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【No.44】頓宮裕真の「体・技・心」
夏といえば、色々ありますよね。
例えば、花火大会やグランピング、BBQ、海などなど、異性と一度もデートしたことのないぼくにとって、決して縁のない "リア充" が躍動する季節です🎇 🌊
この2022年の夏に、1番攻守に躍動している選手が 頓宮 裕真(26)でしょう。
故障離脱中の杉本 裕太郎(31)やTー岡田(35)ら、実績のあるスラッガーを押さえて4番に座る姿は、正に多くのオリックスファンが待ち望んだ姿です。
なぜ彼はここまで打てる選手になったのか、今回はこれを掘り下げていこうと思います。
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1.加入前から見劣りしない「体」
2018年のドラフト2位でオリックスに加入した頓宮 裕真。
"軍隊野球" で知られる名門・亜細亜大の出身で、大学時代には「世代No.1スラッガー」として、チーム、更には大学日本代表の4番を打っていました。東都大学野球1部では通算14本のホームランを放ち、うち10本を4回生のみで放ったパワーヒッターです。
《直近5年の大学日本代表4番》
14年 早稲田大・中村 奨吾(ロッテ)
15年 青学大・吉田 正尚(オリックス)
16年 白鴎大・大山 悠輔(阪神)
17年 東北福祉大・楠本 泰志(横浜)
18年 亜細亜大・頓宮 裕真(オリックス)
彼が加入前からすごかったのは、筋肉が詰まったガッシリとした体格でした。公称では加入当初は182cm・96kgとされていますが、一時期は100kgに到達してから絞った結果の96kgとの声もあり、そもそも100kgまで太れる、にも関わらず亜大の "軍隊練習" について行くどころか、4番・捕手(1B/DH)・主将として "軍隊野球" を牽引できるほどの運動量を兼ね備えていた「身体」こそが大きな武器でした。
技術的な練習よりも、フィジカルトレーニングが多くなる秋季キャンプで、『ぼくは身体はまだ行けます!』って初参加で笑いながら言ってるのが色々とバケモンですね。
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学生野球とプロ野球の1番の違いを「身体の大きさ」と挙げる選手も多い中で、この壁に全くぶち当たらなかったことは非常に大きかったと思います。
技術的な課題は攻守ともに(特に捕手守備の面で)多くありましたが、身体が資本のプロアスリートにおいて "アスリートフィジカル" は大きな武器でしょう。
2.表れ始めた覚醒の兆し
NPBの世界で、特に打撃面で彼の課題だったのは「145km/hを超えるストレートへの対応」。
スイングスピードこそ速いものの、NPB水準のスピードに対してタイミングを取ることに苦労し、色々試しましたが中々バットが出てこず、ストレートに詰まったり、配球で迷った結果振り遅れたり中途半端な形での三振に倒れることが多いのが現状でした。
そんな中で2022年シーズン、彼は技術面で2段階のSTEP UPを見せたと考えています。
1段目のSTEP UPが春先。
昨季の丑年優勝に大きく貢献した杉本 裕太郎や紅林 弘太郎(21)ら主力選手が打撃改造での壁にぶち当たって不振に陥り、新外国籍選手のランヘル・ラベロ(30)の打撃不振も重なるなど、チームとして致命的に打てていない時期で、チャンスが巡ってきた頓宮は主に5番・6番打者として起用されていました。
このときに見られた打撃面での成長が、トップを作ってから捕手側にバットを引いて力をぶつける動作が小さくなったこと。この動作を入れると、マウンド⇒捕手側に向かう投球と捕手側⇒マウンド側へ向かう打撃が衝突し、強いエネルギーを発生させて遠くへ飛ばすことができる一方、動いている物体に対して自らもぶつかりに行く(いわゆる点と点で捉える打撃)形になるため、確実性が落ちがちです。
この、いわゆる「2度引き」とされる動作が減らされたことで、動作1つ分の時間的余裕が生まれ、ストレートに対する対応可能範囲が145km/h付近までは広がったと感じています。
