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「大江戸妖怪かわら版」の話。

ご飯が美味しそうな描写のある本が好きだ。
ぐりとぐらは、いつまでも心のアイドルである。


そんな訳で、時々ご飯が美味しそうな小説のおすすめを見てちょこちょこ読んでいる。
大当たりもあれば、ちょっとハズレもある。


この本は個人的には大当たりだった本だ。
香月日輪さんの『大江戸妖怪かわら版」シリーズである。

舞台は妖怪がひしめく江戸。そこで人間である雀が、かわら版屋として頑張る話。


私は江戸時代が大好きで、どこか過去の時代に行けるなら絶対江戸時代である。
庶民がのびのびと楽しく暮らしていただろう、あの時代の空気が好きなのだ。


舞台が江戸時代というだけで嬉しいのに、住んでるのが妖怪ばっかりなのだ。
私は人間に優しい人外の話も大好きなので、ハマるべくしてハマったという感じである。


そして出てくる食べ物がひたすら美味しそうなのだ。
外国のおしゃれな料理ではなく、そこは江戸時代、大根のお味噌汁に卵かけご飯など、普通の和食だ。だがそれがいい。


鰻の蒲焼き、お饅頭、オクラとまぐろの山かけ、どじょうの甘露煮。
容易に味の想像がつくだけに、読んでいてひたすらお腹が空く。


また主人公の雀がいつでも美味しそうに食べるのだ。微笑ましいと同時に、強烈にこちらのお腹も空いてしまう。


周りの妖怪達も、雀が人間でも優しいのが嬉しい。美味しいご飯の話を読みに来たのに、人間関係のトラブルが多いとげんなりしてしまう。
レストランで美味しくご飯を食べていたら、周りで揉め事があってご飯の味がわからなくなったような気分になってしまう。


何より、現代の日本でどうやら辛い境遇で生きて荒んでいた雀が、大江戸で雀という名前を得てかわら版屋として認められていくところが凄く好きだ。


こういう、辛い目にあった人が素晴らしい環境でやり直す、みたいな話にとても弱い。
良かったねぇぇぇ!!!ともらい泣きしてしまう。雀が大江戸に落ちてきた直後の話が載っている二巻目は、特にお勧めだ。


元は児童文学だったらしく、本も薄めでさらっと読める。
私はちょっと疲れた時にこのシリーズを読み返しに行く。そういう時にもこの薄さがちょうどいい。

秋の夜長の江戸観光に是非。

#読書の秋2022

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