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知らないと大恥!? 正しい巨大ハンバーガーの食べ方

よくあるアフィリエイト記事みたいなタイトルだなぁ。さっき引っかかったばかりなのでうつったかも知れない。

家でずっと文章を書いていたらものぐるほしけれになったので、近所のアメリカンキッチン(とでもいうのか)が閉店するらしいし、入ってみた。
全く都会ではない日本の地方都市に、なぜかあったのである。アメリカンキッチン。

数年前に食べたローストビーフ丼がメニューにない。しかも人気らしいオムライスを見つめていたらお兄さんが慌てて「あ、オムライスは具材足りなくなりました」と声をかけてきた。
仕方が無いので、いかにも看板メニューぽいハンバーガーを初めて頼んでみた。

ハンバーガーといっても、ここは本拠地アメリカ(……村でな! 的なところ)、サイズは私が普段マクドナルドで頼むものを遥かに凌駕している。
しばらくして、ナイフとフォーク、皿に直に盛り付けられたハンバーガー、そしてナプキンぽい白い紙が運ばれてきた。

さて。
ナイフとフォークがついてきたということは、やはり切り分けて食べるんでしょうね。
テレビでもたまにそういう光景見るしね、いや見た、気がするんだけど。

フォークで抑え、ナイフを突き入れる、ようとする、ぐにゃり。
パンがズレて中身が飛び出してきた。
ジーザス。

なんかこう、私が悪いとかいう次元ではない気がする。パンに、切られてやろうという譲歩の気配がない。どうやってもズレる。ナイフの下から逃げやがるあいつは。

と思い、むんずとつかんでみる。かなり持ちにくい。中身がぼたぼた皿に落ちる。ああ。予期せぬエラーに店のどこかからブザーが鳴り始めそうな事態だ。これ正しいんだろうか。店員が私の前を通り過ぎる。(うわ何この客素掴みてヤバ)そう思われている気がする。

不安になった私はぼたぼた無念の中身を垂らすハンバーガーを皿に戻し、おしぼりで手を拭いて検索してみた。
「大きいハンバーガー 食べ方」
1番上に出てきた記事をタップする。
目次までついている。しかも章の数が多い。信頼できそうだ。
しかし読み進めると、肝心の中身が章ごとに1行ずつくらい、更に「そもそも見た目より食べやすさを重視した食べ物です。なぜ日本人は綺麗に食べることに無駄にこだわるのでしょう」と筆者の嘲笑じみた疑問で締めくくられていて、そのわりに「素掴みOK」とも明記しないスッカスカの記事だった。まぁ調べる私もスッカスカだと言いたいのだろうけど。実際確かにスッカスカなのだろうけど。

ただ、その中にどっかから拾ってきたのだろう、アメリカ人風のおばあさんがむんずと巨大ハンバーガーを掴んで食べようとしている画像が使われていた。私はそのおばあさんを信用することにした。

私は再度自信をもってハンバーガーを掴む、掴もうとした、指先に力を込める、ぐにゃり。
中身含めて上体が大きくズレた。
オーマイ、ガーッ!
神は私に再スタートすら切らせないというのか。慌ててフォークとナイフで中身とパンを戻そうとする。ソースでベッチャベチャなのでさすがに素手で触りたくない。なかなか戻らない。絶望した。結局手も使った。

ようやく持ち上げる。底がベチャベチャだった。なぜなら私はさっき、皿にぼたぼた中身が垂れたその上にバーガーを置いたからだ。ベチャベチャというかもはやヒタヒタである。

味はとても美味しかった。ボリューミーなハンバーグは肉汁とホロホロした噛みごたえが絶妙である、ただ、それ以上に私は疲弊していた。社会のマナー、日本人の上っ面根性の否定、襲いかかる物理法則、ヒタヒタ。
もはやこのハンバーガーを早く完食するということ以外私の脳は全てをシャットアウトしていた。

ああ、宇宙だ、と思った。宇宙が広がっている。今この瞬間、私と右手に掴んでいるハンバーガー以外この宇宙には存在しない。右手に掴んでいる小麦と肉の塊(他にもいろいろ挟まっていたはずだが大体脱落した)の感触はあまりに確かで、それが口の中の香ばしさと共鳴して、私は今、食事をしている、という実感をこの上なく際立たせていた。

完食──

正確にいえば最後の1口を大きくしすぎて咀嚼が困難になり、ここでもまたにわかに絶望したのだが、私はどうにかアメリカを乗り越えた。
と、ここで、ハンバーガーと共に運ばれてきたナプキンのような紙に目が止まった。正方形に嫌な予感がする。

実は袋みたいになっていたら嫌だなぁ。

なっていた。

もしかしたら、店側としてはわりと多様な選択肢を客に提示していたのかも知れない。ナイフとフォークでもよし。袋に入れて持って食べるでもよし。「素掴み」がその内に入っていたかは定かではない。多分もう考えない方がいい。とりあえずバーガーを入れる用の袋は最後まで純白を貫いた。それだけだ。けどね、ナイフとフォークはよほどのプロじゃないと使いこなせないと思うよ、きまぐれクックとか。

全く、とんでもない文化だ。この小さな街には確かに収まりきらない。店舗の撤退は正解だったかもしれない。(ここは支店で、本店はどこかで継続して経営していくらしい)

今回は抱えきれたからよかったものの、もう本当に抱えさせる気のないハンバーガーってあるよね。運ばれてきた段階から既に中身が溢れ出してたりね。どう食べるんだろうね。それこそナイフとフォークか。クック呼んでこい。

少なくとも私は、そんな絶望に挑戦しようなどという気持ちは毛頭起きない。

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