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【名将西村】西村徳文の名采配を振り返る

今回は、2019年・2020年途中までの約1年半、オリックスの一軍監督を勤められた西村徳文前監督(60)の名采配について、過去を懐かしみながら振り返ろうと思います。


現在のJR九州からドラフト5位でロッテに入団した西村氏。
プロ入り後にスイッチヒッターに転校し、猛練習で2B、3B、CFと転々としながらも、首位打者を獲得するなど16年に渡って一線級で活躍し続けた姿は、《走る将軍》として長きに渡ってファンに愛されました。

2010年にロッテの監督に就任した西村氏は、その年ロッテを5年ぶりの日本一に導きます。
パ・リーグ3位からプレーオフを勝ち進んでの快進撃が評価され、正力松太郎賞を受賞・野球殿堂入りの候補にもなるなど、名実共に『名将』として認められた瞬間でした。

オリックスで一軍監督を勤めた2020年途中に、かの名将は『西なんとかぞく』から惜しまれながらも球界を去ります。
今は、余生を過ごしておられることと存じます。

そんな西村徳文氏のオリックスでの名采配を振り返ります。

に近しいのかもしれませんが、今なお #西村徳文の名采配を振り返る といったハッシュタグが流行するなど、オリックスの監督を辞任なされてからも人気が絶えないですよね。

前置きが長くなりましたが、ここから本題とします✨


①正遊撃手・安達了一の完全週休3日制

二遊間出身監督としての理解でしょうか。
西村前監督の功績としてまず大きく挙げられるのは、正遊撃手・安達了一(33)選手に完全週休3日制を与えたことでしょう。

NPBでも指折りの守備力を武器にする安達。
ショートとして殆どの試合に出続けてきた不動のレギュラーだったのですが、2016年初め、突如、彼を日本国指定の難病である潰瘍性大腸炎が襲います。

寛解と活動を繰り返し、現時点では治療法がないとされるこの病気。
即入院を余儀なくされ、潰瘍性大腸炎の活動期が収まらず、一時は体重を10kg以上も落とすなど選手生命も危ぶまれた時期さえありました。

https://www.ibd-life.jp/proadvice/proadvice5.html


現在もこの病気と闘いながらプレーする安達ですが、やはりショートという身体的負荷がただでなく大きいポジション。
プロアスリートとして身体を維持しながら、体質的にも守備負担的にも貯まりやすい疲労とも向き合う。更には難病とも闘い続けなければならない。
文字で書き表すより遥かに苦労があるでしょうし、本当に至難の業だと思います。


そこで、西村徳文前監督が導入したのが、木曜日・土曜日・(移動日の)月曜日をベンチ入りもさせず療養期間に充てる完全週休3日制です。

これにより、安達は昨年までの不調から息を吹き返すように復調します。
上記の起用法から、規定打席にこそ届かなかったものの、キャリアハイとなる打率.289 OPS.714を記録!!盗塁も15個を数えるなど、持ち味の守備だけでなく、攻撃面でもアドバンテージを取れるパリーグを代表するショートにまで復調しました。出場時は、オールラウンダーとして打線の潤滑油を担い、終盤には3番打者として起用されています。

また、本職のショートとして安定した守備も披露し、(加齢による身体能力の劣化こそ見え始めているものの)持ち前の守備理論+技術力+嗅覚で年間を通してショートを守り続けました。
32歳となる2020シーズンでも変わらずUZR+を出しているのは、彼が化け物である証明です。

と同時に、何よりも、安達の体調に目を配り続け、彼が持つ力を最大化した西村前監督の献身性も評価されるべきでしょう。
彼の起用法をなくしてここまでの復活はなかったと考えます。


これは文字で書くと簡単ですが、攻守にチームの軸である安達を、週に2試合は確定で欠きながら戦うという選択肢を採ることは重く難しい決断だったと思います。

実際、オリックスのショートは安達と控えの差が大きいです。
安達の休養日には、山足達也(27)・大城滉二(27)・廣澤伸哉(21)ら複数の選手が起用されましたが、やはり攻守に大きく戦力ダウンしてしまったことは否めません。

それでも、安達が居ないことによる戦力ダウンを承知で、完全週休3日を与え続けたことは、本当に英断だったと考えます。

このような休養と活動を挟む起用は、『難病持ちだから〜』といった理由を持たずとも、短期的に見ればフレッシュな状態を維持できる、長期的に見ると健康寿命の消耗を抑えることが出来るなどメリットが多くあります。
特にキャッチャーやショートといった守備負担の大きなポジションほど、選手の健康寿命を守るためにも、レギュラーとセカンドユニットとの併用や積極的休養を行って欲しいです。

西村前監督の英断は、プロ野球選手の健康寿命を守るという点で、今後の起用に一石を投じるものだと言えるでしょう。





※P.S
プロバスケットボール《B.LEAGUE》1部の千葉ジェッツふなばしに所属する、原修太選手が7月に、自身のTwitterで潰瘍性大腸炎を患っていることを公表しました。

