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臨月

ついに、臨月となった。
予定日は40週0日。初産のうえまだまだ子宮頸管が長く、子宮口はしっかりと閉じているため、陣痛がくるまでしばらくあるだろう……というのが医師の見解。

しかしながら、陣痛を待たずに38週で帝王切開を行って出産することが決まった。
後期に入ったくらいの時に、低置胎盤は指摘されており、帝王切開の可能性もあるとのことだったのだが、当初は
「でも、これからお腹が大きくなってくるのに合わせて胎盤も上がってくると思うよ。下から産める可能性が高いと思います!」
と言われていたのもあって、そこまで深く考えていなかった。
まあ、どちらに転んでも痛かろう。
でも時がきたら、どちらかの方法で子を出してやらないといけないのだ。
ただ、楽天の買い物かごに放り込んであった円座クッションはひとまずそのまま保留にした。

先日の健診で、医師はエコーを見るなり
「ああぁ〜。。。」
と言った。
カーテンの向こうにはだかの下半身を晒している身としては、非常に不安になる反応である。
何事か、まさかこのまま入院とか言われるのか。帰りに喫茶店に寄りたかったけどそれどころじゃないのかな、などと思いながらパンツをはいた。
診察室で向き合った医師は
「ほとんど、胎盤が上がってきてません。38週あたりで予定帝王切開にしましょう。」
とおっしゃり、カレンダーと人員の表を見ながらサクサクと帝王切開の日取りを決めた。
このまま陣痛がきて、赤ちゃんの頭が子宮口を押した場合、胎盤から大量出血するリスクがあるのだという。
更にいうと、わたしは妊娠してから人生で初めて貧血を指摘されてもいる。
「そういうかんじですが、どーーしても下から産みたい、とか、ありますか?」
医師に聞かれ、
「ないです」
と即答し、わたしの帝王切開は決まった。

思えばこの1~2年で、医療におけるわたしの経験値は一気に上がった。
不妊治療で子宮鏡の検査・処置を行った時に、はじめて手術室に入った(医師も手術着を着ていて、ドラマみたいでちょっと興奮した)。
採卵の時には専用の部屋で点滴やマスクを使って静脈麻酔をかけられ、寝ている間にコトが行われた。
婦人科分野ではないが、一年前に初めて受けた胃カメラもなかなかエキサイティングな経験ではあった。
でも、意識があるまま局所麻酔でお腹を切られるのは初めてだ。
院内見学の時に他人事のようにさら〜っと見た手術室で、お腹を切り開かれる自分を想像すると、ちょっとこわい。
産院をあとにして帰り道に寄った喫茶店で、色んな人の帝王切開レポを読みあさった。
どのレポを読んでも、術中の痛みはないが、内臓を触られたり押されたりするのはわかるということ、そして麻酔が切れてからがつらいということが書かれていた。
わたしは皮膚が強くないので、傷跡がかゆくなってケロイド状になるかもしれない。夏に向かう時期なので、なおさらである。
だけど、当然の事ながら大量出血のリスクには替えられない。
わたしは楽天のカゴの中の円座クッションを削除して、傷跡用テープを入れた。
もういい、この子を無事に外に出してあげられるなら、方法は何でも良いのだ。

そういうわけで、その日は刻一刻と迫ってきている。
ダイナミックな胎動を感じるのもあと少しと思うと寂しい。
でも身体の重さやしんどさ、各種マイナートラブルからの解放が近づいているともいえる。
(お腹を切ったあとの痛みが近づいているともいえる)
そしてなにより、どんな子が入っているのだろうと考えるとわくわくする。
元気で産まれてほしいなあ。
その時までのカウントダウンはもう、始まっている。

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