初投稿

「ただいま」
 その日、私の母がいつものように帰宅すると、父は「リサちゃん」という女性と行為の真っ最中でした。唖然とする全裸の父、布団を胸に当てナニかを喚く「リサちゃん」。布団の上から出られない二人に冷徹な視線を向けながら荷物をまとめ、母は実家に帰りました。その「荷物」の中に私と妹も含まれていたことは、私の人生最大の幸運だったのだろうと思います。

 これは全て私が母から聞いた話であり、私が見た景色ではありません。ですが、幾度となく聞かされた母の離婚エピソードは私の心に確実に大きな影響を与え、「こんな男には絶対なるな」という母からのメッセージを幼いアタマにしっかりと刻み込みました。これを語る母の瞳には怒りも憎しみも感じられず、そのエピソードを酒の肴に笑い飛ばすような気概の強さがあり、しかしその奥に過去のトラウマに怯える心が見え隠れしていました。


 「お父さんはご職業何されてる方なの?」
 バイト先だったり色々な場面で話題にされがちな「両親について」。両親の職業を聞かれたとき、私は母の職業を答えます。父はいません、なんてあえて言いません。でも、掘り下げてくる人はいます。そこに悪意は欠片もなくて、純粋な興味あるいは懸命に場をつなごうとする善意からくる質問です。
不謹慎かもしれないけれど私、これに答えるの、ちょっとわくわくします。私の返答次第で、その相手との距離感が変わるのです。

   返答パターンA
 仲良くしときたい相手にはあえて軽く
「父はいません。幼いころに離婚してまして。あ、あんまり気になさらないでください。」
こうすると、自身の割と重要な内情をアウトプットすることでお互いに信用しやすくなるんです。あと、明るい人間って思われやすくなります。

   返答パターンB
 仲良くしたくないときは冷淡に
「父はいません。父については私もあまり知らないですし、知りたくもないので詮索しないでください。」
地雷を抱えた難しい人間の出来上がりです。こうすると、腫れ物に触れるように扱われ、お互い距離を置いた関係になります。1つ地雷のある人に、地雷がないとは限りませんから、こちらから近寄らない限りは近寄ってくることはまずありません。

 考えてみれば、なんて便利な存在なんでしょう。浮気してたり、たまに母親宛てに気持ちの悪いメールを送ってきたり養育費を不定期に滞納したりと「良い父親」とは程遠いけれど、そんな父親の行動を見て聞いて育ってきた私は、我ながら少しだけ強い人間になっているんじゃないかな。と思います。


で、最後に一言。「キモイメール送ってくるのはいいんだけどもさ、自分の子どもの名前の漢字変換ミスるのは論外だと思うぜ…」

 以上!!




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