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Cœur クー

視界が限られるということは
とてつもなく怖いことだろうと思う
エリザベスなどと小洒落た名前をつけられてても
彼女にとっては単なる障害物
鬱陶しくて怖いに決まってる

目の前しか見えないのである
自分の身に置き換えてみれば良い
強制的に目の前しか見えなくされるなど
私ならごめんだ
五分と持たない

だからといって外すわけにもいかないのは
大人の事情というやつだ
避妊手術をしたばかりの子は
怪我したと思って舐めまくり
却って事態を悪くする
だからこそのプロテクション

でもそんなこと彼女には関係ないからね

どうして?という疑問の眼差し
助けてという懇願の眼差し
何でこんなことするのという怒りの眼差し
何もできないという絶望の眼差しが
瞳の上に代わる代わる映り込む

そのどれにも
ごめんねぇ
という一つ言葉でしか返してやれない
歯痒い母

それでも数時間もすれば
諦めの色を大きくまといつつ
それなりに生きてく術を見つけていく
彼女は強い

一週間もすれば
大好きなお庭を駆け回るためだよなんて
人間都合のエゴの押し付けでしかないけど
せめて彼女をこの先ずっと大事にして
まープラマイゼロね
ぐらい思ってくれればいいなと思う

Cœur
フランス語でハートの名前を持つ可愛い子
胸に白いハートをつけた妖精
お前の幸せを一際強く願う
手術をした日のこんな夜には

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