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感想「ひぐらしのなく頃に業 猫騙し編」

一週間ちょっと遅れですが、猫騙し編を語りたいと思います。

本当は先週のタイミングで語ろうと思っていたのですが、猫騙し編のラストが滅茶苦茶いいとこで終わった感じだったので……

でも結局新章はしばらく回想みたいなので、もう語っちゃいます。

出題編三つの感想は以下にリンクします。

・鬼騙し編

・綿騙し編

・祟騙し編

以下、猫騙し編のネタバレ注意!

猫騙し編

調べによると、セルフオマージュ元の「猫殺し編」は、漫画版の出題編三作の同時購入特典で配布された小説でのみ公開されている外伝なのだとか。

……

流石に門が狭すぎます。当時お金持ってた人しか分からないお話を本編に据えてくるとは、沙都子並みのトラップです。仕方が無いのでここからは前作の予備知識ゼロで語ります。

・綿流し

冒頭からまさかの回想ネタばらしとは驚きました。祟騙し編における綿流しの日の境内で何があったのか……梨花視点で語られます。もっとも語られたところで、全くネタが割れていませんが。

分かったのは、順当に大石さんが発症して大暴れしたという事。そしてレナが助かったのは周りの人間の善意と、位置関係による単なる偶然であるという事。

何故これまで一切発症しなかった大石が発症したのか、どのような経緯で発症した結果、梨花を敵視する思考に至ったのか、何故あの場に沙都子がやってきたのか……諸々の事情は一切明かされません。

思えば大石が疑心暗鬼に陥っている描写はいくつかありました。やたら圭一を敵視していたり、鉄平がいる北条家の状態について意味深な事を語ったり……

視聴者側に開示されていない情報がまだあるに違いありません。が、この段階では何も分からないも同然です。

また、神社境内での出来事はとりあえず分かりましたが、結局圭一の身に何が起こったかについては、未だ不明です。何故あの場に鉄平がいたのか、何故鉄平は自分を陥れたのが圭一である事を知っていたのか……この辺の謎は果たして回収されるのか……不明ですね。

・梨花の精神世界

羽入の残り香の力によって、梨花は今まで引き継ぐ事の出来なかった死の直前の記憶を残す事が出来るようになりました。

……

それ出来るなら、なんでもっと早くしなかったんですかねえ……今回のループだけではなく、もっと前から。それが出来たら、もっと早い段階から祭囃し編まで行きつけたでしょうに。いや、結局梨花があそこまで漕ぎ着けられたのは罪滅し編における圭一の記憶引き継ぎとそれに連動する奇跡のおかげなので、なんとも言えませんが。でも何故このタイミングで……? と思うのは当然ではないでしょうか。

っていうか羽入の残滓って、なんかもう怪しいんですよね。本人はもうそこにいないみたいな事を言っておきながら普通に意思を持って梨花と会話してますし。

大体だったら羽入本体はどこに行ったのでしょう。消滅した……とはとても思えません。現在梨花の身に起こっているループ現象は、判明している限りでは羽入にしか起こせない事です。冷静に考えると、梨花の目が届かないどこかで羽入が能力を使っているとしか思えません。

腐っても神様……敵に回ると対処が大変そうです。

とはいえ、この段階で能力がアップデートされたのは不幸中の幸いですね。なにせ一個前が便槽なわけですし……

・鬼狩柳桜

……

めっちゃかっこいい宝具が登場しましたね。世界観が違うような……いえ、羽入が宇宙人という事を考えると、別におかしくは無いですかね。

何となく聞き覚えのある名称だったので調べてみたところ、過去作にも登場したものらしいです。詳しくは知りませんが。

さてこの宝具、「繰り返す者を殺す」能力があるのだとか。

つまり梨花のループを終わらせられる効果があるという事。これももっと早く……いえ、さすがにこれは言えませんよね。

ともあれ羽入はここで退場。梨花の心が完全に折れた状態でのスタートです。

・かくれんぼ

いつものように楽しく遊ぼうという部活メンバーに対し、そのしがらみが面倒になった梨花が適当に皆から離れるための口実に提案した……という印象でした。元気の無い梨花の様子に、メンバー達は何かを察したようですが……

