感想「はじめの一歩 129巻」
今月17日、「はじめの一歩」の最新刊が発売されました。
せっかくなので語ります。
・前巻の感想
感想記事をリンクします。
以下、最新刊のネタバレ注意!
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千堂vsゴンザレス
前巻を読んだ時「決着は次巻に持ち越し」みたいな事を書いたと思いますが……まさかさらに次の巻になるとは思いませんでした。
まるまる1巻使って試合を描写するとは、鷹村vsバイソン戦以来の長丁場です。主人公である一歩が現役を退いてから久しく無かった気合の入りように、少し驚きました。
さて、千堂vsゴンザレス戦もいよいよ佳境。ここで少し、千堂について振り返ってみましょう。
・千堂について
千堂は一歩のライバルであり、一歩が公式戦において唯一二度戦った相手でもあります。
一度目は東西新人王戦において。直前の真柴戦にて拳を壊していた一歩が無理を押して試合に臨むという少年誌らしい展開でした。メタ的に言ってここで一歩が負けるわけにはいかなかったので、千堂の敗北は致し方なしといったところでしょう。
二度目はタイトルマッチにおいて。一歩にとっては二度目のタイトルマッチであり、一度目に伊達に敗北を喫しているからこそ、作劇の都合上負けるわけにはいかなかった試合であり、やはり千堂の敗北は必然でした。
ここまで聞くと千堂は負けてばかりのように思えそうですが、千堂の負けはその二回のみです。それ以外の全ての試合において、勝利しているのです。
一歩のライバルは他にも宮田や真柴、ウォルグ等がいますが、一歩にしか負けていない人物というのは千堂のみです。その面において、千堂は特別なキャラクターであると言えましょう。
そんな千堂のボクシングスタイルは、野生の勘とセンスに任せた暴力的なインファイターといった感じです。一歩に匹敵するハードパンチャーとして、大味な試合運びが魅力的です。
千堂が持つ野生という特徴はこの漫画において、極めて重要です。主人公である一歩こそ持っていないものの、世界レベルの強者は何かしら野生を思い起こさせる戦闘スタイルを獲得している人物が多かったりします。
代表的なのが鷹村ですね。一歩の戦った相手だと、ウォルグや沢村がある意味野生ですし、ウォーリーやホークなんかも恐ろしく野生的な戦闘スタイルの持ち主でした。
ただし、野生的なだけでは駄目です。まさに例に挙げたウォーリーとホークは、野生の力に頼り過ぎていたために実践経験や練習量が足りず、それゆえ敗北しています。
この漫画における最強のボクサーとは、野生と科学の融合です。そしてそのモデルケースこそが、鴨川会長の科学的ボクシングを受け継いだ野生の持ち主である鷹村なのです。
それはそれとして。
では千堂はどうでしょう。紛れもなく野生の持ち主である千堂ですが、その実地味なウェイトトレーニングや走り込みなんかを堅実にこなす真面目さを持ち合わせており、練習量は疑う余地もありません。メタ的に言うと千堂は鴨川ジムのレギュラー陣から「よく見る顔」という認識をされているほど登場回数の多い人物なので、必然的に練習描写が多く見えるだけかもしれませんが……まあ練習描写が多いというのは確かなので。
その練習に科学的な部分があるか否かは、さすがに分かりません。トレーナーの柳岡次第でしょう。今後の展開次第では、なんとでもなりそうな項目ですね。
そんな千堂が現在戦っているゴンザレスは、堅実で丁寧(科学的?)なボクシングスタイルと、暴力的で野生的な死神モードの二面性を持ち合わせる、まさに最強のボクサーの条件を持ち合わせた強敵です。
かつては一歩さえ倒したゴンザレス。果たして千堂に勝ち目はあるのでしょうか。
・経過
一歩以上に暴力的な千堂のスタイルに圧されつつあったゴンザレスですが、自身も積極的に前に出るスタイルに変更する事により、流れを変えます。
ゴンザレスの死神モードは脅威的な猛攻ですが、歯止めが効かないという弱点がありました。しかしどうやらそれを克服して、普段の冷静さも併せ持ったスタイルを獲得したようです。
死神モードは、一歩が唯一付け入る事が出来た隙です。それが無くなったという事は、ゴンザレスは恐ろしい強敵になったという事です。
事実、序盤から中盤にかけて千堂はパンチを受けっぱなしです。ドクターストップを懸念するほどに一方的な試合運び。実力差は歴然です。
そんな状況の中、千堂はただ前に出ます。戦いの中で試行錯誤をしていた部分は少なからずありましたが、最終的に野生に任せた気合と根性で勝負しています。
それでもやはり、被弾の多さが気になります。元々防御に特化しているわけでもない千堂が格上相手に多くパンチをもらうのは当然といえば当然ではあるのですが……
1巻まるまる使っての被弾描写を見ていると、パンチドランカーになった一歩の事を思い出します。一歩に変わって現在のこの漫画の実質的な主役を務めている千堂に今まで以上にスポットが当たっている現状、どうも彼が割を食っているような気がしてちょっと可哀想になります。まあ、本人が殴り合いを楽しむようなスタイルなのでなんとも言えませんが。
さてそんな紆余曲折の果てに、決定的と呼んでも差し支えなさそうな一撃が入ったところで今巻は終了です。ここで千堂の勝ちが決まるのか、はたまたゴンザレスが立ち上がるかは、今度こそ次巻に持ち越しですね。
総評
久しぶりに一歩の試合を思い起こさせるような乱打戦でした。耐えて殴るという千堂のスタイルの都合上どうしても同じような展開になりがちですが、単行本で見るとそれほど気にならず、展開が遅いという感じはしませんでした。面白かったです。
129巻の満足度:83/100
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