テレ東ドラマシナリオ案その2
ゆき(47)
くるみ(20)
〇サウナ内
くるみが座っている少し離れたサウナの席にゆきが座る。ゆきはくるみの方にちらりと目を向けると、彼女の手首に傷が数本走っているのを見つける。
ゆき「あなた東京の人じゃないでしょ?」
突然話しかけられて驚くくるみ。
ゆき「雰囲気でわかっちゃうのよね」
くるみ「田舎者だって言うんですか?」
ゆき「違う違う。私も田舎の出だから懐かしいの」
くるみが黙っているので、ゆきは話を続ける。
ゆき「ここいいわよね。カプセルホテルのサウナって、男性専用ばかりじゃない? でも女性専用があるなんて、時代も変わったと思うもの。私が東京に出てきたばかりのときはカプセルホテル自体、男性用しかなかったからね。でもここ大浴場もあるじゃない? サウナが良かった? まあ空いてるけど……」
くるみ「お風呂は……人の入ったお湯だから汚い」
ゆき「それでサウナの方に来たんだ」
くるみ「おばさんだって、サウナに来てる」
ゆき「あー、私? そっか、おばさんか……いや、おばさんなんだけど、一応独身ね。それにゆきって名前がある。あなたは?」
くるみ「くるみ」
ゆき「か、かわいい名前ね。イマドキ! おばさん、古い名前で恥ずかしいな」
くるみ「別に今もいるよ。それに自分でおばさんって言ってる」
ゆき「そうだね。おばさんじゃない。おねーさんだった。私ね。右胸がないの。手術で取っちゃったから」
ゆきはバスタオルの右胸のあたりを撫でる。
ゆき「だから、サウナの方が好き。お風呂だと、どうしても裸になって、胸が見られちゃうでしょ。じろじろ見られるの、好きじゃない」
くるみ「わかる」
くるみはさっと自分の左手首の傷跡を右手で抑える。それを一瞬だけ見やるゆき。
くるみ「再建しないの?」
ゆき「良く知ってるね。うーん、未婚だし、その道もあったんだけど……転移したのよ。だから、どうせ灰になるなら、いっかと思っちゃって」
くるみは驚いたようにゆきを見つめた。ゆき笑っている。
ゆき「私の期限は3ヶ月ってところかな? でも、みんなと一緒よ。どんな健康な人だって、明日どうなるかわからないでしょ?」
くるみ「わかる」
くるみはもう手首の傷を隠そうとせずに、両膝の上に置いて、ぎゅっとしている。
つづく
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