・魅音と学校のトイレ

……

いや、ツッコミどころは多いですよ。

なんでトイレに外側から掛けるタイプの鍵が付いているのかとか、なんでその鍵を魅音が所有しているのかとか、なんで魅音は鍵が掛かった個室の中に梨花がいると考えたのかとか。

でもそんなのどうでもいいです。

これは明らかに、綿騙し編におけるヒントです。あるいはミスリードかもしれませんが。

綿騙し編において、梨花は便槽で死にました。そして失踪した梨花を探すために圭一があのトイレを調べようとした時、確か鍵は掛かっていなかったんじゃありませんでしたっけ?

鍵を開けられるのは魅音だけ。つまりは……

確定ではありません。今回魅音が鍵を持っていたというだけで、学校の備品として誰でも持ち出せる類のものかもしれませんし。ですが校外の人間の仕業という線は消えたと思っていいでしょう。

あるいは他のメンバーが梨花を探している場所も、何かのヒントになっているのかもしれません。一応列挙してみましょう。

・沙都子→神社境内

祟騙し編で梨花が殺された場所ですね。ただしこの場所は梨花の自宅の近くでもあるわけですので、不自然ではありませんね。

・レナ→ゴミ山

罪滅し編でレナがリナの死体を棄てた場所ですね。今回のループではあまり関係無いかもしれませんが、鬼騙し編でリナ殺害をやっていた可能性はあります。

・圭一→水車の近く

圭一の通学路で、確か魅音との待ち合わせ場所ですね。引っ越して間もない圭一はあまり村の事を知らないので、探しようがないのでしょう。

・梨花ちゃんは探して欲しかったんじゃないのか?

圭一まじイケメン。

こういう事言えるから、圭一は主人公なんですよね。大好きです。

部活メンバーは皆頼もしいですが、やっぱり圭一の一声があるか無いかで全然違いますね。

さて、頼もしい部活メンバーが探しに来てくれたのですが……

・祭具殿の中

かくれんぼの隠れ場所としては完全に卑怯ですが、そういう話ではないのでそこには触れない事にしましょう。

梨花は羽入の残り香の遺言(?)に従い、鬼狩柳桜を求めてオヤシロ様像へ。しかし綿騙し編での圭一が見たように、そこに剣は無く、空洞があるだけでした。結局その欠片と思しきものを代用品として手にする梨花ですが……

じゃあ鬼狩柳桜はどこにいったのでしょうか。

通常なら誰かが持ち去ったというのが順当な思考ですが、祭具殿には鍵が掛かっており、古手家の人間以外は原則立ち入り禁止です。「綿流し編」で富竹さんがやってみたいに、綿流しの日を狙ってピッキングでもしない限り、進入するタイミングはありません。

ただし作中において一人だけ、過去に間違いなく祭具殿に侵入した人物がいます。沙都子です。

またしても沙都子……今回は沙都子目白押しですね。

さてあと5回頑張る宣言をする梨花のセリフは、予想に違わず死亡フラグでしたね。

・1週目

麻雀を通して大石さんと仲良くなり、前回の懸念を取り払い、さらに赤坂まで登場。まんま祭囃し編の布石みたいな人物がぞくぞく集まって、5回なんて必要無いんじゃないかというくらいのスタートダッシュっぷりですが……

まさかの赤坂発症。圭一に次いで希望の星だった頼れる赤坂が、意味不明な事を言いながら梨花を殺害するシーンは滅茶苦茶ショッキングでした。妙に動きがコミカルなのも相まって、ちょっと笑ってしまいました。

・2週目

もはや惨劇シーンからスタートという雑っぷり、笑います。

次は茜さんですね。祟騙し編ではお魎さんと対照的に落ち着いた大人の女性といった雰囲気でしたが……またしても赤坂に続き落ち着きを失って壊れてしまいました。

これまでの発症者は皆、精神的に未熟な子どもだったから発狂シーンがただただ怖いだけだったのですが、真っ当な大人が狂っていく姿を見るのは、なんだかすごく痛々しいですね。認知症の親を見る気持ち……と言えば伝わるでしょうか。惨劇とは別に、目を逸らしてくなります。

・3週目

公由村長は口が臭い。

・4週目

……

うっそ、まじで?

