見出し画像

#2105138

試みに彼女は、その板をノックしてみる。一見して、かなり頑丈そうだ。「非常の際には、ここを破って隣戸へ避難出来ます」と貼り紙があるけれど。

果たして、本当にこの板を破れるだろうか?ベランダにたたずむ彼女は、想像している。肩から行くか、それとも足から?今度は、両手でその板を押してみる。

もしかしたら、いざ「非常の際」には、破れない強度なのかもしれない、と不安になる。非常階段はここから遠く、板は、この先にも、その先にもある。

それでも、板を1枚1枚蹴り破って突進する自分を想像すると、なんだかワクワクしてくる。この板1枚向こうの世界を、彼女は、知らない。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。何らか反響をいただければ、次の記事への糧になります。