その中で、彼もまた言います。『同じ病気(=潰瘍性大腸炎)で活躍しているアスリートの方を知り安心したし勇気を貰えた』と。


競技を超えて勇気を与える。安達了一。
その活躍の影の立役者が西村徳文前監督であることは、余り語られることは無いですが、本当に偉大な功績だと思います。



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②福田周平の3Bオプション装備

若干突貫工事的な部分はありますが、前シーズンにキャプテンを務めた福田周平(28)を、本職の2Bだけでなく3Bも守れるようにしたことも、陰ながらファインプレーであると言えるでしょう。

オリックスはセカンドの選手層も薄く、2017年のドラフト3位でNTT東日本から福田を指名して以降、基本的には彼がセカンドのレギュラーとして試合に出続けているというのが現状です。

その一方、二軍には2018年のドラフト1位で加入した太田椋(20)という、後の日本球界を代表するであろうトッププロスペクトが在籍しています。
高卒1年目には、右手尺骨の故障離脱で二軍の前半戦を全休しながら、超投髙野低のウエスタンリーグで、打者地獄の舞洲を本拠地として、7本塁打 OPS.753という破格の打撃センスを見せつけた大型二塁手です。

https://twitter.com/orix_news2020/status/1307537301887578112?s=21


福田からしてみれば、現時点では選手層の薄さからレギュラーとして試合に出続けられているものの、今の2B専のままでは、この太田ら大型プロスペクトに捲られる可能性が高く、その場合リザーブにほぼ固定されてしまうと考えられます。
また、これはそう遠くない将来に起こるだろうと考えられます。

その中で、宗佑磨(25)・中川圭太(25)ら他の3Bの対抗馬がレギュラー争いから抜け出せずにいる中で、3Bも無難に守れるようにしておけば、近い将来太田に2Bから押し出されようとも、別のポジションながら出場機会を得ることができるリスクマネジメントになります。

これを進言したのは、自身も現役時代に2B→3BやOFへのコンバートを経験しており、その当時の体験談や難しさ・やり甲斐を交えながら伝えることが出来る、西村前監督だったからこそだと思っています。
実際に、退任後ではあるものの、OF福田という案もちらほら存在するなど、西村前監督の進言が何かと彼の出場機会への考え方へ影響を与えていると言えるでしょう。

https://column.sp.baseball.findfriends.jp/?pid=column_detail&id=015-20201012-06


彼の最大の特徴である、選球眼と三振率の低さは、オープンスタンス+バットを短く持つことによって、ボールを極限まで見ることが出来ること。更に彼が持つスイングキャンセルの技量の高さに裏打ちされた賜物です。
この手の小兵タイプでは珍しく、打率と出塁率が約1割も乖離しており、これは奇跡的な数値だと言えるでしょう。
言わば、ゾーン管理における"ホンモノ"です。

その一方で、予め身体が開いた状態&右足がピン立ちであるために、スイングの際に股関節の可動域が制限され、アウトコースのボールが遠く見えてしまう(→一般的に流す以外の選択肢がなく率も残りにくい)傾向にあります。

コースお構いなくストレートに対しては逆方向が多く、トータルでも逆方向≒引っ張り側の打球傾向であり、これは典型的な小兵タイプの特徴であるとも言えるでしょう。

シーズン序盤の身体の疲労が溜まっていない、フレッシュな状態のときは、身体にある程度無理が効きハッスルプレーでチームを引っ張れるのですが、本拠地が人工芝球場の大阪ドームであること・1番打者で盗塁への期待値が大きいこと・2Bレギュラーとして守備負担も大きいことと、あらゆる負荷が福田にかかっており、当然それだけ疲労も溜まりやすい環境ともいえるでしょう。

そのため、彼の疲労とともに打撃パフォーマンスが落ちていき、テーブルセッターの代替不能性からチームも機能不全に陥りやすいと考えます。

そのために、攻撃面で現状換えが効かないからこそ、少しでも運動量が少ないとされる3Bに動かすことで、短期的にはパフォーマンスの維持に務める。長期的には2Bプロスペクトの太田の台頭に備えるという考え方ができ、これは実に合理的です。

高出塁率を兼備したテーブルセッターとしての攻撃力を活かすための、前向きな3B挑戦と捉えると、個人的にはこの西村前監督の進言は素晴らしいものであったと考えます。


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このように、西村徳文前監督は、選手・コーチ・監督として活躍した百戦錬磨の経験から来る観察眼には目を見張るものがあると言えるのかもしれません。

この先も、我らの埃として輝き続けるでしょう。
この先も、プロ野球に関わる形ではなく、やはり朗らかな笑顔のおじいちゃんでいて余生を過ごして欲しいですね👴

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