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ブランコ

ブランコ 作】葉月奏詩
性別不問 人称、語尾変更可

ブランコ。

誰もいない公園で揺れている。

風に吹かれて揺れている。

私は誰もいない事を確認し。

ゆっくり、静かに。

乗ってみた。

昔の楽しい思いを思い出し。

忘れた童心を受け取りに。

力いっぱい地面を蹴とばすと。

ゆったり、ゆったり。

揺れていく。


心地よい風に包まれて。

何度も、何度も。

漕いでみる。

空に届けと願いながら。

大きく、大きく。

揺れていく。

明るい未来へ飛んでいけ。

悲しい過去を吹き飛ばせ。

ピュー、ピューっと。


風の声が聞こえてくる。

応援してくれるの?

激励してくれるの?

ちっとも分からないけど。

それでも。

私はブランコの軋む音で会話する。

頑張っているよ。

負けないよ。

ギィ、ギィと音が鳴る。

分かっているよ。

大丈夫だよと。

風と共に夕日が笑った気がした。


そうか。

風も夕日もずっと見守ってくれていたんだね。

私は足を止めてみた。

変わる景色は。

ゆっくり、ゆっくりに。

いつの間にか疲れた心は吹き飛んで。

私の心は暖かな空気が満ちていた。

小さなブランコに。

ありがとうと。

また乗せてねと告げて。

私は現実へと戻っていく。

小さなブランコは揺れている。

優しい夕日に守られて。

心地よい風に包まれて。

静かに、静かに。

揺れている。

おわり

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