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ともに最もバットを捕手側まで引いているシーンなのですが、20年シーズンは「44」どころか右肘まで見えるほどに引いていた動作が、22年シーズン春では緩和されて「44」の1の位が半分見える程度まで小さくなりました。
20年シーズンのこの打席は、日本ハム・加藤 貴之投手のカーブを捉えての本塁打なのですが、22年のこの打席では、楽天・則本 昂大投手の149km/hを捉えたホームランであり、この時点でメカニクス面での進歩による覚醒の兆しが1つ見え始めていたことが伺えます。
2段階目が、よくファンの間でも話題になる、同じ右のスラッガーである西武・山川 穂高選手による指導説(22年7月6日 vs西武)。
この指導によって、トップを作りやすい構えに微調整することができた点で非常に有意義なアドバイスになったのではないでしょうか。
#山川穂高 選手から打撃指導を受ける #頓宮裕真 選手。身振り手振り、丁寧な指導が続いていました。 #Bs2022 pic.twitter.com/nqEWPmoAG4
— 朝日新聞オリックス担当 (@asahi_bsorix) July 6, 2022
もうなんか色々と良くなってるんですけど、1番は動作の一つ一つに繋がりがでてきた点じゃないかなと思います。
もう少し噛み砕くと、今までは構える・トップを作る・捕手側へ引く・振り出す・インパクト・フォロースルーと一つ一つの動作が単一的だったのが、山川の指導でトップを作る「原点」が完成したことで、これらの動作の滑らかさが増したように感じます。
特にインパクトに向かうまでのスイング軌道では、捕手側に引いた状態からぶつけに行く形から、最短距離に近い状態で斬るように振る形へと移行しつつあり、この動作の成長がストレートに対する更なるSTEP UPの大きな成功要因になっていると思われます。
よく、打撃はトップの作り方が殆どと言われますが、これを体現しているのが今の頓宮ではないでしょうか。
3.体・技の充足による心の充足
人間ってやっぱり「余裕があるとき」の方が良いパフォーマンスを行えることが多くて、これはプロ野球に限った話ではなく萬の事に当て嵌まるのですが、〇〇をしてはいけない 〇〇でなければならないといった形で、ネガティブな方向への「禁止思考」(ぼくは削る思考と呼んでいます)が多ければ多いほど余裕がなくなってくるものです。
頓宮も今のように1Bレギュラーとして継続的な実践機会を得られている前は、捕手としては守備力の高い伏見 寅威(32)や若月 健矢(27)の両捕手と差別化できるほどの打撃力を求められ、一塁手としても外国籍選手やTー岡田(35)ら実績のある選手を覆すほど打つことを求められました。
実力以上に打たなければレギュラー奪取は望めなかった当時の彼において、少ないチャンスを物にするために「〇〇ができないといけない」といったように思考範囲が狭まっていたことは容易に想像できますし、それは実際にストレートと変化球の二兎を追った結果甘い球に手が出ない三振といった形や、当てただけのつまらないセカンドゴロといった形で出ていました。
その状態と比べて、1Bレギュラーを打撃で奪い取った今は、積極的な声掛けやベンチで鼓舞する姿など、他人を気遣える余裕が見られるようになってきました。
声掛けだったりグータッチとか肩ポンして気にかける頓宮さん🥺キャッチャーやりたいと思うんだけどファーストにいてくれる心強さすごい🥺 pic.twitter.com/2rSSEGNOfI
— まり (@orx113) September 5, 2022
体格面が加入前から鍛え上げられていて、技術的な進歩を見せてスタッツが残り、精神的な面でチームを背負う氣概を魅せる…といった形で、彼は「体・技・心」の順番に成長しています。よくスポーツ界では「心·技·体」が謳われるのですが、個人的には順番は真逆だと思っていて、これ。示しているのが好循環サイクルに入った頓宮 裕真なのかもしれません。
いや、元々亜細亜大時代にはキャプテンを務める選手で、(技術的にはかなり粗かったものの)捕手を務めていた選手でもあったので、本来ある明るい頓宮に解き放たれたという方が正しいかもしれませんね。
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