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コバヤシタケルという人間

コバヤシタケル54歳。
彼の人生は波瀾万丈だ。

幼い時に父親を亡くし、女手ひとつで育てられた。
決して裕福とはいえないが不幸せと感じた事はなかった。

24歳の頃、ベンチャー企業を立ち上げた。
豊洲のオフィスビルの小さな会社からコバヤシタケルは歩き出す。

はじめに職業を問うと彼はこう答えた。

ー 仕事も色々やってるし肩書きも色々ある。まあしいていうなら今は不動産のコンサルフィー

と。

人からお金を預かりそれを使って色々良いことをする。という事らしい。本人も詳しいことはわかっていないようだった。

よく彼は「感謝」という言葉を口にしていた。
自分は何者でもないと、周りの人がいるおかげでやれていると。

ー オレはなんもやってないっすよ。周りが優秀なだけ

と真っ白い歯を出しとびきりの笑顔を見せる。

特に優秀と1人の男を紹介された。

ー 彼!タナカ!!なかなかのやり手なんですよ〜

企業当初からコバヤシタケルと色々やってきた彼はタグチというらしい。
コバヤシタケル、彼は人の名前を覚えない。
そこが彼の魅力の一つなのかもしれない。

タグチという男の印象は何事もどんぶり勘定で適当なコバヤシとは真逆で
きっちりしているビジネスマンなタグチ。
それでいて気配りがよくできる
そういった印象で他の従業員にも評判が良さそうである。

そんなタグチに会社は任せるらしい。
コバヤシはまた何か別の事をやりたいようだ。
つねに何か新しい事をチャレンジしたい。

ここで彼のプライベートの話もしておこう。
コバヤシのプライベートもなかなかだ。

結婚経験はある。が、彼も覚えてないくらい離婚しているみたいでその理由は本人にはわからないようだ。

ーよく奥さんの名前を間違っちゃう

ネクタイを締めているコバヤシは鏡越しに言った。

コバヤシ曰く、物欲はないようだ。
着る物もなんでもいい。
そういう彼の格好はシンプル。
だが彼の胸元や指、腕にはシンプルとは程遠いゴツくて大きいアクセサリーや腕時計が光る。
出来うる限りの価値をぱんぱんに詰め込んだようなアクセサリーは彼の成功の証であり、寂しさを埋める物なのかもしれない。

コバヤシはよく炎上する。
成功、有名になれば敵も増える。
しかし彼の場合は純粋に有名税とは違うようだ。

彼を批判するコメントの多くは
サイコパス、モラルがない、だ。

炎上の発端となった一つが
「愛犬、物扱い事件」である。

彼は何度目かの離婚の後、寂しさから犬を飼うことにした。
しかしなかなか懐かない犬をコバヤシは我々にあげると言い出したのだ。
冗談かと思いきやコバヤシは本気だ。
確かに取材中も無理やり抱っこしようとするコバヤシに対して唸ったり噛み付いたりしていた。
よっぽど何かあったのだと察した我々は犬を引き取ることにした。

ー犬の名前、ミユキ。前の奥さん、へへ。

とコバヤシはいった。

そんなコバヤシの言動は当たり前に批判の嵐だった。
矛先は彼の関連会社にとどまらず
これを放送した局にもきて
謝罪、辞職に追い込まれた。

その渦中、当の本人はというと
マレーシアにいた。
仕事というが本当の所はわからない。
コバヤシの右腕だったタグチの指示みたいだ。

コバヤシに炎上の事を尋ねると

ー 炎上?いや全然しらない。ネットとか見ないからな〜
と。笑ってみせた。

そういうのもコバヤシはそれどころではない別の事があった。

コバヤシ名義の会社から一切の退陣を言い渡された様だ。
現在、事実上トップで動かしているのは彼のかつての右腕タグチ。彼はコバヤシから引き継いだ後、グングン会社を大きくし社員の評判もいい。
最近一部上場した。
その会社の相談役として籍をおいていたコバヤシだったが会社のお金を使い込み、挙句炎上騒ぎという事でタグチも我慢の限界だったようだ。

ー 色々気にかけてやったんですけどね〜。こんな扱いなんて残念です。ま、感謝はしてるんですけどね!適材適所ってやつで

コバヤシはすべて失った。
それでも彼は気にも留めない。
すでに次の事を考えているようだ。

ー コンビニやろうと思ってて、タケルコンビニ。今お金集めてるんですよ。

思いついたらすぐに行動、そして行動する時は誰かのお金を使って成す。それが彼のポリシーだ。

はっきり言って色々ダメな人だ。
しかしなぜか彼の周りにはつねに人もお金も集まる。
あれだけ炎上していて全人類が彼の敵だったのに今ではコバヤシを評価する者も少しづつ増えてきている。
そこにはコバヤシタケルといういつでもエネルギッシュで何をしでかすかわからないが何か変えてくれるのかもしれないという魅力があるのかもしれない。


という架空の人物の話を深夜散歩の時、アライサンと延々してたというお話。

記事投稿:クドーサン

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