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トカトントン

トカトントンという小説は、ポツダム宣言受諾の玉音放送を聞いて以後、トカトントンという幻聴に悩まされる復員兵の話です。

その男は、その音を聞いた途端に、何ともはかない、ばかばかしい気持ちになって、身動きができなくなってしまいます。

いったい、あの音はなんでしょう。虚無ニヒルなどと簡単に片づけられそうもないんです。あのトカトントンの幻聴は、虚無ニヒルをさえ打ちこわしてしまうのです。

その幻聴は、私に聞こえません。でもニヒルをさえ打ち壊してしまう感覚が、あらゆる情報や感情が身体を擦り抜けていく感覚が、私にもわだかまっています。

思い当たる節があります。敗戦みたいな一大事でなくても、それに似た変節と、人人の無節操を目の当たりにしました。「気取った苦悩」と他人は笑う、けど。


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