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丸亀じゃんご単独を現地で観て、愛が爆発した話

 8月5日(金)21:00より、よしもと漫才劇場で丸亀じゃんご単独ライブ「じゃんごジャンゴDjango」が開催されました。3ヶ月に1回のペースで開催されており、私は今年に入ってから継続的に観るようになりました。
 
 丸亀じゃんごとの出会いは、昨年夏ごろに別の芸人さん目当てで観たユニットライブで、最初の印象は「賞レースより寄席が向いてるタイプだな」でした。「賞レースより(賞レースでは勝ちにくいかも?)」という部分は多少考えが変わりましたが、「寄席が向いてる」という印象は今でも変わっていません。

 その後M-1の3回戦でお米のネタを観て、こんなに間口が広いかつクオリティの高い漫才があるのかと感動し、すっかりファンになりました。丸亀じゃんご目当てでマンゲキに行くのはもちろん、今年のytvではカベポスターの次に応援していましたし(笑)、NHK上方、ABCと決勝に残れなかったときは、他の好きな芸人さんが決勝にいる喜び以上に悔しい気持ちになりました。

 過去2回、配信で観た単独ライブも面白かったのですが、今回初めて劇場で観て、色々分かったことや感じたことがあり、単独から2日経ったいまも「丸亀じゃんご最高やな」という気持ちが溢れかえっているので、ここに書きたいと思います。

※ここから先の文章には全部先頭に「いちお笑い好きの勝手な考えですが」がつきます。

 まず、客層の良さ。これは劇場に行ったからこそ分かったことですが、若手の単独のわりにはかなり老若男女、幅広いお客さんがいらっしゃいました。マンゲキ前には親子連れが並び、1番前のセンターには中年の男性が陣取り、ライブ中は年配の女性の「アハハハハ」という笑い声が響き渡り、単独後の手売りスペースには若い女の子が列を作る。
 もちろん皆さん丸亀じゃんごの新ネタに期待して見に来ているわけですが、他の若手の単独に比べてがっついた感じ(このネタはM-1で使えるかどうかジャッジしている空気)がなく、純粋にネタに笑っている感じがありました。毎年行っているナイツ独演会の空気感を思い出したくらいです。
 この光景を見ただけで丸亀じゃんごへの信頼度が一気に増しました。正直、まだ満席にはほど遠いのですが、この感じのままお客さんが増えたら、本当に「丸亀の単独は客層が幅広くていいねえ」となると思います。

 次に、肝心のネタ。北村さんが濃厚接触者になってしまい、単独当日が復帰日。それもあってか、お二人が本当に楽しそうに漫才をされていて、こちらもずっと楽しかったです。「二人が仲良し」というのは、丸亀じゃんごの大きな魅力です。
 今回は6本中4本、安場さんが女性役になるネタだったのですが、全部見事に演じ分けられていました。特に「思わせ振りな女の子」と「竜宮城の乙姫」の演技は素晴らしかったです。今回の単独でやったネタは、それぞれ他のライブでもやっていくと思いますが、これだけの女性役を1時間のライブで並べて、全部演じ分けていくことはもうないと思います。本当にすごい芸を観させていただきました。
 一方、北村さんはツッコミの幅が広い。安場さんの演技に補足をいれたり、お客さんに寄り添ったりする"優しいツッコミ"から「こいつ嫌いやわ」とか「お前は分からんやろ」みたいな"暴言系ツッコミ"まで、ネタやボケに合わせてさらっと使い分けていくのがすごいと思います。間の取り方も抜群です。個人的には"暴言系ツッコミ"が大好きでもっと聞きたいのですが、きっと"優しいツッコミ"の合間にスパイスとして繰り出されるから面白いんでしょうね。
 そして、丸亀じゃんご最大の魅力であるネタの間口の広さ。今回の単独でいったら「温泉旅館の女将」「浦島太郎」「体育館裏での告白」など、誰でも知っているものがテーマとなっています。ボケやツッコミも奇をてらったものはなく、ネタの構成だっていたってシンプルです。面白い面白くないは人それぞれですが、丸亀じゃんごのネタが「理解できない」という人はいないんじゃないでしょうか。この「分かりやすさ」ゆえに賞レースだと物足りなく感じるのかもしれませんが、お客さんの受容度(ネタが伝わったかどうか)でいったら、どのコンビにも負けていないと思います。
 特に寄席ではこの魅力がめちゃくちゃ強みになると思っています。いまNGKの夜公演やマンゲキの寄席では丸亀じゃんごがトップバッターを任されることが多いです。それはもちろん芸歴が浅いからというのもありますが、この間口の広さを武器に、席についたばかりのお客さんをお笑いに引き込む役割を期待されているからなのでは、と思っています。
 さらに、ネタ中の身体の向きや目線のやり方、言葉の立て方など、漫才師としてのたたずまいが9年目とは思えないほどどっしりとしています。配信でもある程度感じられますが、やはり間近で見るとより一層「漫才のうまさ」が際立ちます。今回の単独で、1時間じっくりそのたたずまいを堪能できたのが嬉しかったです。これからもっと漫才師らしい出で立ちになっていくと思うと、楽しみで仕方ありません。

