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子供のやる気を一瞬で消す親の声がけ

娘が朝から
「アンニョン、アンニョン」
うるさかった。

Youtubeで何か見たに違いない。きっと、韓国語の喋り方が可愛いと思ったのだろう。

「韓国語の勉強したいなー!」
というので、「いいんじゃない?」と返した。

娘は、さっそくTVでYoutubeをつけて、基本的なあいさつなどを教えてくれる動画を見始めた。手にはノートも持っていた。

TVに合わせて、韓国語を復唱する。

名前の紹介も、早速自分の名前を当てはめて「お母さん聞いて〜」とマネをする。

私に、色々合っているかの確認をしてくるが、

ごめん

もうビックリするくらい、私の頭に入ってこない。(作ってるお菓子のことで頭がいっぱい)

でも、あの歌は覚えているよ。

よんどんさりの〜、願いは一つ〜
ちりぢりになあ〜った〜、家族の出会いぃ〜
(天童よしみさんの「珍島物語」一節より)

この歌に、カムサハムニダってあったなぁ。

珍島物語を心の中で歌いながら、娘が可愛いなぁと思って見ていた。

「なんか、ちょっと難しい」とか言って、ザッピングを始める娘。

動画なので、どうやら勉強の進みが早いらしい。


夫が起きてきた。

朝ごはんを食べて、朝がゆっくりな日のお決まり、二度寝をしてきた後だ。


「うるさいなー。そんなもん覚える前に、ちゃんと日本語勉強しろ!!」つっけんどんに言い放ち、タバコを吸いに行く。


TVを消して、シュンとする娘…

そのうち私の方にしなだれかかってくる娘。

私の脳内が騒ぎ出した。

夫がこんなことを言い出すだろうというのは、長年の付き合いで予測は出来ていた。そして今までだったら、私は何も言わず、結果、夫の意見を受け入れて来た事が多かった。

しかし今回は娘のやる気に直結している。
なんとかしなければいけない。

頭の中で、娘に言うべき言葉を探す。
そして、勇気を出して言ってみた。

『お父さんは、韓国語を知らないからあんなことを言ったんだよ。気にする事ないよ。』

「えっ? じゃあ、まだ勉強してもいいの?」

「すればいいよ。一応、今日の漢字練習だけ、先にやっておきな。」

私から離れ、漢字を一つ書いて、またTVで動画をさがしはじめる娘。

一服を終えた夫が、外から戻ってくる。
TVを一瞥し、まだ見てるのかと言う雰囲気を出すものの、やめさせようとはしなかった。

そのうち娘が、英語みたい、日本語みたいな言葉があると言い出して、3人で話し始める。

「せんぺー(先輩)」って、冬ソナで言ってたよね、とかなんとか。


子供のやる気を削ぐのは簡単だ。

やっていることを否定すればいい。


ちょっとした否定の言葉は、思った以上に相手に届く。思った以上に、子供たちは相手の赦し(ゆるし)の中で活動している。


夫に文句を言えば、多分こう言うだろう。

『そんなもん、否定されてすぐやめるなら、それだけのもんじゃ』


否定する行動に否定(反論)を重ねると、ロクなことはない。話がややこしくなっていく。

夫も、ただいつもの調子で私たちに甘えていただけだろう。「オレすごい!」の中に、韓国語は入っていなかった。ただそれだけ。


断っておくと、夫はそこそこ良い父親である。

面白いゲームをみんなでやろう! とか、子供を巻き込んで遊ぶ事が得意だ。最近の私がなかなか出来ないことをしてくれる。子供たちから嫌われているとか、そういう事も全く無い。


今回、勇気を出して娘に声がけしてみてよかったと思った。「お父さんが言ってるからやめとこうか」とか言わなくて、本当に良かった。

私の想像以上に、「禁止された」と娘が感じていたということを知ることができた。

そして、自分たちの昭和な夫婦の在り方を想った。

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ひなた とりこ
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