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【個別記事】金田一少年の事件簿:金田一はじめ

8月5日は「金田一少年の事件簿」における主人公、金田一一(はじめ)の誕生日です。そういうわけなので、今日は「金田一はじめ」というキャラクターの個別記事を書いていこうと思います。

・金田一少年の事件簿について

以前に紹介した記事をリンクします。

さて、これで漫画の予備知識は十分です。では早速、金田一はじめというキャラクターについて語って行きます。

・特徴

金田一の一番の特徴はなんといってもあの「ジッチャン」の孫であるということ。最近は明言を避けているようですが、別に禁句というわけでもなさそうなので言います。「ジッチャン」というのは横溝正史の小説の登場人物「金田一耕助」です。作中では時々実在の人物かフィクションの存在か混同されますが、とりあえずこの漫画の中では実在の人物のようです。

・能力

金田一には祖父譲りの、警察顔負けの推理力が備わっています。それを武器に様々な事件を解き明かしていくのですが……

ちょっとここで一旦ストップ。

この記事でわたしが言いたいのはまさにここです。

金田一少年の能力は他の名だたる探偵と比べ、あまりに低いということ。

はじめに断っておきますが、作品批判ではありません。

キャラクター批判でもありません。

ここで言う「能力」とは、何も推理力のみを指しているわけではありません。むしろ人間の資質から推理力を引いた残りの能力が低いと、わたしはそう言いたいわけです。

例として、有名な他の探偵を二人ほど挙げてみます。

・江戸川コナン

「金田一少年の事件簿」と双璧を成す国民的探偵漫画「名探偵コナン」の主人公、江戸川コナン。

彼は世界的ヒットを打ち立てた探偵小説家の息子で、高い推理力と抱負な人生経験、そして財力に恵まれています。

得意のサッカーは高校生レベルでは比肩する相手がいないほど上手く、現在は逃亡する犯人にサッカーボールをぶつけて撃退するほど。

他にも絶対音感を持っていたり、元女優の母親譲りの演技力の持ち主であるなど、非常に多芸です。

唯一の欠点は、音痴である事くらいでしょう。

・シャーロックホームズ

推理小説といえばまさにこのシリーズ。最も優れた探偵といえば彼。

シャーロックホームズです。

たぐいまれな観察力と非凡な頭脳、抜け目のない捜査能力を駆使してどんな事件も解決するという、まさに最高の探偵です。

そんなホームズは腕っぷしに優れ、「バリツ」という体術の使い手でもあります。危機回避能力も高く、モリアーティー教授やその部下に何年もの間生命を狙われ続けたにも拘わらず生還しています。

また、バイオリンの名手でその腕前はプロレベルだとか。他にも変装をすれば最も近しい知人であるワトスンにすら見抜く事が出来ないほどの完璧な擬態を可能としたりと、非常に多芸です。

唯一の欠点は、あまりの能力の高さゆえに休息を嫌う癖がある事くらいでしょう。

さて、そんなモデルケースを二件ほど見て頂いた上で、改めて金田一少年のスペックを振り返ってみましょう。

・頭脳

推定IQ180以上の評価を受けており、すさまじく高い事が窺えます。彼が在籍する不動高校の入学試験では、幼馴染にして秀才の七瀬美雪を差し置いて最高得点の成績を修めており、教師陣からはいろいろな意味で一目置かれています。

一方でその頭脳は本人にとってアンコントローラブルな代物らしく、普段のは赤点常習犯のようです。蝋人形城殺人事件ではなんとか高得点を取る事に成功していますが、それはあくまでカンニングの結果でした。

自分の頭の悪さを真剣に思い悩むシーンも少なくなく、調子に乗りやすい性格のわりに自己評価はそれほど高くありません。

・運動能力

学校での評価は「運動音痴」です。取り立てて身体能力が高いわけでもなければ、格闘能力に優れているわけでもありません。

犯人を追い詰める際には必ず後ろ盾が必要で、単独で真犯人(高遠)を捉えようとした獄門塾殺人事件ではあっさり返り討ちに遭い、辛酸をなめています。また続編「37歳の事件簿」の最初の事件では、腕っぷしが貧弱であるがゆえのピンチに陥っていました。

