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ファンの気持ち

何年も前の話。

湘南の海岸沿いにある雑貨屋で買い物をした際に
軽い雑談になり
「わたし、桑田佳祐さんのファンで江の島とか稲村ケ崎に来るようになったんですよ」と言ったら
その雑貨屋のオーナーさんは、ニッコリ笑って
「あら!そうなの。わたしはね、沢田研二のファンなのよ。昔っから」
と教えてくれた。

わたしよりも7才年上の女性で
髪の長い、スレンダーな、魅力的なひとだった。

「わたし、沢田研二さんのファンのかたに会ったら聞いてみたいと思っていたことがあるんですよ」
「あら?そうなの?なんでも聞いてよ」

わたしはオーナーさんの顔を見ながら
怒らないといいなぁ~と思いながら
できるだけ真面目な顔で質問した。

「沢田研二さんって、20代の頃はスタイルも良くておしゃれでイケメンで、抜群にカッコよくて人気があったけれど」
「ふんふん」
「年齢を重ねて、今は容姿がすっかり変わってしまいましたよね」
「確かに、そうねぇ」

いったん息を吸い直してから、質問してみた。
「沢田研二さんの容貌が大きく変化したのを見て、ファンの方はどう思ってるんですか?」

すると、オーナーさんはニコニコしながら
「なんにも思ってないわよぉ。わたしたちファンはね、ジュリー(沢田研二のニックネーム)が幸せならそれでいいの。ジュリーが今の自分に満足しているなら、それでファンは幸せなの。それ以上何も望んでないのよ。オフ会でも皆、そう言ってるわよ」
「あ!そうなんですか!!失礼いたしました」


ファンの愛って、強いなぁ。
自分には関係ないタレントさんの話だったけど
小さな愛のぬくもりを感じた一コマだった。

あれから数年経って
今も桑田佳祐さんのことは大好きだし
シットキングスの推し活は日増しに沼。

あの時、湘南の雑貨屋で
「好きな人の容貌の変化は気にならないんですか?」
などと聞いた自分がアホらしく思える。


好きになるって、光がサッと心に入ってくるようなもの。
光を感じているのだから、色褪せることはない。


だけど、わたしの中にある容貌のコンプレックスは
いつも「条件付け」をしてしまう。
外見の綺麗な人は愛される、と。

意味のない「条件付け」のクセは捨てていこう。
わたしの中からクセを消し去ることはできなくても
気付いた時に掃除するみたいに捨てることならできそうだ。

自分から注ぐ愛にも
相手から注がれる愛にも
「条件付け」をするわたしから、脱皮したい。

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