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俺たちの春風 四

 式を終え教室に戻り、一限目は
自己紹介で終わった。
「あのぉ、あの宮下信也君いますか」
「宮下君! お友達来てますぅ」
入り口を見ると優弥! 俺は思いっ切り前のめりで飛んでいった。
「どうした?」
俯く優弥が、
「あのね……ライン」
「そうだ! 来てくれて有難う!」
交換しながら、
「委員会一緒のにしない? 多分残るのは、美化委員か園芸委員だから。美化委員立候補しよう?
良い?」
「任せろ!」
 二時限目 委員会決め。
俺は即美化委員に立候補。
結果! 俺たちは美化委員になる。ラインを為たらハートマークがいっぱい来たぞ。
俺もでかいハートマークを送った! おや? ハートマーク?
待て待て~まあ他意は無いよな。
 でも楽しくなってきた。
やっと俺にも春が来たか。
 其れから、俺たちは当たり前のように、朝電車の時間を合わせて登校し、昼は学食で一緒。
同じクラスの奴らと一緒でも、それでも俺は楽しい。
優弥の傍にいられる事が嬉しい。
 部活は悩んだが、優弥は英語部で、俺は写真部。
けど帰りは殆ど一緒に帰れる。
ラインも頻繁にしてる。
でも仲良くなれば成る程、欲が出るんだ。
もっともっと優弥が欲しくなる! おかしいのか? 遂に俺は優弥を想い、あろうことか独りで為てしまった。自己嫌悪しか無い。
でも……でも欲しいんだ!
どうすれば良い? とてつもなく優弥を穢してしまった。
ごめんな……優弥。
 俺は真面に優弥と逢う事が出来なくて距離を置いてしまった。
優弥は黙ってそれを受け入れた。
やっぱり……そう言う事か。
俺の事なんか何ともな思っていないんだ。
 苛立ちを抱え一週間が過ぎたある晩、優弥から突然電話が来た。
「信也……話しがある。断らないで。今から桜並木で」
それだけ言うと切られてしまったた。
 一時間後……俺たちはあの桜並木いた。
「おうっ」
俺は無感情を装っていた。
「来てくれて有難う。あのね……僕友達無くす覚悟で話します。最後まで黙って聞いてください」
声が震えている。
「判った」
「ぼ……僕は、君を恋愛対象として好きです。変な事を言ってるのは判ってます」
えっ好き……恋愛? 俺を? 俺も俺も! 大好きだよ! 優弥!
「気持悪いよね。でも……無かったことには出来ないんだよ。この気持を! ごめん! そして聞かなかった事にはしないで欲しいんだ!」
金縛りから脱した俺は、優弥をしっかり抱き締め、
「俺は、優弥に一目惚れでした。
好きで好き……」
俺の唇はあの桜色の唇によって塞がれた。
 葉桜の下で俺たちの初恋が、
少し遅れてきた春風を纏い舞い上がる。
ほら、君にもきっと……吹くさ。
優しい春風が。

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