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「兎と波」の伝統文様の元ネタは能!?

新年も明けて、早くも1月が終わりましたね。
今年は卯年なので、可愛い兎の年賀状をもらった方も多かったかもしれません。

早速ですが、こちらの絵柄を見たことはございますか?

「波兎(なみうさぎ)」という日本の伝統文様です。
波の上を走る兎の絵柄ですね。
工芸品などでも取り上げられる縁起物の図柄です。

兎といえば月をイメージする方が多いでしょうが、なぜ兎に波なのでしょう。
それは能「竹生島」にある謡の一節から引用されていると言われています。

能「竹生島」のあらすじは次の通りです。

醍醐天皇の臣下たちが、竹生島参詣のため琵琶湖にやって来ます。臣下は湖畔で出会った漁師の老人と若い女の舟に、乗せてもらいます。
竹生島に到着すると、老人と女は臣下を弁才天の社殿に案内しますが、臣下は「女人禁制ではないか」と問います。二人は「竹生島は女体の弁財天を祀っているのだから、隔てはない」と言い、島の由来を語ります。
その後、女は社殿に、老人は湖に消えていきます。
やがて臣下たちの元に弁財天が現れ、舞を舞います。そこへ龍神が現れ臣下に宝玉を捧げると、国土成就、衆生済度を誓い、竜宮へ帰っていきました。

臣下が老人の舟に同乗し、竹生島へ向かう場面で下記の謡が謡われます。

「緑樹影沈んで 魚木に上る気色あり
月海上に浮かんでは兎も浪を奔(はし)るか 面白の島の景色や」

緑の樹木が湖水に影を落とし、その影を縫って泳ぐ魚が樹々を上っているようです。月が湖の上に浮かぶときは、月に住む兎が波を走るだろうか。何と素晴らしい浦の景色だろう。

観世流大成版謡本特製一番本「竹生島」より

兎が波に戯れる文様はこの場面から作られたのですね。

とても想像力豊かで、竹生島の美しい情景が浮かんでくるようです。

今年の観世会初会では「竹生島」が「女体」の小書付きで演じられました。女体という演出は弁財天が女性の神であることを強調したもので、後半のシテ(主役)が龍神ではなく弁財天になります。
観世流には元々、女体の小書はありませんでしたが、喜多流から、観世流の「松風」の小書「戯之舞」と交換に伝わったといわれています。

「波兎」の文様を見かけることがありましたら、ぜひ「竹生島」の一節を思い出してくださいね。
また琵琶湖の竹生島へ訪れる際にも、思い出していただけると嬉しいです!

「竹生島」の2023年公演情報はこちらです!

2/12 【京都府】大江定期能 大江能楽堂(仕舞)
2/26 【東京都】観世九皐会若竹能 矢来能楽堂(仕舞)
6/18 【愛知県】名古屋宝生会 蛍火能 名古屋能楽堂(能)
7/23 【東京都】喜多流自主公演 観世能楽堂(能)
9/17 【東京都】梅若会 定式能 梅若能楽学院会館(能)

※公演は変更されることがあります。


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