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#エモいってなんですか?〜心揺さぶられるnoteマガジン〜

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理屈ではなく何か感情がゆさぶられるそんなnoteたちを集めています。なんとなく涙を流したい夜、甘い時間を過ごしたい時そんなときに読んでいただきたいマガジンです。
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#生きづらさ

曇天

地元では大雨らしい。こちらは曇り空。敷き詰められた今日の雲は、週末までまだ1日残している人々の深いため息で作られている気がする。雨はまだ降らない。ため息のカタマリはただただ厚みを増していく。そこには、ため息に混じって吐き出したみんなの心の涙が溜まっている。そんなもの浴びたくないから、みんな色とりどりの傘を持つ。人がひしめくあの街は、何色の涙を流すのだろう。雨は神さまの涙なんかじゃない。れっきとした、僕らの涙だ。 曇り空の時ほど空を見上げたくなる。鉛色の切れ間から、白く淀んだ

【薄い本】Eine kleine Nachtmusik

Eine kleine Nachtmusik (アイネ・クライネ・ナハトムジーク) 『小さな夜の歌』 ・・・ 『セミってさ、昼しか鳴かないらしいよ。夜はどこかで寝てるのかなぁ。』 彼女が急にそんなことを言い出した。既に夜の帳は下りている。夜風で揺れるカーテンの間から、気だるげなネオンが見え隠れする。彼女の服を脱がせ、ブラジャーのホックに指を掛けたところだった。 『なんで急にセミが出てくんだよ。』 少し顔をしかめ、疑問をぶつける。彼女は時々突拍子もないことを突然言い出

いのちの賞味期限  【コラム】

人の身体が壊れる瞬間は、突然やってくる。 私が2年前、2ヶ月も経たないうちに会社を辞めたのが、 ちょうどこの時期だった。 本当に一瞬のようで、密度の濃い時間の中だった。憧れていた広告業界、デザイン事務所に入社した私は、その時はまだ希望の中にいた。 入社初日に終電帰り、入社2日目にして始発帰り、それでも、それが当たり前だと思った。企業研究をすれば、広告業界がどれだけ重労働か調べられるし、それを覚悟の上だった。 入社して1週間、ありがたいことに私は雑誌の数ページのデザイン編

死んでいない私から、死んでいないあなたへ

新学期を前に足がすくむ子達に、自分からは何が言えるだろう? このところずっと、それを考えるために10代の頃の自分を思い出していました。 役に立つかわからないけど、言いたいことがあるので、まずちょっと自分の話をします。 学校をやめた時の話私は物心ついた時から、なんとなく「終わり」というのを意識していた子どもでした。世界と自分の間に何か膜のようなものがあって、私はもう終わっていて、外の人はみんな未来へ向けて歩いているような、なんとなく変な違和感がずっとありました。 それが酷くな

この目が見たいもの

新幹線。街を流れる人の川。空まで伸びるビル群。今日も誰かの残業が、美しい夜の街を作り出す。誰かの涙が、汗が、辛さが、苦しさが、光る。そうやって生み出された景色は、星なんかよりももっと綺麗で幻想的で心動かされるものであるべきだ。人の頑張りが光っているのだもの。 美しい景色を眺める側になるか、作り出す側になるか。どちらに転ぶとも知らず僕は星がよく見える場所へと逃げるように帰る。小さく光る星達だけはよく見えるんだ。 綺麗な景色は眺めていたいよ。夜景の一部にはなりたくないなんて思っ