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【BARS】有名人の名前を動詞として用いる(Travis Scott - "SICKO MODE")

【今回のポイント】

This shit way too big, when we pull up, give me the loot (Gimme the loot!)
Was off the Remy, had to Papoose

こいつはデカすぎる、俺らが停まったら金をよこせ(金をよこせ!)
レミーで酔ってたんだ、パプースせずにいられなかった

 ◆"shit"は"thing"と換言可能
 ◆be動詞"is"が省略されている
 ◆"pull up"で「(車を)停める、寄せる、つける」
 ◆"loot"は「お金」
 ◆"off ..."は「…で酔って、…でハイになって」
 ◆"Gimme the loot!"はもちろんビギー「Gimme the Loot」から。この直前にきちんと"big"という単語が配置されている点に注目
 ◆「レミー」はコニャックのブランドであるレミーマルタンを指すと同時に、ラッパーのレミー・マー(Remy Ma)の意味も掛けられている。彼女はパプース(Papoose)と結婚しており、彼の名前を動詞として用いることで、「レミー(Remy)マルタンで酔っていたがために、レミー(Remy)・マーに言い寄った50セント(50 Cent)に噛みついたパプース(Papoose)のような、攻撃的な姿勢で相手に対処しなければならなかった」と言っている

以下はブログ『Genius & Cortez』にも掲載した記事の転載です。ブログで全文お読みいただけるので有料部分は設けませんが、気に入ったらご購入いただけると嬉しいです。頂いたお金は、YouTubeチャンネル『HIP HOPで学ぶ英語』の今後の運営資金として使わせていただきます。

【今日の一言】

《前略》そんなLa Flameの新作ですが、歌詞の表現技法に目を向けても、おぉ!と思うようなものがいくつかありました。

特に、関連性のある単語やフレーズを近くに配置して引き立たせる、「縁語」が効果的に使われている箇所が多いように感じました。

具体的にどんなふうに縁語が用いられているか、いくつか例を見ていきましょう。

1. STARGAZING

She keep my dick jumpin' up, I feel like I'm Moby
I'm way too gold for this beef, feel like I'm Kobe, yeah

彼女は俺のチンコを勃たせ続け、俺はモービーの気分
俺はこのビーフに参加するほど落ちてない、コービーの気分

1行目の「彼女」はカイリーを指すものと思われます。「チンコ(dick)」の後になぜ「モービー」が出てくるかというと、ハーマン・メルヴィルの小説に『白鯨』(原題:Moby-Dick; or, The Whale)というものがあるからなんですね。加えて、ミュージシャン=モービー(Moby)のアルバム『Play』(1998年)のアートワークには、彼がジャンプしている写真が使われており、これが"jump"との関連を生んでいます。
2行目の「コービー」は、もちろんコービー・ブライアントのことです。ここでなぜコービーが出てくるかは、もうお分かりですね。彼の名前は神戸牛に因んでおり、「ビーフ」と関連するためです。

3. SICKO MODE

This shit way too big when we pull up give me the loot (Gimme the loot!)
Was off the Remy, had to Papoose

こいつはデカすぎる、俺らが停まったら金をよこせ(金をよこせ!)
レミーで酔ってたんだ、パプースせずにいられなかった

"Gimme the loot!"はもちろん、故ザ・ノトーリアス・B.I.G.(The Notorious B.I.G.)のアルバム『Ready to Die』(1994年)に収録されている「Gimme the Loot」から引用したものですが、この直前にきちんと"big"という単語が配置されていますね。
また、2行目の「レミー」はコニャックのブランドであるレミーマルタンを指すと同時に、ラッパーのレミー・マー(Remy Ma)の意味も掛けられています。彼女はパプース(Papoose)と結婚しており、彼の名前を動詞として用いることで、「レミー(Remy)マルタンで酔っていたがために、レミー(Remy)・マーに言い寄った50セント(50 Cent)に噛みついたパプース(Papoose)のような、攻撃的な姿勢で相手に対処しなければならなかった」と言っています(パプースと50の一件についてはこちら)。

4. R.I.P. SCREW

Rest in peace to Screw, tonight we take it slowly
スクリューよ安らかに眠れ、今夜はゆっくり飲むぜ

これはわざわざ説明するのも無粋な気がしますが…イントロから1ヴァース目にかけてのビートが気持ちよすぎる故DJスクリュー(DJ Screw)への追悼曲では、"Screw"と"slowly"が縁語になっています。トラヴィスは地元のヒーローを偲び、リーンかお酒(おそらくは前者寄りの両方)を「ゆっくり」飲むのでしょう。それは、DJスクリューが始めたとされるチョップト・アンド・スクリュード(Chopped & Screwed)と呼ばれる技法が、曲のBPMを下げてゆっくりにすることに因んでいます。

8. WAKE UP

Any given Sunday, you can get it, Willie Beamen
I can make your Mondays even better like the weekend
どんな日曜だって、ウィリー・ビーメンみたいに君のものさ
君の月曜を週末みたいによくしてあげる

1行目は映画『エニイ・ギブン・サンデー』(原題:Any Given Sunday)に因んだラインですね。同映画にはウィリー・ビーメンという登場人物がいました。
2行目はというと、1行目からのつながりで「月曜(Mondays)」が出てきて、曜日つながりで「週末(the weekend)」が出てきますが、これはそれだけでなく、この曲に客演しているザ・ウィークエンド(The Weeknd)にも関連しています。"than"でなく"like"にしているのは彼への配慮でしょう(笑)。

13. CAN'T SAY

I'm out my mind, yeah I'm high, above the rim (I'm out my mind)
You cop it live, boy I got it all on film

俺は最高の気分、あぁ、ハイさ、バスケのゴールよりも(最高の気分だぜ)
お前がそれを買うのを全部フィルムに収めたぜ

ウィードでハイになったトラヴィスは、"rim"(バスケのゴールの縁)よりもハイ(高い)な気分なんだそうです。そして、仲間がウィードを買う様子の始終をフィルムに収めたと言っています。これだけの、なんてことなさそうなラインですが、実はここでは"above the rim"と"film"が縁語です。Above the Rim (邦題『ビート・オブ・ダンク』)という名前の「映画(film)」があったことに因んだ表現ですね。これはGeniusにも載っていなかったので、誰か僕を褒めてください!笑

パッと気づいたのはこんなところですが、他にもまだまだありそうなので、「これは」という縁語に気づいた方はぜひ教えてください :)

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