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2月19日(月)

スキー場で働いている友人に会いに新潟まで行く日。どたばた支度をしながら電車に飛び乗ると先の駅で電車が止まっているとかなんとかで遅延しており、調べたら私はまだ新幹線のチケットを持っていないのに10数分で地下鉄丸の内線から東京駅JR改札の中のそのまた中の上越新幹線の改札の中の車両に飛び乗らないといけない事が判明した。しかも1本逃すと次は到着が1時間半後ぐらいになるので絶対遅れるわけにいかなかった。不安と焦りでクラクラしながら、昨日会っていた友人にこれこれこうでこういう状況で今からめちゃくちゃ頑張らなきゃいけない、応援して欲しいという連絡を飛ばす。友人は乗れるにかけてくれた。10時ちょうどに始まるレース(乗車&特急券発券、乗り換え)の前、「レース前の馬たちはこんな気持ちなんだ」と身をもって体感した。かけられている。勝たなきゃいけない。絶対友人のことを単勝勝ちさせたい。

予定通りの新幹線から降りたら空気がツンとしていた。落ち合った友人に寒いねと伝えようと思ったら「なんか今日あったかいね〜!」と被せて来てビビった。確かに駅前の足湯からは湯気が出ていなかったし、息は白くなかった。昼食を取ろうと事前に調べておいた店を提案する。一応何個か調べてたんだけど、「そうじゃない」と思ってひとつだけ伝えた。15分ほど歩いて割烹料理屋に向かう道中、山々がどれも雪をかぶっていてそのどれもが静かに佇んでいて同じ地球に存在するものとしての凄みがあった。

昼食をとっている時の会話の中で「私ここで過ごしてて気づいたんだけど、やりたくないこと本当に出来ないわ!」と友人が笑いながら言っていた。この人のこういう真っ直ぐな眩しさ、本当に美しくって好きだ。

コーヒー飲もう、と近くにあったカフェへ。テイクアウトしようかと思ったが店内で座って飲むことにした。私はホットのカフェラテとミルクティーのジェラート、友人はホットコーヒーとバスクチーズケーキを食べていた。どう考えても食べ過ぎだがするすると胃に入っていくので怖かった。恐らくそこに戸があったのだろうというトイレに行くまでの通路にふとめの毛糸に鈴のようなものがつけられた間仕切り用の何かがあった。毛糸につけられた鈴のようなものが反射してキラキラしており、それを見た友人が「あのきらきら、きらきらの音がするね」と言っていて、その感性の尊さに私は少し泣いた。美し過ぎるだろ。去年の8月22日の日記に "友人が何やら頼んだコーヒーを全然飲まないのでどうしたのかと聞くと「ラメが入ってるみたいに氷がキラキラしてる」と言ってストローでずっとカランカランと氷を回しては綺麗、と呟いていた。(略)何よりそういう人の素直さみたいなものは見習っていかなければならないと痛感した瞬間だった。" と下北沢のfuzkueのアイスコーヒーをこの友人と一緒に飲んでいたときに起こったことを書いている。この人、本当にこういうところが尊いし愛しいなと思ってこれからも仲良くしたいとまた思い直した。そしてそこにいたく感動したことやこの人への愛をどうしても伝えたくてどうにかこうにか話したら向こうは笑っていた。

カフェを出て、近くにあると調べていた公園へ向かう。結構急な坂でウワーーとか言いながら温泉が沸いている湯気を見たり、人の足跡がまだついてないふわふわの雪を見たりした。公園までの道は途中で雪かきがされておらず、行き止まりになっていた。その場で少し立ち止まって右手に見えるリフトを見ていた。ずっと地面から水が流れ続けていた。

少し散歩しようと歩いていた道中に見つけた射的をすることにした。射的、いつもならやらないけどこういうのってやったほうがやった記憶になるって最近理解したからめんどくさいかもという気持ちを置いて入った。こんにちはーのあと無音の数分。のちにおじちゃまが出て来て銃の使い方や的の仕様についてを丁寧に教えてくれた。花札は絵柄に関係なしに当たると1点、フィギアは当たるだけでok、フックにかかっている鈴(天使付き)は当たるだけで5点、1番奥の棚に置いてある鈴は落とすと10点とのことだった。初めからこれにしようと決めていたバルーンの犬のチャームを8発目でゲットした。おじちゃま、沢山おまけしてくれてありがとう。

駅の反対側に向かい、何もない街をひとしきり見た後、ベンチに座って温泉を調べた。いくつかあったけど全部どれも遠くて、結局駅から歩いて18分くらいの所にした。そこまでの道中でこの町でできた友人の話や、自分の服の参考にしている人ってなんだろうねって話をした。参考にしている人はいないけど「モノ」を見てるかもという話があって、それは時代なのかもなとかを思ったりした。たしかに私もそういう節がある。インターネットショッピングやブランドの公式SNSなどが普及した今、好きなアーティストの影響とかではなく、モノ中心で見ているのかもしれない。これは結構納得できるなと思いながら大通りを右折し、高架下を通り過ぎて坂を下る。坂の下は高い建物が少なく、先ほどまで歩いていた街並みより何倍も広く感じた。湯気などもたっている様子がないので本当にこんな所に温泉があるのか…と疑いながらマップの指示通りに歩くとこじんまりとした共同浴場があった。結構車が止まっていたり、出てくる人がみんなアウターを脱いでいたり、なんなら半袖でいる人がいたり(雪×半袖の光景は結構良かった)、何やら期待できる感じ。大人2人の券を買い、タオルを借りていざ参らんと脱衣所に入ると1人でいらしている先客のおばさまたちが6〜7人くらいいた。少し縮こまりながら服を脱ぎ、浴室へ。浴槽はひとつのみで潔くて格好良かった。共同浴場という名称のところ、だいたい浴槽ひとつな気がするんだけどなんで?そういうルールがあんのかな。

友達が先に出た後に1人で湯に浸かっている時にみた水の揺れ動くきらめきがめちゃくちゃゆっくり見える時間があった。美しかったので覚えておこう、と思ったことを忘れていたけれど日記を書いていて思い出せた。風呂から出て服を着て外に出る。冷たい風がびゅうと吹いても体の芯がほかほかなので気持ちが良いということ以外感じなかった。町はまだ日が残っているのに街灯がぽこぽこと灯り始めていたのが不思議だなと思ってみていた。グレーがかった空と白い足跡ひとつない雪を暖色の街灯が照らしていて、そりゃここを題材にして小説も書くわ、と思った。全然読んだ事ないけど。川端康成。

お酒を飲もうと居酒屋に入るも連続で振られまくって悲しい。この時期のこの時間はどうやら予約必須らしかった。どこも満席だったが4件目でようやく空いているところが見つかったのでありがて〜とカウンター席に座りながらメニューを見る。何頼むか、という時にメニューに書いてある揚げ出し豆腐を同時に口に出したり、枝豆を頼むやつが嫌いという友人の話をへえと聞いたりした。20分そこらでそれを全て平らげ、友人の勤務地に帰るバスの発着場へ向かい、私は少量のお土産を持って新幹線に乗り込んだ。これを途中まで打って20分くらい眠って、また書いた。

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