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Vol.32 金融庁が積極的に情報隠蔽していたという事実

2019年5月24日、金融庁が発令した業務改善命令によって明らかとなった西武信金の不適切(不法?)な融資。


<業務改善命令>
第2.処分の理由

当局による立入検査の結果や信用金庫法第89条第1項において準用する銀行法第24条第1項に基づき求めた報告を検証(注)したところ、金庫は業績優先の営業を推進するあまり、内部管理態勢の整備を怠った結果、以下のような問題が認められた。

(1)投資用不動産向けの融資にあたり、形式的な審査にとどまり、不適切な信用リスク管理態勢となっている。

i. 融資実行を優先するあまり、融資審査にあたり、投資目的の賃貸用不動産向け融資案件を持ち込む業者による融資関係資料の偽装・改ざんを金庫職員が看過している事例が多数認められる。

ii. 投資目的の賃貸用不動産向け融資について、融資期間に法定耐用年数を超える経済的耐用年数を適用する場合には適切な見積りが不可欠である中、経済的耐用年数等を証する書面を作成する外部専門家に対し、金庫職員が耐用年数や修繕費用等を指示・示唆するなどの不適切な行為が多数認められる。

https://lfb.mof.go.jp/kantou/rizai/pagekthp027000005.html


さらに、業務改善命令が発令された同日、西武信用金庫から以下の発表がありました。


(注)なお、現状当金庫で把握している計数等は以下のとおりです。
○ 投資目的の賃貸用不動産向け貸出案件を持ち込む業者による融資関係書類の偽装・改ざんを当金庫職員が看過してしまった可能性が高い件数
当金庫の認識では127 件です。そのうち、当金庫が、債務者と面談して調査した結果、何らかの偽装等があったと認められる件数が73 件ございました。その他については、引き続き確認を実施してまいります。

○ 経済的耐用年数等を証する書面を作成する外部専門家に対し、当金庫職員が耐用年数や修繕費用等を指示・示唆するなどの不適切な行為と思われる件数
現存する18 か月間のメールでのやりとりからは258 物件あると確認しています。この期間内の同書面の数との比較では約1 割に相当します。


要するに西武信用金庫自ら不正を認めているのです。


この不適切な行為の問題は


  • 融資期間に法定耐用年数を超える経済的耐用年数を適用する場合には適切な見積りが不可欠であるとされていた

  • 経済的耐用年数を用いた築古物件への融資は、国交省や不動産鑑定士協会もバックアップしていた

  • しかし、ある時期から金庫職員が外部専門家に対して耐用年数や修繕費用等を指示・示唆していた

  • 結果として担保価値に見合わない過剰な融資を反復的に実行していた

  • この不適切な融資を受けた債務者は融資を受けた時点で債務超過で出口なし


私はこの不適切な融資の被害者の一人であると確信し、その被害の回復を求めて活動しています。




業務改善命令に至った金融検査。金融庁はこの検査によって西武信金による多数の不正融資の事実を把握したにも関わらず、その後にやったことと言えば「業務改善命令」という大甘の行政処分のみ。
金融庁は被害者救済のためにできることがもっとあるのに何もしないまま静観していたのでした。

そこで私は、金融庁が把握していた事実を明らかにすべく何度かの情報開示請求を行い金融庁の保有している行政文書を入手しました。しかしそれらは全て大きな海苔弁。

私はこの金融庁の隠蔽工作を不服として審査請求を行いました。その結果、「ほんの一部だけ」海苔が取り除かれましたので、その一部を貼っておきます。
左が最初に届いたもの。対して右が審査請求後です。



開示された部分は

  1. 今回検査

  2. においては、信用リスク管理体制につ           

  3. いては、

  4. 賃貸用不動産向け貸出に関し、関係書類の偽装・改ざん等  

  5. を検証した。

  6. 法令等遵守態勢については、反社会的勢力の排除への取組や、マネー・ローン

  7. ダリング及びテロ資金供与防止(以下、「AML/CFT」という。)態勢等に関し、管理態

  8. 勢及び対応状況を検証した。

  9. 経営管理態勢については、

  10. 内部統制機能の発揮状況及び理事長に対するけん制機能の発揮状況を検証し


どう見ても一般的な情報でしかありません。
しかしながら、当初の開示決定通知書に記載されていた不開示の理由として以下のような記載がありました。



「法第5条第2号イ」
不開示とした部分には、金融機関の経営・内部管理等に係る情報及び取引先に係る情報が記載されており、通常公表されることのない情報である。これを公にした場合、金融機関の内部管理態勢等が明らかになるなど、当該金融機関やその取引先の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるため不開示とする

「法第5条第6号イ」
不開示とした部分は、検査の着眼点や検査の手法等、検査方法に係る情報が記載されている検査情報の一部であり、通常公表されることのない情報である。これを公にすることにより、検査において違法若しくは不当な行為の発見を困難にして、検査事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。
また、検査は被検査金融機関の協力を得て行うものであるところ、これらの情報は、それを公にすることになれば、今後は開示されることを憂慮して本件被検査金融機関を始めとする金融庁の所管業者の対応が非協力的になるなど、正確な事実の把握を困難にして、検査事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあることから不開示とした。


嘘じゃん!

どこにも金融庁が主張する不開示理由のことなど記載されていませんでした。
さらに他のページでも同様の隠蔽があったことが証明されていました。



  1. 今回検査において、賃貸用不動産向け貸出

  2. 検証を行った。



  1. メール

  2. を検証した。

  3. 当金庫職員によるER___の修正指

  4. 示などの不適切な活用実態が明らかとなっている事例が、__258物件_認め

  5. られる

  6. 127件

  7. 当金庫による債務者面談調査の結果、何らかの偽装等が発覚(73件)


このページの隠蔽は大問題であると受け止めました。
金庫職員が不動産の専門家に改ざんを指示・示唆していたのが258件、不芳チャネル(=業者)による不正の可能性のあるものが127件あったことは、業務改善命令を受けた当日に西武信金から発表されていました。
しかし金融庁からの発表では「多数」とぼやかしており、金融庁は詳細の数字は把握していない風を装っていました。

この「装っていた」と受け止める理由は、以前の質問主意書の答弁にて


お尋ねの「証拠の残っていた二百五十八物件の詳細状況」の意味するところが必ずしも明らかではないが


としていたためです。
しかし、この開示によって金融庁はその具体的な数字を業務改善命令発令前から把握していたことが明らかとなりました。にも関わらず、金融庁は私からの再三の問合せに対して現在まで知らぬ存ぜぬを貫き通していたわけです。


  1. メールを確認したところ、__258物件において


ここでも「メール」。どうやら金融庁は、西武信金と不動産鑑定士等の不動産の専門家との間でやり取りされていたメール履歴を多数保有しているようです。そしてその内容から「経済的耐用年数や修繕費用の不正を指示・示唆していた」と判断されたのだろうと思われます。


審査請求によって開示された追加情報により


  • 金融庁は西武信金の不正の内容や件数を把握していた

  • その証拠となるものはメール履歴である

  • しかし質問主意書においては虚偽とすら思える回答に徹しており事実を隠蔽していた


結果として金融庁はいまだに被害者を無視し続けている


ということが明らかとなりました。



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