 そして、単独ライブのパッケージ化も進んでいるような気がします。しゃべくり、漫才コントなど様々な形の漫才が楽しめる一方で、「そんなことある?」シリーズ、「初めて○○した人」シリーズなど、毎回お決まりのパターンも用意されています。
 こういうパッケージ化が進むと、3ヶ月に1回の単独ライブに統一感が出ますし、継続して見ていると「今回はどんな初めてシリーズがあるのかな?」という楽しみ方もできるようになります。もちろんその枠を飛び越えた漫才にも期待しつつ、「このパターンの漫才は丸亀じゃんごの専売特許だよね」というものが出来上がっていくのも、これからの楽しみです。

 合間のコーナーはYouTubeにちなんだクイズでした。もちろんYouTubeも全部観ているので、内輪としてとても楽しめました。丸亀じゃんごのYouTube(トーク)は二人の仲の良さと正直なところが存分に出ていて、いま1番好きなチャンネルです。ネタの面白さと、このYouTubeから感じられる二人の人柄の相乗効果で、どんどん人気が出ることを願ってやみません。

 最後に、これはいわゆる「ガワ」の話ですが、今回の単独で1番グッと来たのは、マンゲキに入ると既に舞台にサンパチマイクが置いてあったことです。配信ではまったく気付かなかった演出で、なんというか、これから一生漫才をやっていくんだという覚悟のようなものを感じました。
 私が若手を応援するのは二つ方向性があって、一つは今のかまいたちや見取り図のような「舞台でもメディアでも、とにかくどんどん活躍してほしい」という応援、もう一つはテンダラーやガクテンソクのように「とにかく舞台(NGK)に欠かせない存在になってほしい」という応援です。丸亀じゃんごに関しては、私は完全に後者の応援をしています。ビジュアルや出囃子やネタ、全部ひっくるめてこの芸歴でこんなにNGKの舞台が似合いそうなコンビはいないと思いますし、恐らくお二人もそれを狙って自己プロデュースしてらっしゃると思います。
 いまNGKの夜公演に月1で呼ばれているのが本当に嬉しくて、都合がつけば欠かさず観に行っています。賞レースも「売れてほしい」というより「NGKの本公演に立つために」優勝してほしいと思っています。
 もちろん丸亀じゃんごが今後どのような道を進んでいくのかはお二人の自由なので、お笑い芸人を続けていってくれるのであれば、どんな道でも応援します。それでも一つだけファンの勝手な願望を押し付けるなら「NGKの本公演にコンスタントに出るような漫才師になってほしい」。ユニットライブで初めて観たときから知らず知らずの間に膨らんでいた私なりの丸亀じゃんご愛を、こんな長文で書きなぐるまでに大爆発させた、素晴らしい単独ライブでした。