【青空文庫感想】夏の葬列
喉の奥とみぞおちがぐっとなって、息が入ってこなくなった。私は、おれと同じような人間だ。
おれに突き飛ばされ艦載機に撃たれたヒロ子は、おれのことを憎んでいないんだと思う。撃たれてなお、おれの安否を気遣ったのだろうし、死んでなお、おれが無事だったことに胸を下ろしたんじゃないかと思う。
長年「殺人をおかしてしまった」と苦しんだおれの「おれのせいではなかった!」という気持ちを抱いて高まってしまったその感じが、私もそちら側だなと感じて、だからこそウッとなってしまったのかもしれない。その気持ちが、分かる。
同時に、気が狂ってしまった、ヒロ子の母の気持ちも、分かる。ヒロ子が撃たれて、おれが助かってよかったと、母の立場で私は思えるのだろうか。私は母になったことはないけれど、想像してみるだけでも、多分思えない。
ヒロ子もおれも、どちらも死なない方がもちろんいい。たとえ助けに行かなかった結果が死になったとしても、助けに行って死んでしまうなら、いちばん大切な人には助けに行かずに生きていて欲しいと、そう願うのが私だ。
ヒロ子のような人間に、私はなれない。なれないままの私で、私はこのまま生きていくのだ。
なれなくても、私はいい、と思って、そういう人間である私を受け入れて、生きていこうと思った。
おわり
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