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装具移行の重要因子

タイトル
脳卒中患者の歩行練習において長下肢装具から短下肢装具への移行に要する日数に関連する因子

著者名
上野 奨太、髙屋 成利、増田 知子、吉尾 雅春

雑誌名
理学療法学

公開年月日
2022年

研究の問いや目的

本研究の目的は、脳卒中患者の歩行練習において、長下肢装具(KAFO)から短下肢装具(AFO)への移行に要する日数に関連する入院時因子を探索的に調べることである。特に、回復期リハビリテーション病棟(回復期病棟)入院時の各種評価項目がKAFOを使用した練習日数にどのように影響するかを検討する。

研究や実験の方法と結果

方法
対象は、2012年1月から2019年7月の期間に当院回復期病棟に入院し、片側大脳半球損傷の脳卒中患者200名である。これらの患者は、入院時から7日以内にKAFOを使用した歩行練習を開始し、退院時までにKAFOからAFOへ移行できた。対象患者の平均年齢は65.1±13.2歳であり、男性114名、女性86名が含まれる。

調査項目は、基本情報、KAFOを用いた歩行練習日数、機能評価とし、重回帰分析を用いて関連する因子を探索した。調査項目には年齢、性別、病型(脳出血/脳梗塞)、発症から入院までの日数、Body Mass Index(BMI)、Japan Coma Scale(JCS)、Brunnstrom Recovery Stage(BRS)、Scale for Contraversive Pushing(SCP)、半側空間無視(USN)の重症度、Functional Independence Measure(FIM)運動項目および認知項目点数が含まれる。

結果
KAFOを用いた練習日数の平均は86.0±41.4日であった。単回帰分析の結果、年齢、JCS、下肢BRS、SCP点数、USN重症度、FIM運動項目点数、FIM認知項目点数がKAFOを用いた練習日数と有意に関連していた。重回帰分析では、下肢BRS(β=-0.435, p<0.01)、SCP点数(β=0.228, p<0.01)、FIM運動項目点数(β=-0.225, p<0.01)、年齢(β=0.175, p<0.01)が独立した関連因子として検出された。

研究や実験の結果から得られる影響

本研究の結果は、回復期病棟における脳卒中患者のリハビリテーション計画において、入院時の下肢運動麻痺の回復ステージやPushingの重症度、機能的自立度の運動項目点数、年齢がKAFOを使用する練習期間の予測に有用であることを示している。これにより、テーラーメイドの個人用KAFOの作製時期や歩行練習の計画をより効果的に立てることが可能となる。

この論文の結論

回復期病棟に入院した脳卒中患者において、KAFOからAFOへの移行に要する日数に関連する因子として、入院時の下肢運動麻痺の回復ステージが低く、Pushingの程度が強く、機能的自立度の運動項目点数が低く、年齢が高いほどKAFOを使用する練習期間が長期化することが明らかになった。これらの因子を考慮することで、KAFOの適切な使用期間を見極め、患者に最適なリハビリテーション計画を提供することができる。

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