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さよならを言えないものたち最終回/さよなら、代行します

これまでのお話

あらすじ

智彦はあることをきっかけに動物のさよならメッセンジャーを卒業する。そして、次に就いたのはぬいぐるみなどの無機物たちのさよならメッセンジャーだ。

〇公園

しょんぼりして椅子に座っている男の子サトル(10)の前に智彦が立つ。

智彦「クマのぬいぐるみ……名前はとんべえだよね」

サトル「お兄さん、どうして知ってるの?」

智彦「とんべえは、お兄さんの弟がもらったんだ」

サトル「お兄さん、お母さんの親戚?」

智彦「そうだよ」

サトル「よかった。大事にしてね。あ~よかった。安心した。お父さんが、男の子なのにぬいぐるみはおかしいって――。捨てたんだと思ってた」

〇回想・ゴミ捨て場

ゴミ袋に詰められているクマのぬいぐるみ。そのままゴミ回収車に袋ごと投げ入れられ、のみこまれていく。

〇公園

智彦「違うよ。ちゃんと無事だから」

サトル「よかった。あのぬいぐるみはおばあちゃんの形見なんだ。でも、お母さんのお母さんだから、お父さんが嫌がってて……。もう離婚したんだから、あっちの家のものは全部捨てろって言われた。でも、とんべえだけは捨てないでって言ったのに……取り上げられた」

智彦「友達だったんだね」

サトル「うん。お父さんとお母さんが仲が悪いとき、僕はずっとおばあちゃんちにいってたんだよ。そのとき買ってもらって。で、ずっと話を聞いてもらってた。だから、ええっと、こういうのは友達以上で……」

智彦「同士……だろ?」

サトル「そう。だけど、離れ離れになっちゃった」

智彦「同士なら。離れても心はつながっているよ。それぞれの場所で、今度はひとりで戦うんだ」

サトル「そうだね。もうとんべえに話を直接聞いてはもらえないけど……心でずっとおしゃべりしてる。とんべえは、次のお友達のこともあるだろうから、……ぼくはぼくで頑張るよ」

智彦「ああ」

サトル「じゃあね、もう塾の時間なんだ。とんべえのこと、教えてくれてありがとう」

サトルは公園から走って出ていく。しっかり顔があがっている。

智彦「とんべえ、伝えたよ。君の同士は、成長した顔をしてた。だから君は安心していい」

〇炎

炎で燃やされるクマのぬいぐるみカットイン

〇公園

智彦は一度空を見上げて、公園からゆっくりと出ていく。

おしまい


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