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怪物だ~れだ?

是枝裕和監督の映画
《怪物》を観てきました。

エンドロールが終わって
照明が明るくなった時
場内は水を打ったように、静かでした。

ザラリとした後味の悪さ
心の中に砂が残るようなこの感覚は、一体何なんだろう?

わたしには息子を育てた経験があり
母親の目線からの感情
「どうすれば良かったというの?」
という問いが、頭の中に駆け巡っていました。

もうひとつ
一人の人間としての目線
「この世界はまるでオセロゲームのようだ」
という、理不尽で割り切れないものへの違和感が心に流れていました。

オセロゲームの駒は
白い面の下に黒い面が、黒い面の下に白い面があります。
黒い駒と黒い駒に挟まれると、間に並んでいる駒は
パタパタパタと白から黒に変わってしまいます。

ほんの一手で対極の色になるオセロゲームみたいに
世間の見方は流れていく。
わたしの見方も流されていく。


映画を観終わってからも
数時間、心に残った「ザラリ」のために
わたしはずっと考え込んでしまいました。

もしかしたらわたしは
「何かを知ろうとすること」に時間を費やし過ぎたのではないだろうか?
もっともっと、「感じたこと」を「考えて」「伝える」練習に時間を使っても良かったのではないだろうか?
小学校の頃の「道徳」の授業は退屈だったけれど
一方的に教科書から学ぶのではなく
「答えに正解のないこと」について、もっとみんなで話し合えばよかった。
きっとこの子はこんな風に思っているんだろうな、と憶測で判断するのではなく、そのひとの言葉で聴けばよかった。

人に影響されずに自分の考えを持つことは難しいけれど
出来得る限り、自分と向き合い
愛することについて学んでいきたいと思いました。


是枝監督の映画は大好き。
観終わった後
心の闇にナイフを入れるような気持ちになります。
「キツイなぁ…」
と感じている、映画館の暗がりの中に
坂本龍一の音楽が流れて
それはまるで神様からの一筋の愛と希望を現わしているかのように
クリスタルのように透き通って、キラキラと美しかったです。

わたしの心の中に
有名な詩の一節が浮かんできました。

天使が、わたしの誕生を祝って言った。
「喜びと笑いでできあがった小さな生き物よ。
愛しなさい。この世のいかなるものの力も借りずに」 


この言葉を思い出すだけではなく
少しづつ少しづつでいいから
日常生活の中で実践していきたいと感じるような映画でした。



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