自由研究~たすかるとはなにか~

子供は夏休み期間である。精神が子供のままの自分も夏休みらしく自由研究をしてみようと思い立った。
(暇なので30分くらいネットサーフィンしてただけである)


はじめに、動機

青木瑠璃子さんの配信でおなじみの文化としては「たすかる」というものがある。
青木さんがくしゃみをした際にチャット欄に怒涛のように流れる文字列である。
もはや定着しているがたまに新しいゲームなどで初めて見る人が来ると、その様子に驚くし、なんなら恐怖さえ覚えるだろう。
そもそも、なぜ「たすかる」なのか、なにが助かっているのか、について気になったので調べてみた。

背景として

ニコニコ動画という動画視聴・配信サービスがある。
ここでは、Twitterやインスタグラムよりも前から『タグ』というものをつけることができる。
デレパ(シンデレラパーティ)などで【青木瑠璃子】【原紗友里】等
ついているのをみたことがないだろうか、それのことである。

その中タグの中に昔から【声優くしゃみリンク】というものが存在していた。声優さんがくしゃみをしたシーンがある動画についていることが多い。

なぜタグ化したのか

文化的背景として、声優さんは一時アイドルに近い存在として見られていた。今でもその文化は一部声優には残っている。

ここからは筆者の想像になるが、そのアイドルのような存在が、普段仕事モードには見せない「素」の瞬間を見せる時が、「くしゃみ」だったのではないだろうか、生理的現象はどうしようもない。
ノイズに近いものであるため、当然収録放送ではカットされるであろうことが予想でき、「タイミングなどが、ネタとして面白かった」OR「生放送中に我慢できずに出てしまった」ものでないと、記録には残らず、いずれにしても、当時は声優さんのくしゃみは貴重なものとして扱われていたことは想像に難くない。

また、くしゃみをした後のリアクションとして「照れる」ことも多い。
このことも一部ファンにとってはとても「良さ」を感じるもので、専用のタグが作られていったのも、多少マニアックではあるが、理解できない範疇ではない。
特に女性声優の方が「くちゅん」とかわいい声でくしゃみをし、「すみません」と少し赤面しながら照れている様子をお出しされた際には、かわいさのあまり身もだえる人がいても特殊嗜好であるとは思えないし、
男性声優の方が、「はっくしょん」とその美声からくりだされるくしゃみをした際には、こちらも気持ちがよくなってしまう。

声優文化を超えて

そんな背景を踏まえて、時が流れると時代は動画や番組から、生主・ストリーマーによる「生放送による配信」が主になっていく。
それも変化していき、今ではVチューバーのような「アバター」を用いた配信も一般的なものとなっている。
こういった一見すると「人間」のように見えない存在がくしゃみをする、そのことで「あ、彼(彼女)も同じ人間で、ちゃんと存在しているのだ」と実感することができる。配信者が遠い存在から自分と近い存在なんだとより感じられる。くしゃみにはそういった効果があるのではだろうか。
配信し、それを見る、という行為が一般化していくにしたがって、こういった、配信者によるくしゃみ、も多くの人の目に触れていったと考えられる。

なぜ「助かる」なのか

では、見ている側はその「くしゃみ」に対してどういうリアクションを返すのだろうか。
本来ならば「スルー」一択である。家で家族がくしゃみをしようが、会社で上司がくしゃみをしようが、うるせぇ、と思うことはあっても何かをいうことはあまりない。
だが、オタクと推される存在との間では話は別である。
くしゃみをし「すみません」「ごめんなさい」と言われたら、なんと返すか

「いいよ」「ええんやで」
「気にしないで」などのフォローの言葉か

「むしろ(めずらしいもの・照れているところを見せてくれて)ありがとう」

という感謝のことばではないだろうか

このありがとう、が、徐々に「むしろ助かる」に変化していったのではないだろうか。

もう一つの要素として、ニコニコ動画全盛期には「MAD職人」と呼ばれる、今でいう切り抜き職人、に似た動画編集者が存在していた。
彼らにとっては、くしゃみのシーンは珍しいシーンなので、当然本来の意味で「(いい映像・音声が残って)助かる」と言っていたのかもしれない。
また、これらの人の中には動画や音声を切り貼りしたり、人力ボーカロイドをつくる人もいたので、彼らにとっては声優さんの放つ音は貴重な「素材」ともいえ、珍しいくしゃみという素材が録れることは、まさに「助かる」や「ちょうど切らしてた」という言葉にも繋がっていく。

くしゃみに対しての対応

また、海外でくしゃみをすると、「Bless you.」(ブレスユー)と返答される。
これは「お大事に」が訳として近いが、見ず知らずの人に対してでも、くしゃみをしていたらブレスユーというのが文化として根付いている。
今では配信を海外の方が見ていることも多く、ブレスユーを聞くことも多い。
もう金ラジオではたかみなも、自然に言っていて、おしゃれである。

しかし、ブレスユーを全オタクに定着させるのはちょっとハードルが高すぎる。上記の文化を知っていて、よし!と心の準備をしておかないとなかなか出てくる言葉ではない。
かといって「お大事に」「大丈夫?」と心配の言葉が並ぶのも大げさである。

「ちょうどくしゃみの音を聞きたいところだったので、むしろありがとう」

という言葉はそういった推しに対しての、気にしないで、的なニュアンスも感じられる。

そういった「ええんやで」に近い、「気にしないで」の意味合いをシンプルにしていったのが「助かる」なのかもしれない。

まとめ

くしゃみに対しての「助かる」はこのように

1)文化的背景として、くしゃみをうれしがる人が一定数存在する

2)推しに対するオタクなりの気遣い


から誕生し、ミームのようにだんだん広まり、定着していったのではないかと考えられる。

結論として筆者が伝えたいのは

青木さんのくしゃみ、「くちゅん」はかわいさが、「はっくしょい!!」は豪快さ・気持ちよさがあふれててどっちもよいよね。

以上である。

ただ、他の人のところで助かるを連呼するとなんや、こいつ、と思われるのが普通だろうし、青木さん含む、推しがあまり喜んでいない、嫌な思いを少しでもしているのなら、素直に「お大事に」「ブレスユー」「大丈夫?」の言葉を出せるようにTPOは守りながら推し活をしていきたいと思う。


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