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おじさん探し

いま私は穏やかな日々を過ごしています。何一つ映画祭にエントリーしていないので、落選メールが来ないのです。「We regret to inform you…」とか「not selected…」とか「Unfortunately…」とか、そういうセンテンスが入ったメールを読まなくていいんです。私はここ20年ぐらいこれらのセンテンスが含まれた落選メールを毎日のように読んでいましたが、ついに穏やかな日々が訪れました。

あまりにも毎日読んでいたので、「We regret to inform you…」とか「not selected…」とか「Unfortunately…」なんかがそのメールに含まれているかどうかは、0.05秒ぐらいで識別できました。私ぐらいになると、英文をいちいち頭から読まなくても、そのメールの佇まいで歓迎されているのか残念がられているのか分かるのです。何ならタイトルで分かります。本分を読むまでも無いのです。

たぶん数千という落選メールを読んできたでしょう。もしメンタルをやられるんだったら数十の落選メールでやられるでしょう。人によっては1通の落選メールでやられてしまうかも知れません。

落選メールは川の砂です。極たまに砂金がキラッと光るんです。ほとんどはグレーのただの砂なんですが、本当にたまに砂金が混ざっていることがあるんです。私はその一粒の砂金と出会う喜びのために映画祭に応募して来ました。

ついに2022年には1本も作品を作らなかったので、2023年は砂金に出会うことも無ければ、グレーのただの砂と出会うこともありません。いまのところ2023年も作る予定が無いので、2024年もメールの受信箱は静かでしょう。地道にアニメーションを作っていますが、2023年中には出来ないので早くても2024年の完成なんです。下手したら完成するのに3年ぐらいかかる気もしています。

いろいろな人に会うたびに「いま何か作ってるんですか?」と聞かれるんですが、「アニメーションを作ってて完成は来年以降ですね。」と言ってもしょうがないと思い「いまは何も作ってないですね。」と言ってしまいます。「何も作ってない」と言うと「そうなんですね…」で大体話しは終わってしまいます。

私はあえて作るのをやめたところがあります。拙速に作るのをやめたという感じでしょうか。毎年毎年ノルマのように作るのをやめました。私は「継続こそチカラなり」を宗教のように信じているので、続けてきたことを止めるには勇気が必要でした。でも限界も感じたんです。このまま飛び続けても着陸に向けて徐々に高度を下げていくだけだと思いました。

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