いや、圭一が発症するのは鬼隠し編で既にやっているので初めてというわけではないのですが……

罪滅し編以降完全に希望の星と化していた圭一の経験が全てリセットされたかのような再発症……というのは、悲劇以外の何ものでもありません。

レナの説得に耳を貸さずに撲殺というのも「鬼隠し編」の通りですが、あの時の圭一が曲がりなりにも「友人を殺した事に対する罪悪感」を抱いていたのに対し、今回は興奮に任せてレナの死体にも一瞥もくれない残酷さは、もはやこれは圭一の偽者だと言われても信じるレベルではないでしょうか。

そもそもこれって本当に雛見沢症候群なのでしょうか。発狂しているという点では確かにそうなのですが、疑心暗鬼になったという感じはあまりありません。これまでの発症者の主観を見る限り、発狂している時もそれなりに懊悩したり人間らしい感情を見せたりもするはずなのですが……今回は全くそれが見られません。まるで別の現象みたいです。

しかもどんどんサイクルが早まっています。明らかに何者かの手によって、惨劇のタイミングを早められています。梨花が能力をアップデートされた事、あと5回頑張ると決めた事を知っているかのような畳みかけ方……

・5週目

……

はい。そうだと思ってました。

ここに来るまで散々露骨に怪しかったですし、まあそうですよね。

沙都子はループ前の記憶を引き継いでいます。

しかも梨花がループした直後を狙える辺り、ループそのものを司っているようにも思えます。という事は、沙都子のバックには羽入もしくはその仲間が潜んでいると考えるのが自然でしょう。一体どういう経緯でそれが沙都子に取り憑いたのかは分かりませんが。沙都子が以前に祭具殿に入った事、オヤシロ様の像に鬼狩柳桜が無かった事と関係があるのでしょうか。

また、沙都子が首を掻いていた事が気になります。首を掻きむしるのは、雛見沢症候群発症の証。確かに沙都子は元々軽度の雛見沢症候群発症者で、薬を常用しないだけで発狂するレベルにまでなってしまいます。「梨花をオヤシロ様の生贄にする」「部活メンバーの皆も殺した」という主張は、これまでの発症者と同じ妄言です。

しかしだからといってこの場面で沙都子が発症しているというのは、流れとしてものすごく不自然です。ループ前の記憶の引継ぎに関してを梨花に気取られたくなくて、ぼかす言い方をするために発症の演技をしているというのは考えられなくはありませんが……そうじゃない場合どのような解釈が考えられるでしょうか。納得のいく考え方として、あくまで沙都子は今回のループに関する首謀者ではなく、スケープゴートとして利用されているだけ……という感じですかね。沙都子自身も知らない事、理解していないルールがあるからこそ、ループの事を知りつつも雛見沢症候群の発症者になってしまった……とかですかね。想像の範疇を出ませんが。

さて、沙都子の主張は要するに、梨花が雛見沢を離れてしまった事に対する非難です。「ずっと一緒にいたかった」という子ども染みたわがままのせいでこれまでの惨劇が起きたとでもいうのでしょうか……

……

あながちばかには出来ませんよね。

鷹野だって「祖父の論文を認めさせるため」だけに惨劇を行っていたわけですから。沙都子の「梨花への思い」が絶対の意思で、そこに羽入が加われば……十分に現実味があると思います。

・羽入について

っていうか今更ですけど、そもそも羽入はどこにいったのでしょう。

敢えて言及していませんでしたが、羽入は「祭囃し編」で肉体を得て、「古手羽入」として存在していたはずです。

あるいはここに来るまでに、「祭囃し編」ではない別のルートを経由している可能性もあるかと思っていましたが、鷹野の号泣シーンの回想では間違いなく羽入が映っています。

彼女の身に何が起こったのでしょうか。

もしかして梨花が雛見沢を離れた事と関係があるのでしょうか。そのせいで羽入が消えたのだとすると、沙都子の凶行にも説得力が増したように感じますが……この辺りはまだ分かりませんね。

