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父を亡くして

父を亡くして嘆く兄弟がありました。何年経っても彼等は、父のことを忘れず、墓に詣でては悩み事などを伝えました。

さらに長い年月が経過して、兄は、思いました。「父のことを思い出しては深い悲しみに沈む生活は、心の負担が重すぎて、仕事に身が入らない」。

そこで、見れば憂いを忘れられる花という忘れ草を墓の傍らに植えました。弟は、慕情をいつまでも心に刻みたくて、紫苑を植え、足しげく墓に通いました。

『俊頼髄脳』を読む人は、弟の孝を褒めて兄の不実をなじります。でも、忘れ草の効き目は、他人には分かりません。橙赤色のその花は、あまりに鮮やかです。


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