぶということが主眼。この記事で言っている「計算力」とは異なる力だということを改めて理解していただきたい。

某予習シリーズについていけず新演習に切り替えた生徒、とりあえず負荷を減らそうということで「計算日記」も課さず。しかしながら、今まではケアレスミス連発していた計算問題では、9月の模試で満点。やみくもに計算練習をすれば良いわけではない、負荷に応じて計算力が上がるわけでもない。スムーズでスピーディーな計算を意識した授業を視聴することが結果的に効率の良い計算の学習法なのかもと思い記事にしました。こういう風に計算したよを反映した映像授業をnoteのサブスクで配信中。

結論

基礎としての「計算力」をつけるには

100マス計算、公文で四則演算、小数・分数計算の処理能力を高める
山本計算ドリルで桁数の多い数の計算を多く素早くこなし約数の感覚を身につける
極めて初歩的な一行題を素早く解く練習をする
→小6時に小5の四谷「計算」、新演習「計算日記」に取り組むなど、簡単な問題を正確に素早く解く練習ができるもの

入試の計算を解く力をつけるには

単元の学習と考え計算の工夫の基本パターンを習得する(講師から教わる、解説付きの計算問題集から学ぶ)
四谷大塚の「計算」問題集や、『中学への算数』の「計算」などで練習