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テレキャスタードリームPart4

※2023年3月に公式LINEにて配信されたコラムを編集し再掲したものです。

親愛なる友だちへ、ひねもです。


Part4はフェンダーとギブソンの違いについて。


フェンダーとは?


レオ・フェンダーさんという人物がいる。

Wikipediaより

この人が“量産型ソリッドボディエレクトリックギター”を発明。


最初から楽器製造をしていたのではなく、元々はラジオの修理会社。

電子機器をいじるのが好きだったフェンダーさんは、音楽も好きで段々と楽器に興味が移っていく。

リッケンバッカー社のビブラートシステム特許を持っていたドク・カウフマンさんと共同経営でラップスティールギターやアンプの製造を始める。

しかし、この共同経営は短期で終わってしまう。

この事業をキッカケに“タフで頑丈なエレクトリックギター”を作りたいとフェンダーエレクトリック会社を立ち上げる。

ちなみにフェンダーさんの音楽経験はサックスをちょっとやっていたくらいで、ギターはほとんど弾けずチューニングすらよくわかっていなかったらしい。

超メジャーブランドの創業者がギターが弾けなかったというのは驚きだ。

あくまで機械いじりが好きなだけなのである。

そのギターに対して門外漢であったことが良い方向に作用する。

それまでとは大きく違った革新的なソリッドボディエレクトリックギターを発明するのだ。

それがテレキャスターやストラトキャスターなのである。

Wikipediaより
Wikipediaより


フェンダーさんはエレクトリックギターを大きな括りで“電子機械”として捉えていた。

なので、フェンダーのギターは部品交換が簡単にできるようになっている。

それも他社との大きな違いだった。


ギブソンとは?


対してギブソンはオーヴィル・ヘンリー・ギブソンさんがマンドリン制作からスタートした職人のブランド。

Wikipediaより

ギブソンさんは生涯職人気質で、経営は他の人に任せて自分はそこに関わらない。

ずーっと製作者として生きる。

結構早くに亡くなっていて1918年死去。

その後も経営者を軸にギブソン社は存続。

ジャズギタリストのレス・ポールさんと運命の出会いをしソリッドボディのエレクトリックギターを開発。

Wikipediaより

それがあのレスポール!

Wikipediaより

実は人物名なのです。

あまりにも有名過ぎて気付きにくいが、元々はレス・ポールさんが自分が欲しいギターを作ったオリジナルギター。

つまり個人名の入ったシグネチャーギター、もしくはその人のためのアーティストギターなのだ。

なのでヘッドにはレス・ポール“モデル”って書いてあるのです。

この名前はバンドマンからしたら大先輩ミュージシャンに当たるわけで、本来は敬称をつけて“レス・ポールさん”と呼ぶべきでは?と思ったり。

レス・ポールさんはジャズギタリスト。

“甘くてファットでメロウな音色が欲しい”ということで開発された。

しかし、開発当時(1952年)はまだエルヴィス・プレスリーすらいない時代。

ハードロックとかヘヴィメタが登場する何十年も前である。

音にパワーがありすぎるし、単純に重いしなんだか微妙だよね、、、と発売当初は少し売れたけど徐々に不評になっていった。

その後フェンダー社のストラトキャスターを見習ってもっと薄くて軽くて両方がえぐれたデザインの”新レス・ポール“を開発する。

Wikipediaより

しかしレス・ポールさんの嗜好や意見に沿わず独自デザインで開発。断りもなく発売してしまった。

そのためレス・ポールさんは怒ってしまい契約は打ち切りに。

なので以後は

“SOLID GUITAR”

の頭文字を取って“SG”という名前になった。 

現在もその名称が一般的である。


どう見てもそれまでのレスポールとは全然違うルックスなのに許可なく“新レスポール”と売り出したギブソン社は凄いと思う。

ここから先は端折ってしまうが、どこかに吸収されたり合併したり傘下に入ったり破産したり紆余曲折ありながらも2023年現在もギブソンのギターは生産されている。


ギブソンとフェンダーの違い


ザックリ言うと

ギブソンは職人気質でアーティスティックで芸術品要素が強め



フェンダーはエレクトリックギターは電化製品と見ているため工業製品色が強め

なのである。


これがどういう違いがあるかというと

ギブソンのギターの多くはアーチトップ加工がされていてる。

トップが膨らんでいてなだらかな曲線を描いてる。


対してフェンダーのテレキャスターを見てみると


フラットで木を真っ直ぐ切り出しただけって感じなのだ。

これが斬新過ぎて発売当初は“まな板(笑)”と酷評される。


セットネックとボルトオン

ネックにも大きな特徴がある。

ギブソンは”セットネック”

いかにも 職人がこだわって作りました! って感じだ。

木がピッタリとハマるように加工され接着剤で固定してある。

対してフェンダーは”ボルトオン方式のデタッチャブル”

