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Vol.41 西武信金の虚偽の主張が前提となった和解の正当性とは?

2019年5月24日、金融庁が発令した業務改善命令によって明らかとなった西武信金の不適切(不法?)な融資。


<業務改善命令>
第2.処分の理由

当局による立入検査の結果や信用金庫法第89条第1項において準用する銀行法第24条第1項に基づき求めた報告を検証(注)したところ、金庫は業績優先の営業を推進するあまり、内部管理態勢の整備を怠った結果、以下のような問題が認められた。

(1)投資用不動産向けの融資にあたり、形式的な審査にとどまり、不適切な信用リスク管理態勢となっている。

i. 融資実行を優先するあまり、融資審査にあたり、投資目的の賃貸用不動産向け融資案件を持ち込む業者による融資関係資料の偽装・改ざんを金庫職員が看過している事例が多数認められる。

ii. 投資目的の賃貸用不動産向け融資について、融資期間に法定耐用年数を超える経済的耐用年数を適用する場合には適切な見積りが不可欠である中、経済的耐用年数等を証する書面を作成する外部専門家に対し、金庫職員が耐用年数や修繕費用等を指示・示唆するなどの不適切な行為が多数認められる。

https://lfb.mof.go.jp/kantou/rizai/pagekthp027000005.html


さらに、業務改善命令が発令された同日、西武信用金庫から以下の発表がありました。


(注)なお、現状当金庫で把握している計数等は以下のとおりです。
○ 投資目的の賃貸用不動産向け貸出案件を持ち込む業者による融資関係書類の偽装・改ざんを当金庫職員が看過してしまった可能性が高い件数
当金庫の認識では127 件です。そのうち、当金庫が、債務者と面談して調査した結果、何らかの偽装等があったと認められる件数が73 件ございました。その他については、引き続き確認を実施してまいります。

○ 経済的耐用年数等を証する書面を作成する外部専門家に対し、当金庫職員が耐用年数や修繕費用等を指示・示唆するなどの不適切な行為と思われる件数
現存する18 か月間のメールでのやりとりからは258 物件あると確認しています。この期間内の同書面の数との比較では約1 割に相当します。


要するに西武信用金庫自ら不正を認めているのです。


この不適切な行為の問題は


  • 融資期間に法定耐用年数を超える経済的耐用年数を適用する場合には適切な見積りが不可欠であるとされていた

  • 経済的耐用年数を用いた築古物件への融資は、国交省や不動産鑑定士協会もバックアップしていた

  • しかし、ある時期から金庫職員が外部専門家に対して耐用年数や修繕費用等を指示・示唆していた

  • 結果として担保価値に見合わない過剰な融資を反復的に実行していた

  • この不適切な融資を受けた債務者は融資を受けた時点で債務超過で出口なし


私はこの不適切な融資の被害者の一人であると確信し、その被害の回復を求めて活動しています。




不動産鑑定士を相手取った損害賠償請求の裁判において原告側の証人として出廷した西武信金の内部統括副支店長。証人尋問において彼の口から以下の証言が得られました。

・被告である不動産鑑定士を選んだのは西武信金
・被告の契約の相手方は原告であり西武信金は仲介しただけ

にも関わらず


西武信金は原告の意思を確認することなく不動産鑑定士に対して「費用をかけた修繕後の鑑定評価」を依頼し、完成した鑑定評価の前提条件を原告に説明することもしなかった



これは業務改善命令に至った理由そのものでしょう。

この証言によって裁判の結果も大きく変わるものと想像していますが、それはそれとして、問題は以前に西武信金相手に行っていたADR。
このADRにおいて、当時の私は
「西武信金が不正を行ったことを立証する証拠」
をほとんど持っていなかったため、私の主張は主に主観的な事象のみでした。


  1. 築古の鉄骨造の残耐用年数が35年、全耐用年数が71年

  2. 共同担保となった木造物件のうちの1軒がやはり残耐用年数35年、全耐用年数が54年

  3. 共同担保となったもう1軒の木造物件においては残耐用年数35年、全耐用年数84年


「3物件全ての残耐用年数が35年に統一されていること」
同じ木造でも全耐用年数が異なること、木造より鉄骨造の全耐用年数のほうが長くなってことからも何らかの指示・示唆があったことは明らかである。


このように主張していました。対して西武信金の主張は


業務改善命令にあるような耐用年数や修繕費用等を指示・示唆するなどの不適切な行為は一切行っていない


お互いの主張は平行線のまま話し合いが進みましたが、私は西武信金の虚偽の主張を論破していきました。
それでも最終的には、西武信金が不正を行ったとする客観的な証拠がないことから多少の譲歩しか引き出せなかった


不本意な条件での和解


に至ったのでした。

ところが、です。法廷という場で西武信金はADRとは全く違う証言、しかも嘘を言えば偽証罪に問われる証言を行ったのです。

法廷での証言が事実とすれば、逆にADRでの主張は虚偽だったことになります。その虚偽が前提となる和解に意味があるのか?

和解には錯誤があったとして、和解の破棄、及び再び損害賠償請求ができないのか?の検討を進めているところです。

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