膝関節温存の重要性
タイトル
下肢切断者の身体評価と義足の適合 - 下肢切断者におけるリハビリテーションの概要
著者名
陳 隆明、幸野 秀志
雑誌名
日本義肢装具学会誌
公開年月日
2013年
研究の問いや目的
本研究の目的は、下肢切断者におけるリハビリテーションの現状を評価し、特に末梢循環障害(PAD)に起因する切断者のリハビリテーション戦略の確立と改善を目指すことです。具体的には、膝関節を温存することで得られる機能予後の改善や、適切な断端マネージメントおよび義足の処方がいかにリハビリテーションの成功率に影響を与えるかを検討します。
研究や実験の方法と結果
方法
本研究は、以下の点に焦点を当てています:
1. 下肢切断の原因と切断者人口の変化
- 1980年代から2000年代にかけての下肢切断原因の変化を疫学調査データを基に分析。
2. 集学的治療の影響
- 心臓血管外科、循環器科、形成外科、整形外科、リハビリ科など多診療科による集学的治療の効果を評価。
3. 断端マネージメントと義足の適合
- Rigid dressing法やsoft dressing法、シリコーンライナーを用いた術後断端マネージメント法の比較。
4. リハビリテーション成功率の分析
- 高齢下肢切断者のリハビリ成功率を専門病院と一般病院で比較。
結果
1. 下肢切断の原因と人口の変化
- PADが全切断原因の60%以上を占めるようになり、切断時年齢は60歳以上が大半を占めるようになりました。
- 切断者の高齢化が進み、1980年代と比較して末梢循環障害による切断が大幅に増加しました。
2. 集学的治療の影響
- 膝関節を温存する下腿切断の増加により、機能予後が改善される傾向が見られました。しかし、依然としてリハビリ成功率は低く、特に大腿切断者において顕著です。
3. 断端マネージメントと義足の適合
- Rigid dressing法は理想的な術後断端マネージメント法とされていますが、現実にはsoft dressing法が主要な方法となっており、新しい方法の普及が進んでいません。
4. リハビリテーション成功率の分析
- 高齢下肢切断者のリハビリ成功率は、専門病院においては高いものの、一般病院では極めて低いことが確認されました。特に大腿切断者では一般病院でのリハビリ成功率が14%にとどまっています。
研究や実験の結果から得られる影響
本研究の結果は、下肢切断者に対するリハビリテーション戦略の再評価と改善の必要性を強調しています。具体的には、以下の点が重要です:
- 膝関節温存の重要性:膝関節を温存することで、切断者の機能予後が改善されるため、可能な限り下腿切断を選択することが推奨されます。
- 断端マネージメントの改善:Rigid dressing法や新しいマネージメント方法を導入することで、早期の義足装着が可能となり、リハビリ成功率が向上する可能性があります。
- 専門的リハビリテーションの必要性:一般病院ではリハビリ成功率が低いため、専門的なリハビリ施設との連携や専門家の育成が必要です。
この論文の結論
下肢切断者のリハビリテーションにおいて、膝関節温存の重要性と断端マネージメントの改善が鍵となることが確認されました。特に、高齢切断者に対しては、適切なリハビリテーション戦略を確立し、専門的なリハビリ施設との連携を強化することが求められます。今後、義足の適合とリハビリ成功率を向上させるための包括的なアプローチが必要であり、医療従事者の教育と人材育成が重要な課題となります。この研究は、下肢切断者の生活の質向上とリハビリテーションの効果最大化に貢献するための基盤を提供します。
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