さて、沙都子の言葉により洗脳染みた改心をした梨花は、次のループへ向かいます。

・6週目

5週目の沙都子の主張が真実であるかのように、改心した梨花の身に惨劇が起こらなくなりました。ますます沙都子に疑惑が募ります。っていうかもはや確信ですが。

ここ最近はその日を迎える事さえ不可能になっていた綿流しもあっさり迎え、ハッピーエンド……ですかね?

・鷹野について

かつての雛見沢大災害の元凶である鷹野さん。

これまでの描写を見る限り、どの世界でも彼女が暗躍する事はありませんでした。結果梨花が死んでも大災害は起こらず、生き残った圭一達は秋や冬を迎えていました。

かつて鷹野が雛見沢大災害を起こすのは「絶対の意思」と呼ばれ、覆らない出来事でした。ループをするたびに微細な出来事が変わる様々なパラレルワールドの中でも、必ず起こる事として分類されるわけです。だからこそ大災害の引き金となる梨花の死はどの世界でも免れなかった事なのですが……

その前提が崩れたというのはどういう事でしょうか。通常あり得ない事です。鷹野自身も「言っても信じて貰えない」と言うくらい衝撃的な事があったようです。

鷹野はその出来事について、何も語ってくれません。多分これはすごく重要な事です。

今回の黒幕が沙都子なら、改心した梨花とずっと雛見沢で暮らす事が目的のはず。ならばその障害となる鷹野をなんとかするのは当然の手回し。

しかしそれは沙都子だけでは到底不可能なはずです。沙都子の力のみでそれが出来るなら、祭囃し編なんてありませんからね。皆殺し編の段階で終わり。

沙都子だけではない……つまりは協力者の暗示。それが沙都子に取り憑いた何者かなのか、それとも別の人物なのかは定かではありませんが……

・H173について

……

一本ありませんね。

明らかに誰かが持ち去っています。もちろん沙都子の仕業でしょうが……これもまた沙都子だけでは不可能です。H173の扱いの重さを見る限り、ただの小学生が持ち出せる代物ではありません。これもまた、沙都子に協力者がいる事を暗示している気がします。

・誰かが勝手にサイコロを振ってる

すごく誌的な言い方で好きです。

でも梨花も気が付いたようです。ループの主体が自分ではない事に。

困難に対して、基本的に他人頼りな梨花が自力で何かに気が付いたシーンというのは非常に珍しいのではないでしょうか。

その誰か……というのは、登場のたびに散々釘を刺しまくってくる沙都子の事ですよね?

沙都子はいちいちセリフが怖いです。あの叔父にしてこの姪ありと言うとあんまりかもしれませんが……梨花に対する熱情が並々ならない重さで、見ていてはらはらしました。だって不用意な一言でも発そうものなら、次のカットで腹裂かれててもおかしくないんですもの。前科、ありますからね。

・部活

そんな梨花の思惑とは関係無く、平和な日常が続きますが……

正直、いつ転調が来るか身構えっぱなしでした。

その上で強張る沙都子の表情から始まる一連の流れ、滅茶苦茶良かったです。沙都子が腹に何かした抱えていたのは重々承知でしたが、神がかった演出に心が躍りました。背筋がぞくりと震えもしました。分かっていてもこういう感覚が楽しめるというのは、最高でした。

さて、開き直ったかのようにどこからともなく拳銃を取り出す沙都子。完全に流れが変わった状態で次回に続く……

総評

「猫騙し編」という一つの章において、複数のループが展開されるというのは、これまでに類を見ない特殊な構成でした。

そして今回の引きから結果を見せずに次の章へ移るというのも、同じ事が言えます。一つのループで章を跨ぐのもまた特殊です。

つまるところ、全く先が読めないという事です。

次回は郷壊し編。

既に一話は公開されていますが、先が気になってしょうがないです。

猫騙し編の満足度:92/100

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