テレ東ドラマシナリオ案その5
サウナの話
ゆい(22)
葵(54)
〇サウナ内
ゆいと葵は隣あって、サウナの段に座っている。
ゆい「ここ、塩とか置いてないんだ」
葵「そんな贅沢言えないなあ」
ゆい「ええ~。でもうちの近所のスーパー銭湯なら、アメジストサウナとかもあるし、ロウリュとかのサービスもあるのに」
葵「な、なに、そのローリング?」
ゆい「違います。ロウリュ。おばさん、知らないの?」
葵「ごめんね。おばさん、ここ15年くらいスーパー銭湯ってのに行ってないのよ」
ゆい「結構長いんだね」
葵「まあ、いろいろあってね」
ゆい「ロウリュってのは、フィンランドとかでやってるサウナの楽しみ方みたいなんだけど、アロマオイルを石にかけて、それを仰いで当ててくれるってやつよ」
葵「なに、それ、楽しそう! ここを出たら、そのサービスやってるところを探して行ってみる。きっとまだやってるよね」
ゆい「たぶん、もう定着してると思うから、そうそうなくらないと思うけど……」
葵「塩がないくらいは我慢できるけど、それにしてもここぬるい温度よね」
ゆい「低予算なんでしょ。一応、公共の施設だから」
葵「そうね。燃料にだってバカにならないし」
ゆい「ここを出たら、もっと高い温度のサウナ行こう。それにあがったらアイスクリームも食べたい」
葵「いいわね。アイスクリームかあ。子供が好きだったなあ」
ゆい「子供いるの?」
葵「いる。けど、小さい頃に別れたから、あっちは覚えてないと思う」
ゆい「……意外と覚えてるものだよ」
葵「あなたお子さんいるの?」
ゆい「ううん。ここに入る前におろした」
葵「……そう……。彼氏は?」
ゆい「今、私が出るのを外で待っててくれてる」
葵「待っててくれそう?」
ゆい「本人はそう言ってるけど、どうだか……? すぐパチンコに行って、私のことなんて忘れてるかも。おばさんは? 誰か待たせてる?」
葵「誰も。母親はここに入ってる間に死んだし。出たら、まずはお墓参りかな? でも、もしかしたら、ここから出られずに死ぬかもしんない」
ゆい「そんなに長くいなきゃいけないの? 干からびちゃうよ」
葵「それだけのことをしたの。……結構、たくさん殺したから……。あなたもコロシ?」
ゆい「……うん。実の父親。おろした子は父親との子」
葵「……そっか。辛いね。でも、待っててくれる人がいるんだ。たぶん、早くここから出られると思うよ」
ゆい「頑張っていい子にしてる」
葵「そうね。私が出られない分、外に出たらいっぱい楽しんで」
ゆい「おばさんも長生きして墓参りできるといいね」
葵「ありがと。優しい子ね。あなたならすぐ出られるわ。いくらサウナ付きっていっても、監獄にいつまでもいたくないものね」
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