犯人を追い詰める能力に関しては、無いに等しいと言ってもよいでしょう。

・人間性

事件が絡んでいない部分だと、割とゲスです。「魔犬の森の殺人」では美雪と大人な関係になるために友人に毒を盛ったり、美雪と玲香と二股デートを決行したりと、決して褒められた人格者であるとは言えません。

他にも度を越したうっかり屋だったりだらしない一面が多かったりと、はっきり言って欠点だらけです。


そんな欠点だらけの主人公がしかし、国民的探偵漫画の主人公であるという事実は揺るぎません。

金田一少年には金田一少年なりのキャラクターとしての著しい魅力があるからこそ、愛され続けているのです。

・魅力その1、熱い心

金田一少年は普段こそぐーたらで無気力さが目立ちますが、いざという時には非常に熱い心を見せてくれます。

最もそれが顕著なのは、推理を終えた直後に犯人と相対した時。序盤に多く見られる展開ですが、自暴自棄に陥ったり人質を取って悪あがきをしようとする犯人を相手に、金田一は臆する事なく立ち向かいます。

それゆえか事件のクライマックスシーンはいずれも秀逸で、この漫画の人気の秘訣がよく分かります。

上述したように、金田一には格闘能力がありません。武器を持った犯人を制圧する術など持ち合わせていません。

にも拘らず、危険を承知で身一つ心一つで犯人に立ち向かうからこそ、その熱さが浮き彫りになります。

少年漫画の主人公として、この上無く理想的なスピリットの持ち主だと思います。

・魅力その2、優しさと厳しさを併せ持った正義感

金田一は不真面目ではありますが、純粋な正義感の持ち主でもあります。その正義感はライバルである明智警視をして、金田一の天才的頭脳は決して悪用される事は無いというお墨付きです(剣持警部の殺人)。

そしてその正義感は、事件の犯人にも向きます。

「金田一少年の事件簿」では被害者が救いようの無いクズで、犯人に情状酌量の余地があるという展開が多かったりします。しかしそういう場合犯人は捕まった段階で復讐の大方を終え、燃え尽きていたり心を閉ざしたりしている事が多いのです。

そういう場合は金田一が刑務所を訪れ、アフターケアをしてくれます。大抵の場合それは金田一自身には得が無いもので、場合によっては事件によって手にした得をまるごと費やしている事もあるくらいです(天草財宝伝説殺人事件)。

そんなハートフルな一面を持つ一方で、厳しい部分も持ち合わせています。

それが最も顕著だったのは、「異人館ホテル殺人事件」。個人的にわたし、このエピソード滅茶苦茶好きなので語りたいのですが、本筋から逸れてしまうのでとりあえずそこは置いておくとして。

この回では犯人があまり反省していない様子だった事、犯人が金田一の後輩である佐木竜太を殺害しているという事からか、後日談で金田一が刑務所を訪れた際、犯人に残酷な事実を突きつけます。

あるいはそれは、犯人にとって知る必要の無かった事です。少なくとも知らなければ良かった事ではありました。現に金田一の話を聞き終えた犯人は、後悔の涙を流して泣き崩れていました。

こういった厳しい一面もまた、正義感の表れと言えましょう。こういう部分で平等な金田一は、探偵というか主人公として非常に好感が持てます。

・魅力その3、囲碁が強い

これは魅力として数えるべきか微妙なところですが……

金田一は囲碁が滅茶苦茶強いです。ろくに練習をしたわけでもないのに、囲碁の強豪選手を相手に完勝しています(血溜之間殺人事件)。

普段の頭が悪い分、不意に見せられるこういう「地頭の良さ」が光ります。

総評

金田一はじめという人物は、スペックの高い探偵ではありません。

ですが探偵漫画の主人公としては、非常に魅力的です。

「金田一少年の事件簿」好きの方はぜひ、今一度彼の魅力について再確認してみましょう。

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