簡単に言うとネジで止めているだけ。


コントロール部分


さらにコントロール部分を見ていく。

レスポールは裏側に蓋があってその中に仕舞われている。

対してフェンダーは

コントロールプレートに色々な部品がくっつけてあって、ガバッと外れるようになっている。


製造過程の違い

つまりフェンダーは作業効率をすごく重視している。

大量生産する際に各パーツが自立していれば

ネックを作る人
コントロール部分を作る人
ボディを作る人

などを分けて作業できる。

各所で作られた部品を持ち寄ってネジでギュインギュイン締めれば”はい!一丁上がり!”という事になる。

もし壊れたらその部分を交換すれば良い。パンが無ければケーキを食べれば良い(全然違うが)という。

元々がラジオ修理会社だったからなのか

いつかは壊れるはず。そのとき簡単に修理できた方が良いよね。

という発想なのである。


対してギブソンのギターはまずボディになだらかな曲線を出して削るのに熟練の技がいりそう。

また本体に電気部品を付けたり通さねばならず、ネックも本体にピッタリ合うように加工していく必要がある。

ボディを中心にして様々な作業が必要なのである。

物作りへの考え方が根本的に違うのだ。


当時の主流と未来


当時はギブソンの考え方が主流。

職人が限られたアーティストのためにギターを作るのが普通。

かなりニッチな界隈なのです。

まだエルヴィス・プレスリーもチャック・ベリーもいない時代。

ギターが世界中に広まってたくさんの若者が手に取るようになるなんて誰も思っていなかった。

音楽を習わず楽譜が読めない人々が楽器をやるようになり、それが主流になるとは世の中の大多数は思ってなかった。

しかしレオ・フェンダーさんはなぜかロックンロールが産まれる前から大量生産できるギターを開発していた。

それが時代の流れと奇跡的にマッチした。

そうしてエレクトリックギターと言えばフェンダー!という地位を築いていく。


デザイン性

色んな事を知ってから改め見るとギブソンのエレクトリック化はアコースティックギターの面影がある。

ヘッドの雰囲気も似ている。

ピックガードの大きさや用途もあまり変わらない。

全体を薄くスリムにまとめた印象。


対してフェンダーのストラトキャスターを見てみると

それまでのギターとは全く違うかなり思い切ったデザイン。

ピックガードが表面の大部分を覆い尽くしている。

ちなみにストラトキャスターはテレキャスターより後に開発された。

そのためピックアップが3つに増えてノブも3つ、スイッチは5段階切り替えとテレキャスターより幅広い音作りが可能になってる。

そういう多機能な進化の全てを巨大なプラスチック製ピックガードにくっつけているのです。

生産しやすいし、壊れても直しやすい。

テレキャスターでは鉄のプレートだったが、ストラトキャスターはプラスチック。

そのためノイズが出やすい、、、ならばと裏にアルミ箔が貼ってある。

なんともアメリカンな対処法。

こうしてコストダウンや生産性重視な側面が多々見受けられるフェンダーのギター。

なのに音がめちゃくちゃカッコいい!のである。

ここがすごい。

各部品が奇跡のバランスで成り立っているらしい。

ストラト使いのギタリストと言えば、ジミ・ヘンドリックス、エリック・クラプトン、リッチー・ブラックモア、ジェフ・ベック、、、あげ出したらキリがないほど名だたるロックギタリスト達に愛用されている。

当たり前だけど音がカッコよくなければ誰も使わない。

合理的なのに音が良いフェンダーのギター。

それまでの常識を打ち破ったボルトオンネックも、ただ作るのが楽だからというだけではない。

どうしたら良い音で鳴るかをレオ・フェンダーさんは何度もテストしたらしい。

科学者っぽくてかっこいい。

もちろんギブソンの職人な雰囲気もかっこいい。


どちらが好きかは好みの問題だ。


ヘッドの違い

ギブソンとフェンダーのヘッド角度の違い。

フェンダーはヘッドがフラット寄り。

これにより強度が増している。

フェンダーでヘッドが折れたという話しはまず聞かない。

もしも折れるとしたらヘッドは頑丈だから、ネックから折れる。

そして折れてしまったとしても新しいネックを買えば大丈夫。

まるでアンパンマンみたいに復活できる。

、、、現実には専門的な調整は必要だが、元々が交換を前提に作られているので比較的簡単な作業となる。

僕みたいに使い方が乱暴な人間にはありがたいギターブランドなのだ。

以上、簡単ではありますが僕がフェンダーを好きな理由でした。

紹介した話しはロックンロールすら存在してないエレキ創世記の時代のこと。

その後は各社が試行錯誤しまくって目まぐるしいスピードで色んなギターや部品が出てくる。

1952年からたった1年後の1953年でももう新しいギターが出てたり既存のギターも仕様が変わったりすごく変化がある時代なのです。

なので、今回の話しはほんの一部分の触りだけです。

次回はいよいよ電気関係。
車で言えばエンジンの話し。

ブラザー&シスター、ギターって凄い!

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