見出し画像

ゆれる家と物件情報

うちの家は揺れる。原因として挙げられるのは、近くにある線路を快速電車が通過する風圧もしくは、近くにある鉄鋼加工工場から作業時の振動、または数十メートルさきの幹線道路をトラックが通過するときの地面の揺れ。
築数年以内の3階建て賃貸アパート3階だが、前に住んでいた13階建てマンションの11階より揺れる。平日の昼間など5分に一度くらいの間隔で壁に飾っている食器類がカタカタと鳴る。
なんなら11階に住んでいた時はほぼ地上に住んでいたと言えるくらい今のほうが揺れる。

来客のなかでも敏感な方は気づくので「あ、いまのは地震じゃなくて・・」と説明して安心してもらう必要がある。和やかに談笑していたのに、いきなり家が揺れるのはドキドキすると思う。
揺れる家に住んでいると、地震の揺れはこう、まず地鳴り音がしてそれから、といった地震の揺れの特徴を説明できるようになる。
これは地震ではない、という言葉に説得力を持たせるために。

ちなみに私より3倍社交性のある娘が、同じ3階住民に、揺れるかどうか聞いてみたことがあるという。答えは「感じたことはない」とのこと。え、ホラー?

家が揺れる事とはあまり関係ないけれど、物件情報のアプリを眺めるのが好きだ。
空き部屋の写真や間取り図を見ていると、今現在はだれも住んでいない空間が、これから近いうちにだれかの住む場所になるのを待っていて、そのうちだれかの毎日の景色になっていくのが不思議で、さらに、かつてそこに住んでいた誰かの思い出の中に家の各場所も登場していると思うとエモい。
もし、この部屋に引っ越したら・・ここにあれを置くことになるか、などと考える醍醐味のほかに、何か月も空き家のままずっと募集がかかっている部屋の何がダメなのかを想像する楽しみもある。

私が住んでいるこの家に、次に住む人はどんな人だろう。揺れる家に気づくとき、前の住人はこれを感じながら生活していたことも想像するだろう。地震との違いにも詳しくなるだろう。
引っ越し前の内見時に管理会社から「あ、ちなみにここ揺れるらしいんですよね。」と言伝されるように退去時に報告すべきだろうか。

いつか物件情報アプリでこの部屋がずっと掲載されたままになっていたらそれはそれで面白いので言わないまま引っ越そう、と思いながら今日も私は家ごと揺れている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?