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#2311094

秋空の下、イベントの雑踏の中で袖を引かれ見れば、幼子にそこをつかまれていた。Sさんがまずうろたえ、Sさんを見上げた幼子が次にうろたえた。

「ママと来たの?」と尋ねる。こくりとうなずく。ママではない知らない大人の袖を握り締めていたという、その絶望的な事実に小さい体が固まる。

大丈夫。あなたは、見捨てられたわけではない。あなたは信じられないかもしれないけれど、この会場であなたを探している。Sさんは、それを知っていた。

「そっか。じゃあ、ママを探そうね」。何かの切っ掛けがあればしゃくりをあげそうな小さい体を引き連れて、Sさんも心細そうに雑踏の中にいた。

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